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プロフィール

浜本 学泰(はまもと たかやす)

株式会社倭・美 代表取締役
株式会社アンヤット 代表取締役

●生年月日:昭和48年4月4日生まれ (41歳)
●出身地:石川県小松市生まれ
●経歴:
1996年 一橋大学商学部商学科卒業 
         専攻:外国為替、国際金融
  同年 野村證券株式会社入社
2002年 メリルリンチ日本証券株式会社入社
2003年 独立系投資顧問会社入社
2008年 個人投資家としてFX、株式、日経平均先物取引を開始。
2009年頃~  個人向けにトレード手法を解放して、教え始める。
2014年現在 述べ1000名ほどの方にトレードを教え、数多くの自立したトレーダーを 輩出している。

●趣味:旅行、食べ歩き
●座右の銘:即行即止
●好きな言葉:人生の大切なあいうえお 「案」「因」「運」「縁」「恩」


投稿したブログ数:31件

金融全般⑲:「毎月分配型債券ファンドについて」

こんにちは。

金融全般の第19回目は、あえて「毎月分配型債券ファンドについて」書かせていただきます。

前回は「投資信託」というくくりで書かせていただいたのですが、今ではこの「毎月分配型ファンド」が大きな問題になっていると感じましたので、19回目を1回割きまして、こちらにフォーカスしてその特徴をお話申し上げたいと存じます。

「毎月分配型債券ファンド」とは、一般的には長期的に資産の増加を目指す投資信託の中にあって、通常、1年や半年に1回の「分配金」が毎月行われるのが特徴で、主に債券で運用されているものが多いです。

一昔前、一世を風靡した「毎月分配型投資信託」がありました。

国際投信投資顧問の「グローバルソブリンオープン」という商品です。
※参考URL:http://www.kokusai-am.co.jp/fncj037/Init.do?fundCd=148013

grosob

①当時は、銀行での投資信託の窓販が解禁され、銀行の窓口で投資信託が売られ始めた。

②「グローバルソブリン」、つまり、全世界の政府発行の債券(通常は国債)という比較的安全な運用対象。

③毎月分配されるので手元にお金が返ってくるという実感。

以上の3つの理由で、恐ろしいほどの残高を集めて話題となりました。

しかし、それもリーマンショックまででした。

欧米の主要国の金利が軒並み低下して、債券の利回りが急低下。

毎月の分配金を捻出するのに、元本を切り崩してしまうということが行われ、投資信託の価格である基準価額を入り崩しても、実感が得られる毎月の分配金を支払い続けました。

その結果、基準価額が下落。

解約した時に、購入した金額に比べて、解約で戻ってくるお金があまりにも少ないということで問題視されたのでした。

毎月分配型ファンドの利回りの原資は、債券の利息、株式の配当、不動産の賃料などです。

安定的には行ってくるものを原資にしている設計なので、それ自体は問題ではありません。

定期的に利回りが期待できる資産で運用し、利回り部分を受益者(投資家)に毎月分配しながら、投資元本の成長を目指すということが元々の設計だったと思います。

しかし、現在においては、運用状況が全く異なっております。

日本の10年国債利回りが0.44%というのは余り驚かないかもしれませんが、アメリカ10年国債で2.3%程度、ヨーロッパ各国の10年国債利回りも0.8%(ドイツ)~2.4%(イタリア)という状況です。

グローバルソブリンが人気だったころは、欧米の国債利回りは4%程度ありました。

何を申し上げたいかわかりますか?

世界の金利動向が低い水準であるということは、毎月分配される原資が少ないことを意味します。

毎月分配型が人気があるので、毎月分配型の商品を企画した方が売れるのですが、安全な資産で利回りを確保できない。

それが現状です。

となると、どうするかといいますと、選択肢は3つです。

①先進国の国債ではなく、信用度が落ちる新興国の国債を組み入れて利回りアップを図る(信用度の低下)
②投資先は先進国でも、信用度が下がる国債以外のジャンク債(格付け(信用度)の低い債券)を組み入れる
③債券ではない利回り商品(不動産など)を組み入れる

ということになります。

毎月の分配金が欲しいがために、知らず知らずのうちに、最終投資家である皆さんのとるリスクが上昇しているのです。

さらに、海外の資産に投資する投資信託には、通常、「為替ヘッジありコース」と「為替ヘッジなしコース」の2つが用意されているのが一般的です。

どういうことかといいますと、海外の資産に投資するということは、当然、買った時と売った時の為替レートによって投資元本に変動が生まれてしまいます。

海外旅行に行ったときに、外貨を得るのに両替した時と、帰ってきたときと値段があまりにも違って、良い思いをした人もいれば、悲しい思いをされた方もいらっしゃるかと思いますが、そのことです。

その為替による元本の変動が嫌だという方のために、「為替リスクをヘッジする(避ける)」という選択肢が提供されているのです。

当然、リスクをヘッジするのにコストがかかります。

どれだけのコストがかかるかといえば、通常、その国の通貨の間の金利差分だけコストがかかります。

たとえば、日本の国債利回り0.4%と、アメリカの国債利回り2.3%とすると、日本円で0.4%で運用していても仕方ないとして、アメリカでの2.3%の運用をしたいと思っても、為替リスクを回避しようとするとその差額分(2.3%-0.4%=1.9%)の為替リスクヘッジコストがかかります。

ということで、一般的には為替のリスクを取らないならば全世界どこで運用しても同じということになっています。

ということは、為替リスクをとる方ならいいですが、通常は為替など変動の良くわからないものはヘッジすることと思いますので、そのヘッジコストを払い、グローバルなものに運用しているつもりでも元本は日本の金利分しか増えないか、債券価格の変動によって増減をする。

分配金に関しては低金利のあおりを受けているので十分に魅力的な分配原資をねん出できない。

という状況が出来上がっているのです。

さもなくば、前述のように利回りの高い比較的安全度の低い資産で運用するかどうかです。

こういう現実があるにも関わらず、主に銀行の窓販で売られている商品のほとんどが、毎月分配型債券ファンドです。

なぜか?


投資していただいてすぐに毎月の分配金があるから投資した効果を実感していただきやすいからです。

購入した時点と現時点の投資信託の基準価格の変化というものは、一般投資家の方はチェックされないからだと思います。

元本を切り崩して分配金が支払われても嬉しいはずがありません。

「毎月分配型ファンド」に関しては、ここにからくりに注意しなくてはいけません。

ただ、毎月分配型ファンドが悪いわけではありません。

第18回目の投資信託のところでも書きましたが、毎月の分配金が欲しい方というのもいらっしゃいます。

特に、年金生活者の方で、資産はお持ちであるという方には、ぴったりの商品と言えます。

一生懸命貯めた、もしくは先祖が残してくれた財産をもとに毎月年金の足しになる分配金が支払われることは、まさに資産を日々の生活に活かしていることになるからです。

そういう方は、投資信託を一度購入するとなかなか解約しませんので、元本が減っていてもあまり関係がなく、自らの投資元本に対して一定の利回り分が分配金として継続的に支払われることが大切になります。

ですので、そういう投資家の方には、「毎月分配型ファンド」は適していると言えます。

しかし、現状は、資産を増やしたいと思っている方にまで、これらが店頭で推奨されているのが現状なのです。

第18回目の投資信託のところでも書かせていただきましたが、毎月の分配原資を確保するということは資産を増やすための元本から一部を分配金としてプールしておかなければならず、積極的に資産を増やすことはできないのであります。

投資元本を増やしたいのであれば、分配金ではなく、新聞やネットなどで公開されております「基準価額」をチェックしながら、頻繁な分配を受けることなく、基準価額の増加を続けているファンドを選ぶべきなのです。

一般投資家の無知(金融リテラシーが乏しい状態)をいいことに、自らが売りやすい投資信託が堂々と過度に販売されていると言わざるを得ません。

金融の知識を身に着けることで、大切なお金をこんなおかしな状態にされる事はなくなります。

少しの勉強が、貴方の人生を彩る資産というものを大きく変える可能性があるということを是非ともご認識いただけたら幸いです。

今回は、あまりにも問い合わせが多かったため、「投資信託シリーズ」で書くべき、「毎月分配型債券ファンド」について特に書かせていただきました。

皆様の大切な資産が、ニーズに合わせて大切に運用されますように。

ご参考になれば幸いです。

浜本学泰

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