2013年09月29日 の投稿一覧
77分の1
Posted by zookids on 2013年9月29日(日) 23:21
「べにてんぐたけ」の中の人,私長田は,9月28日をもちまして半年間の教員長期社会体験研修を終了いたしました.
文章を書くのがすごく苦手なのですが,最後にご挨拶をさせてください.
昨年末,岩手県の被災地を訪れる機会がありました.
私の知人を飲み込んだ津波の被害.その光景を目の当たりにし,言葉を失いました.
その時に話をした仮設住宅にお住まいの方の一言が私の心に残りました.
「金銭的な・物質的な援助も必要かもしれないけれど,私は今は人の温かさが欲しい.人と人とのぬくもりが欲しい」
「命」って?「人と人の温かさ,ぬくもりって?」
理科教師として改めて自分自身に問うきっかけとなりました.
……そして円山動物園で,半年間の研修が始まりました.
この世に生を受けてから,その最期を全うするまで懸命に生きる動物達.
毎日違った表情を見せてくれる動物達に癒され,そして「命」について,生きることの素晴らしさについていろいろと彼らは教えてくれました.
毎日,多くのスタッフの方に支えられました
園路で「最近どう?」「仕事は慣れた?」と声をかけてくださったり
仕事の合間の休憩時間に缶コーヒーを差し出してくださったり
飼育している動物について熱く語ってくださったり
飼育員の資質や大切なことについてご指導くださったり
家族や自分の思い出話を聞かせてくださったり
飼育員になろうと思ったきっかけを話してくださったり
世間話をして涙を流すほど大笑いしたり
「お疲れ様」「頑張ったね」と励ましの言葉をかけてくださったり
「羊毛クラフト」「○×クイズ」等のイベントの準備を手伝ってくださったり…
多くのお客様の笑顔の反応がとても嬉しかったし,励みになりました.
苦労してつくった個体看板を使ってモルモットを観察してくれていたり
「看板が可愛くて素敵ですね」とお褒めの言葉をかけてくださったり
「研修の先生でしょ?頑張ってくださいね」と声をかけてくださったり
私の勤務する中学校の生徒が来園してくれたり,ブログを読んでくれていたり,
羊毛クラフトの作品が完成した時,笑顔で「ありがとうございました」と言ってくれたり
タマゴコレクション(ガイド)で,チャボの卵の温かさに感動したり……
多くの方が,半年間の研修を支えてくださいました.
気がつけば私のそばで温かく見守ってくださいました.
日常の何気ない会話や,人と人とのつながりがこんなに温かいことなんだ,と改めて感じることができました.それが私にとって幸せな時間でした.
人は決してひとりでは生きていけません.人と人の係わりの中で生きていくものです.
生物学的にもヒト(『Homo sapiens』としてのヒトと表記させてください)は「食物連鎖」の中に組み込まれています.その鎖からは消して外れることはできません. タマゴコレクションや羊毛クラフトを通じて,ヒトと動物の関わりを伝えていきましたが,ひとりでも多くの方が実感していただけたのであればこの上なく嬉しく思います.
可能であればずっと動物園にいたかったのが正直な想いですが,「半年間」という限られた期間の中で全力で研修ができたので,悔いはありません.
(ある日突然『今日で研修が終わり』と言われても,後悔しないよう過ごしてきたので…)
今回の研修期間は自分の人生の77分の1の時間.その77分の1が一生忘れられない経験になったことを確信しています.
10月1日より中学校に復職します.
円山動物園での多くの体験を生かし,今後とも邁進していくつもりです.
理科教師として,そしてひとりの人間として,生物学的なことだけではなく「命とは?」「人と人の係わり,温かさ,ぬくもり」…動物園で経験したことを様々な場面で生徒達に伝えていければと思います.
半年間の研修の間に関わったすべての方々に感謝と敬意を表します,
本当にありがとうございました.
最後に,南アフリカ共和国の政治家,ネルソン・マンデラ氏の言葉でご挨拶を締めくくりたいと思います.(長田が研修中に感銘を受け,支えになっていた言葉です)
「虹は7色のうちの1色だけが際立って美しくても虹としては美しくない.それぞれの色がそれぞれの輝きを放ってこそ,きれいな虹になる.そんな虹の国をつくりたい」
半年の研修で,一番接する機会が多かった&
お世話になったモルモットの「ビビアン」 本当にありがとう.