札幌100マイル

動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

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春の終わり

先日、本園の広報氏に
「夏の年間パスポオトに載せる動物にふさわしいものは何か」と問われ、



水槽の中で清涼感を振りまくマレーガビアル氏をお薦めさしあげたところ、
「メジャー感がないので却下です」と、一蹴。

肩身の狭い思いをしております、
ヒト科ワニ属のメガネ3号にございます。


さて、園内の桜もほぼ散って、春の終わりを思わせる今日この頃、





皆様、春になると現れる、円山動物園に御馴染みの方々が、
今年はいらっしゃらないことにお気づきでしたでしょうか。

春は別れの季節にもありますれば、その終わりとともに
そんな方々に思いを馳せてみたく存じます。


まずはこの方、



一見、動物種が分かりかねますが、語尾から考えますれば
某巨大レジャー施設のマスコットと同じく、鼠か。
繰り返される鳴き声のアピールが露骨に過ぎ、
仲間内から疎ましがられていないか、気になってしまうのでございます。



次…、これは…?



あたかも眼の様に見える構造は、
本当に眼なのか、はたまた鼻の穴なのか。
耳的位置にある謎の器官は果たして何であるのか。

蝶ネクタイとブーツの赤で決め、
オシャレに気を使っているのはわかるのですが、
この方を見つめていると、得体の知れぬ不安感に襲われるのであります。





クマ、クマだ!
先のおふた方に比べますれば、にこやかなる表情とともに、
私どもを安心させていただける…、と思いきや、
130cm以上の方々を門前払いする、笑顔の裏の冷酷無比。
身長167センチメエトルの私は泣き寝入りするしかないのでありましょうか。



最後にこの方



白と黒のツートンカラーは
世界的人気を誇るあの動物かと思われます。
しかしながら、この方の目つき、メンタル面は大丈夫かと、
心配せずにいられないのでございます。
ポップな見た目と裏腹の、アングラな本音を隠して、
つらい思いをされているのでありましょう。


動物園にいらした時、再び桜が満開になった時、あるいは小腹が空いた時等々
何かの拍子にふと思い出していただければ、
いまでは会えないこちらの方々も
幸せに思われるのではありますまいか。



とある日の動物病院。

円山動物園の片隅にひっそりと、それはあるのでございます。



円山動物園、園内動物病院。
3人のメガネどもが跳梁跋扈する、獣医の巣窟。
あるメガネは、日夜怪しい薬品をこねくりまわし、
またあるメガネは、吹き矢にて猛獣を打ち倒さんと特訓を重ね、
残ったメガネは所在なく、虚ろな目でホルマリンの入った瓶を磨く…。

ウソです(部分的に)。

日々せっせとお仕事しております。



さて、今日の患者は




アメリカビーバーのクロ氏。
すでに麻酔も効いて、あられもない御姿に。

クロ氏、本日の来院理由は歯のケアーにございます。
以前に怪我をしたクロ氏は上の前歯が短く、
そのために下の前歯が伸びすぎてしまうので、





切りました。下の前歯。
歯が無くなっては大変と心配されている方、ご安心くださいませ。
ビーバーの歯はヒトの歯とは違い、一生伸び続けるもので御座いますゆえ
切った歯もいずれは伸びてくるのでございます。

麻酔をかけたときは、実は色々チャンスでありまして、



水かき。



尻尾のアップ。

普段は撮影を拒否されてしまうような貴重なショットを、
こっそり撮り貯めたりするのでございます。

他にも、意識があるときには頑として受け付けない、
血液検査やレントゲン撮影等々、健康診断をまとめて実施いたします。
麻酔をかけたときというのは、大事な大事な時間なのでございます。



実は、このような獣医的日常を
皆様に垣間見ていただける機会があるのでございます。

それが毎週行われる、動物病院体験プログラム。
詳細は下記リンクをご参照くださいませ。
http://www.city.sapporo.jp/zoo/others/hospital.html
ご参加いただいた方々には、
当園のメガネがあれやこれや、懇切丁寧にご説明差し上げる所存にございます。
今回ご紹介差し上げたビーバーの歯をはじめ、
普段は見られない、謎のあれやこれやも見られるやもしれませぬ。

メガネ獣医は園内ではレアキャラ。はぐれメタル程度の遭遇率ゆえ、
捕まえて質問責めにしたりする、なかなか無い機会ともなりますゆえ、
興味のある方は是非是非。






残念なお知らせ

みなさまこんにちは。

今日は大変残念なお知らせをしなければなりません。

当ブログをご覧頂いている皆様や、最近来園された皆様はご存知の方も多いかと思いますが、カンガルー館のハイイロカンガルー(オオカンガルー)一家のお父さん『マイケル』は4月17日から体調を崩し、治療を行っておりました。

一時期は食欲もあり回復を期待しておりましたが、ここのところ食欲が落ちてきており心配していたところ、本日容体が急変し死亡いたしました。

ホッキョクグマのような派手さはありませんが、オス同士で取っ組み合いをしているときなどは自然と人だかりの出来る、密かな人気を持った個体でしたし、これまで10頭の産子の父親となる優秀なオスであり、これからもどんどん子供を作ってもらいたいと期待していただけに大変残念です。

治療を行っているときにはガラス越しに『頑張れー!』と声援をいただいたりと、皆様に心配、応援をしていただいておりましたが、大変残念な結果となってしまいました。

これまで応援をしてくださった皆様、誠にありがとうございました。


追伸
ゴールデンウイーク期間中ということで、多くのお客さまにご来園いただいております。
特に昨年生まれたホッキョクグマの赤ちゃんはやはり大人気で、柵の周りに2重3重に、時にはそれ以上にお客様がいらっしゃいます。
混雑による混乱を避けるため警備員を置いておりますが、我々獣医師もしばしば整理要員として駆り出されます。

混雑がひどくなった場合の対応や、なるべく多くのお客様が動物をご覧いただけるようにするため、前後で入れ替わるなど譲り合ってのご観覧をお願いするなどの『お声かけ』が主な役割です。
昨年一昨年とGW期間中や、動物の赤ちゃん公開など多くのお客様が集中する際にはこのようなことをやってきたわけですが、そのたびに『全然見えなかった』というお子様の声や、『いくら待っても前が開かない』などの声が聞かれることがあり、そのたびに大変悲しく申し訳ない気持ちになっておりました。

確かによく見てみると、かなり長いこと前のほうにいらっしゃるお客さまもおり、その後ろに子供たちがつま先立ちをしながら少しでも動物を見ようと頑張っているといった場面が良く見られます。
我々もそういう状況に気が付いたらお声かけをするわけですが、やはり最前列の見やすい場所は離れ難いのでしょうか(お気持ちは痛いほど分かります・・・)、なかなか状況が改善しないこともままあります。

もちろんお客様にせっかく確保した良い場所を手放さなければならない義務はありません。
しかしながら、職員としてはやはり全てのお客様に楽しんでいただきたいという気持ちが強いのです。
せっかく見に来たのに見られなかったという声をなくすため、皆様のご協力をお願いいたします。

ちなみにホッキョクグマをゆっくり見たい方は平日がおススメです。


あぁ、文字ばかりなうえに楽しくもない話題で申し訳ないです・・・

は虫類・両生類館オープン当日

こんばんは、眼鏡の獣医の3番目です。


当初の想定よりも頻繁な更新が続いておりますが、
いったいいつまで続くのやら、
あまり期待せず、お付き合いいただければ幸いに存じます。


さてさて、去る4月23日、は虫類館・両生類館がオープンしました。
あいにくの天気ではありましたが、たくさんのお客様がお越しくださいました。





オープンを待つ方々。期待にお応えできたでしょうか?





職員も緊張した面持ちで、その時を待っております。



7つ道具の剪定ばさみを握りしめ、
テープカットのイメエジトレエニングに余念がないカリスマですが、
エアテープカットに終わります。





オープンと同時に館内へ。混雑しつつも楽しんでいただけたましたか?



鳴り物入りでオープンいたしました、は虫類・両生類館ですが、
週末・祝日等々は混雑が予想されております。
24日の日曜日も、一時入場制限がかかり、
館外でお待ちいただくこともありました。

GW期間中も大変混雑するかと思われます。
ご迷惑おかけしますが、何卒ご理解ください。

は虫類・両生類館、じっくり見れば見るほど
その魅力がにじみ出てくる施設であると、自負しております。
末永くお付き合いいただければ幸いです。




「首を長くして待つ」という言葉を体現したコウヒロナガクビガメ。
館内にて皆様をお待ちしております。意外とダイナミック。



最後になりましたが、華々しいオープンの傍ら、
ガビアルモドキ1頭が死亡しました。
解剖の結果、内臓の疾患が確認されました。
そのような身体に移動のストレスがかなりの負担となった可能性があります。

ワニの専門家も、ワニの輸送はとても難しいとおっしゃっていました。
その死を教訓とし、猛省するとともに
27年間もの園への貢献に感謝。

マイケル治療中

皆さんお久しぶりです。

メガネ獣医2号です。

ここ数日のうちに来園された方の中にはお気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、オオカンガルー一家のお父さん『マイケル』が体調を崩し、現在治療を行っております。


少し前までのマイケル。胸筋のムキムキぶりが、調子の良さを表しています。

今日はその様子をご紹介しようかと思います。

1回目のブログで獣医ネタは他の獣医に任せると宣言したにもかかわらず、舌の根も乾かないうちに獣医ネタに頼るあたり、いかにネタに困窮しているか我ながら透けて見えますね。

さて、発端は4月17日の日曜日。
ご存知の方も多いかもしれませんが、カンガルー館で密かな人気の親子(兄弟)ゲンカ。
オス同士が力比べをするわけですが、これが始まるといつの間にか人だかりができるほどの人気でした。

まずはにらみ合い


自分の強さを誇示するように胸を張り背伸びします


手を合わせてのけん制


主武器の蹴り。尻尾でバランスを取って蹴りを繰り出します。
人間が本気で蹴られると大怪我するほどの威力だそうです。僕は蹴られたことがないので分かりません。



こんなふうにもつれあっていることもあります


これまでは、やはり『父は強し』ということで、マイケルの勝利に終わることがほとんどで、勝者が敗者を追い込むということもなく、お互いケガをすることもありませんでした。


この日もマイケルとその息子ビートは取っ組み合いのケンカをしていたわけですが、この日はなぜかマイケルが負けてしまい、その上かなり激しく追い打ちをかけられたらしく、発見した時には既にぐったりとしている状態でした。

野生動物は通常、弱っている姿をあまり見せることはありません。
野生下ではそれが命取りとなることもあるからです。

となると、マイケルの状態はかなり悪いということが見て取れるわけで、すぐさま獣医師が診察・治療にあたりました。


診察の結果、外傷はそれほどないものの、腹部臓器にダメージを受けていることが分かり、投薬による治療を開始しました。



現在も1日1回午前中に2時間ほどかけて点滴を行っています。
午前中に点滴中のカンガルーの横で、それを眺める短髪メガネの小太りがいることがありますが、決してサボっているわけではなく、マイケルの様子を観察したり、動くマイケルに合わせて点滴掛けを移動させているのです。
もしも見かけることがありましたら、心の中でそっと応援をお願いします。


やっと少しずつですがご飯も食べられるようになり、少しずつ体の力も戻ってきました。でもまだまだ油断はできません。

まだまだ平常時よりは力も弱いので、普段は出来ない爪切りもこの機会にやっています。
マイケルの爪はうまいこと自然に削れず、内側に巻いて伸びています。
自分の体に刺さることはないでしょうが、若干使いづらそうにしていたので、いつか切ってやろうと目論んでおりました。

爪切り後の爪。大分まっすぐになりました。まだ若干曲がっていますが、これ以上やると身が出るので今回はここまでです。
普段やろうとしたら麻酔かけないととてもできないので、ある意味今がチャンスです。



さて、最後になりましたが、ここまで若干明るく書いていますが、決して楽観できる状況ではありません。
まだまだ一日のほとんどを寝て過ごしていますし、起き上がってもしょんぼり首を下げたまま。食欲があることだけが好材料です。

思えば大先輩の獣医さんから『食べれているうちは大丈夫』というような格言めいた言葉を聞いたことがあります。
思い返してみれば、これまで、『もうダメだろう』と思った動物が持ち直したり、予想以上に長く持ってくれたことがありましたが、そんなとき、その動物はしっかりと食べていました。
今回も彼の生命力を信じて、そのサポートをしていきたいと思います。
皆様の温かい応援をよろしくお願いいたします。

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