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動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

2016年07月 の投稿一覧

ハズバンダリートレーニング3

 

前回トレーニングの準備段階について書かせていただきましたが、今回からはいよいよ

実践編になります。

まず、採血するためにはタツオにじっとしていてもらう必要があることから、最初に「伏せ」を覚えてもらうことから始めました。

「伏せ」の体勢をとってもらうために、地面に餌を置き続けます。

餌した

これを繰り返すと、次第に「座ってた方が食べやすいぞ」というふうに思い自然に「伏せ」の体勢をとるようになります。

大分伏せ

少しずつ足を曲げ、伏せる体勢に近づいてます。

伏せた

最後には、伏せてくれるようになりました!!

「伏せ」ができるようになったら、次はからだを触られることになれてもらうようにしました。採血はしっぽから行いますが、その他からだの様々な箇所に触れても大丈夫なようトレーニングを続けました。

これまで、タツオは触られること自体には慣れていなかったため、最初は嫌がって触られた場所をすぐに引っ込めてしまったりしてしまうこともありました。ただここで大事なのは、嫌がっていることを無理やり続けないこと。無理に続けてしまうとトレーニング自体を嫌いになってしまうので、そうならないよう慎重にトレーニングを行いました。

とはいっても嫌なところを触れるようにしないといけないので、最初は「ご褒美」を与え続けてタツオの気をそらしながら、少しづつ触れるよう心がけました。

餌与えている方

しっぽを触るトレーニングの風景です。檻の前から餌を与えています。左に立っている人がしっぽを触る訓練の担当者です。

しっぽさわり遠目

最初は餌を与え続けながら遠くのしっぽを触ります。このとき、おそらくタツオはこんな風に思っているはず、です。

(あれ~何か触れているような気がするけど、今はお肉がおいしいからまいっか~。)

 

そうして触れることに抵抗が無くなってきたら、今度は「ご褒美」を与えると同時に触って、「ご褒美」と「触られること」を関連付けます。さらに、触った後に「ご褒美」を出すようになると、「触られる」から「ご褒美」をもらえると思ってくれるようになります。

そうするとどうなるか、「ご褒美」をもらうために、触ってほしくて自ら動いて近づいてくるようになる、というわけです。

しっぽ近づいた

トレーニングを進めて最終的には、写真の用にしっぽを檻のすぐ横まで近づけてくれ、触っても全然気にしなくなりました!!(少し写真が見づらくてごめんなさい)。

この要領で、からだの様々な部分に触れるようにもしています。と言葉で書くのは簡単ですが、とにかく地道に続けていくしかないのがトレーニングです。触られるのを特に嫌がったりする場所や、触ることはできるがなかなか近づいてきてくれなかったりしたときは、その都度タツオが嫌がらないよう、積極的に近づいてきてくれるよう触り方を変えたりいろいろと工夫をしました。

そうこうしてようやくしっぽも触れるようになり、いよいよ採血に取り組みました。

 

続きはまた次回の更新で。

ハズバンダリートレーニング2

前回ハズバンダリートレーニングとは?について説明しましたが、

今回はアムールトラの「タツオ」が行っているトレーニングについてお話ししたいと思います。

タツオは慢性腎不全というネコ科の動物に多い病気にかかっており、現在常に薬を投薬している状態です。腎臓の状態が良くないので、本当は定期的に検査をしたいのですが、タツオは超高齢(19歳)なこともあり、麻酔の負担をなるべくかけたくないと思っています。

そこでハズバンダリートレーニングを行い、腎臓の状態について採血を行うことで確認しようとしました。

トレーニングを行うのにまず必要なことは、「人に慣れていること」です。

いくら頑張っても動物がよってきてくれないとそもそもトレーニングになりません。

幸い、タツオは人に慣れていたので問題ありませんでしたが、

人に慣れていない動物についてはどうするのか?という疑問がわいてきます。

 

そこで登場するのがトレーニングにおいてもっとも大事な「褒める」こと。

動物たちにとっての「ご褒美」はなんといってもおいしい食べ物。

これを人が直接渡して食べてもらうところからトレーニングはスタートします。

タツオに今与えている「ご褒美」、それはお肉のミンチです。

IMG_4701

(お肉には腎不全の薬をかけているため黒くなっています)

「ご褒美」があればそれでトレーニングは一応できます。ですが、より反応を良くするため写真のような道具を使います。

図2    図3

左写真のターゲット棒は、この棒を追って眼や顔を動かしたときに「ご褒美」を与えることで関連付けを行います。

右写真の犬笛は、吹いた音と同時に「ご褒美」を与えることで音との関連付けを行います。

このような道具を使うと、ターゲット棒の動きや犬笛の音に反応して動いてくれるようになります。(もちろん、そう簡単にはできませんが)

ここまでできるようになったら、いよいよ本格的にトレーニングをはじめます。

 

続きはまた次回の更新で。

ハズバンダリートレーニング

ブログをご覧のみなさんこんにちは。

久々ですがメガネ獣医ブログを再開いたします。

私は「(おうち)メガネ5号です」。まだ動物園に来て

一年足らずの若輩ですが、これからときどき更新していきますのでよろしくお願いします。

 

今回は「ハズバンダリートレーニング」についてお話しします。

何やら難しい言葉が出てきましたが、一言でいうと

「動物たちに自発的に受診動作 をとってもらう」ことです。

 

※  受診動作 たとえば、腕を差し出して採血しやすい体勢をとったりすること

 

動物園の動物は、犬猫のように飼い主さんに「おさえててください」とはできません。

なので、これまでは、採血や爪切りといったようなことでも麻酔をかける必要があり、動物たちの負担は大きいものでした。

そこで、動物たちが自発的に「採血してください」「爪を切ってください」と手を差し出してくれるようにするのが「ハズバンダリートレーニング」です。

難しい事のようですが、犬に「おすわり」を教えることと基本的には同じです。

動物たちに教えるコツは、とにかく「褒める」こと。

伏せてくれたら「褒める」、触らせてくれたら「褒める」。

何か一つでもできたらすかさず褒める、これの繰り返しです。

 

円山動物園では今、アムールトラの「タツオ」やホッキョクグマの「キャンディ」でトレーニングによる採血を実施しています。今後、いろんな動物に広げていくことで、動物たちに負担が少ない検査ができるようになればと思っています。

DSC_9384 DSC_2442

さて、ここまでハズバンダリートレーニングとは何ぞや?ということについて書いてきました。

実際にどうやって動物たちに受診動作をとってもらうのか、これについては次回の更新で紹介したいと思います。

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