札幌100マイル

動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

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Beautiful Sunday

みなさん、こんにちわ。

今日は一日快晴の日曜日となり、多くの家族連れのお客様に来園していただきました。


それにしても、今日は本当に暑かったですね。天気予報では最高気温30℃でしたが、
炎天下の園内を歩いているとそれ以上に暑く感じてしまいました。

沖縄出身の3号さんは「これくらいの暑さでは汗も出ないですよ~」などと、
いつも涼しい顔をしておりますが
生粋の道産子の私は、30℃オーバーで歩き回っていると、
全身の汗腺から汗が噴き出して、汗だか涙だか鼻水だか何だかわからいぐらい、
ぐしょぐしょになってしまいます。

同じ人間ですらこれだけ暑さに対する耐性が違いますが、動物園の動物たちも暑さに対しては
いろいろ違った反応を示していますね。

カバやライオンなど熱帯に生息する動物たちにとっては過ごしやすい季節ですね







カバにとってはもっとも幸せな季節?


しかしユキヒョウやレッサーパンダ、ホッキョクグマなど寒冷地に生息する動物たちにとっては、
この暑さは、生命に影響を及ぼしかねない過酷な環境となります。
特にレッサーパンダは暑さに弱く、気温30℃を超えると死に至ることも珍しくありません。
そのためレッサーパンダは室温を24℃以下で飼育することが絶対条件となっており、
円山動物園の獣舎で冷房設備があるのは、ホッキョクグマでもペンギンでもなく、
このレッサーパンダ舎だけです。
ちなみに餌となる孟宗竹も本州からのお取り寄せ品を毎日食べてますので、
円山で一番ぜいたくな動物といえるかもしれませんね

ほかの動物はというと・・


シンリンオオカミ

こちらも暑さにはあまり強くない動物ですね・・
われわれ人間は体温が上昇すると、体温調節機能が働いて、
汗をかいて体温を下げますが、
オオカミは犬と同じく汗腺がありませんので、汗をかいて熱を下げることができません。
そのため、オオカミはパンティングと呼ばれる喘ぎ呼吸(犬が長い舌を口から出して
はぁはぁ言っている、あの呼吸法です)で体温調節をします。



ふだんは目をぎらぎらさせて走り回っているオオカミたちも・・・



今日はこんな感じで、近所の犬状態です・・


次にホッキョクグマですが・・・

ホッキョクグマは分厚い皮下脂肪を蓄えたり、体毛が空洞になっていて、
断熱材の役割をすることで体温を保持し、北極の寒さに耐えることができます。

北極に比べ暖かい札幌では、野生のホッキョクグマと同様の餌を与え続けると、
ぶくぶくと太って(野生では寒さ対策として必要ですが)暑い夏を乗り切ることができません。
そのため、肉食のホッキョクグマではありますが、夏場は魚や野菜を中心としたヘルシーな餌を与えることで、
皮下脂肪がつかないようにして暑さを乗り切れるようにしています。
また、冬場は寒さに耐えられるように餌の量を増やして皮下脂肪を蓄えさせます。


本日の双子さん



二頭で同時にダイビング!



息の合った動きを見せてくれました



さて、話は変わりましてサーバルのポッキーのお話です。




ポッキーは生年月日は不明ですが1994年に来園していますので、19歳以上の高齢のサーバルです。
19年間病気にかかることもなく、毛並は悪くなってきましたが、元気な姿を見せてくれていました。
先週あたりから食欲が落ちて、動きが悪くなったため、今週、麻酔下で検査を実施しました。

血液検査、エコー、レントゲンなど、可能な検査を実施しましたが、
事前に予想していました通り、慢性腎不全であることがわかりました。

ネコを飼育している方はよくご存じと思いますが
腎不全はネコ科動物では最も一般的な疾患で、
尿の生成、水や電解質等の濃度を調節する働きを持つ腎臓が諸々の原因により
障害を受け、ろ過機能が60%以下まで低下していく病気です。

今年死亡した雌のキキも死因は腎不全でしたが、
腎不全が分かった時にはすでに病状は進行しており
末期の腎不全のため、すぐに死亡してしまいました。

幸いポッキーは19歳の高齢ではありますが、
キキの時よりも軽度の腎不全のため、
今後は投薬と食事療法を続けて、少しでも長生きできるよう、ケアしていきたいと思っています。
みなさまも、温かく見守っていただければと思います。



最後に、

こどもZOOのドサンコの森で今年生まれたエゾリスとエゾモモンガの子供が
巣穴から徐々に出てくるようになりました・・・

明日から、一日に1~2時間程度、ドサンコの森の展示を再開しますので、
運が良ければ、かわいい姿を見ることができるかもしれません。

なお、まだまだ、環境に慣れておりませんので展示時間は不定となってますので、
ご了承ください。

アフリカ

みなさんこんにちは。

個人的には久しぶりの更新です。
メガネ獣医@2号機です。


さて、今日はっていうか今日もあまり獣医さんとは関係ない話です。
でもとても大事な仕事の話なのでお付き合いください。

ここ数年動物園では様々な動物舎の新築・改修が行われています。
そのほとんどに飼育員さんや我々獣医が計画段階から参加し、いかに動物の魅力を伝えるか、いかに動物を健康的に飼育するか、いかに動物飼育にあたってのリスクを軽減するかということを議論しています。

現在予定されているものとしては、今年、西門から白鳥池の跡地にかけてアジアソーンが建設されます。現在最終的な設計が出来上がったところです。

そしてそのあとにキッドランド跡地にアフリカゾーンが建設されます。
アジアゾーンとアフリカゾーンの整備により現在熱帯動物館にいる動物たちはお引っ越しということになります。
現在その基本的な計画を立てているところです。
今日はその裏側をご紹介したいと思います。




基本計画に掲載されている将来の動物園像。
計画通りになると決まったわけではありません・・・





まず、動物舎を建てるにあたって考えなければいけないことは、何を伝えるかということです。
動物園はお客様にただ動物を見ていただくだけでなく、動物を通して何かを伝えるという役割も担っています。
動物愛護の精神であったり、環境問題に関する問題提起であったり、伝えるべきことも様々です。

それが概ね決まった段階で、今度はそれを伝えるのに適した動物は何かということを話し合います。
20110706-00.gif
こんな感じでやってます。
飼育員さんに書いてもらった絵なんですが、各自の特徴をとらえすぎです(笑)



どこまでここに書いていいのかわからないので伏せますが、現在はある程度「こういうことを伝えていこう」ということが決まり、それに基づいてざっくりと動物種が決まったところです。

この「ざっくりと」というのが悩みどころで、予算には限りがあり、それにより建物の規模も制限されるため、どのくらいの種類、数の動物を入れられるのかが今の段階では見えづらいのです。
なので、ある程度優先順位を決めて、それぞれの動物スペースを配置したときに、どれくらいの余剰スペースができるかで他の動物が入るかどうかを考えていくという形になります。

そして今現在やっていることは見せ方のアイデア出しです。
円山動物園のいいところは動物を近くで見られるところという話を聞いたことがあります。
柵越しであったりガラス越しであったり、より近くに動物を感じてもらえる工夫をしてきたそうです。

新しい施設ではそういう良いところは残しつつ、一方で、熱帯動物館が抱えていた、臭いや暗さ、埃っぽさなどの問題、どうしても動物が狭いところに入れられているという印象を持たれてしまうことなどを解決していかなければなりません。

そこで今は、動物園職員からアイデアのイメージ図を募っているところです。それを建築・デザインの専門家に提供して、形を作り上げていくわけです。
やはり皆、少しでも楽しく、ゆったりと動物を見てほしい。少しでも多くのことを感じて、覚えて帰ってほしい。という思いは強く、たくさんのアイデアが出てきています。

今日はその中の一枚を紹介したいと思います。僕の書いたものですが・・・
20110706-01.gif

どうですか?我ながらよくかけたと自負しています。
皆様当然お分かりかと思いますが、ライオンの屋外放飼場です。
ライオンが「ニャーニャー」鳴いているのは、あまりによくかけたので思わずテンションが上がり書き加えてしまったものです。もちろんニャーニャー鳴くことはありません。

見たまんまなので説明は不要ですが、ライオンに囲まれる感じを表現しています。
ガラスを多用して、近くで見せる割とよくある斬新なアイデアです。

ちなみに北海道の動物園の動物舎を考えるにあたって問題になるのは寒冷と積雪です。
関東以南の動物園は冬場でも多くの動物が屋外で展示可能であるため、屋内施設を観覧する動物はそれほど多くありません。屋内は非公開になっているんですね。

でも北海道の動物園はそうはいきません。
あたたかい地域の動物たちは一日の大半を屋内で過ごすことになるため、その屋内の環境と、お客様に見せるための施設の工夫を行わなければいけないわけです。


また、積雪は建物の構造を大幅に制限します。
例えば巨大なガラスドームみたいな建物を作ったら、冬場のメンテナンスが大変なことになってしまいます。
放飼場に雪が積もることで、動物が逃げ出すリスクも高まります。



これからそんなことも頭に入れながら練り上げていくのです。

計画では平成26年頃オープン予定です。
皆様乞うご期待。

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