札幌100マイル

動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

『未分類』カテゴリーの投稿一覧

【お知らせ】円山動物園のブログを一本化しました

いつも円山動物園のブログをご愛読いただきましてありがとうございます。

平成28年(2016年)10月1日より、皆様に幅広い情報をすぐにご覧いただけるよう、これまで動物や担当業務ごとに分かれていたページを一本化いたしました。

新しいページには、こちらからアクセスいただけます。

http://www.city.sapporo.jp/zoo/blog_top.html

※これまでと同じように、動物ごとの情報をご覧になりたい方は、ブログ内の「カテゴリー」をクリックしていただくと、絞り込むことができます。

こちらでの報告が遅くなりまして大変申し訳ありません。

これからも円山動物園ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

レッサーパンダのココの皮膚症状について

レッサーパンダのココですが、2013年から陰部周辺の脱毛と皮膚炎を繰り返してきました。

これは、ココが陰部を床などにこすり付けることにより、陰部周辺に尿と便が付着し、そこに細菌感染が起こったことが原因であると考えられ、定期的に治療してきました。

その症状とは別に今年の春ごろから背部と脚部に脱毛が見られたため検査をしましたが、原因はわかりませんでした。8月後半には、繰り返してきた陰部周辺の脱毛と皮膚炎も見られるようになったため、麻酔下により入念な検査と治療を実施することにしました。

陰部の治療は通常通りに実施しましたが、脚部の皮膚検査の結果、ヒゼンダニの一種と思われる寄生虫が確認されました。

ヒゼンダニは疥癬症と呼ばれる皮膚病の原因となり、強いかゆみと皮膚炎をもたらします。ココの脱毛の一因も疥癬による皮膚炎だと考えらえるため、現在駆虫薬による治療中です。駆虫薬を繰り返し投与することで、ヒゼンダニは死滅するため、陰部以外の脱毛について疥癬が原因であれば、次第に皮膚症状も落ち着いてくると考え、経過を観察しているところです。

ココは現在1頭で飼育しており、他のレッサーパンダに感染する可能性は低いですが、獣舎の洗浄徹底と他個体の被毛状態チェックによる感染予防を実施しています。

なお、動物のヒゼンダニが人に感染することはまれで、感染経路は直接接触によるものですので、お客様へ影響が出ることはありません。

ハズバンダリートレーニング④ タツオの採血と今後

タツオのしっぽが安定して触れるようになり、いよいよ採血に取り組みました。

 

採血を行うためには、「針を刺した状態で長くしっぽを握り続ける」というこれまでとは少し異なることを行う必要があります。

 

なので、まずは長くしっぽを握り続けるトレーニングをはじめていきました。

 

駆血

近づいてきたしっぽを檻の外に出して、長時間握る訓練をしています。しっぽが出せるように檻の一部を加工しました。

 

 

 

これが終わると、いよいよ針を刺す段階となりましたが、針を刺して血を抜く感覚、というのはなかなか事前にトレーニングできるものでもなかったので、「刺してタツオが嫌がってしまったらやめる」という形をなるべく心掛けて行いました。

 

最初は、針を刺してもすぐに嫌がってしまうこともありました。ですが、針の刺す位置をしっぽの先端に近づけてみたり、針の太さを刺激の少ない細さに調整してみたりした結果、

 

あまり嫌がらずに針を刺させてくれるようになりました。

 

そして、ついに

採血図    採血成功

 

 

無事採血をすることができました!!

 

ここまで何か月もかかりましたが、地道に頑張ってくれたタツオに感謝です。

 

血液検査を行ったところ、腎臓の数値は前回よりも良くなっていました。残念ながら一度失った腎臓の機能は回復しないのですが、血液検査の結果を見る限り今のところ、これ以上悪くならないように投薬でうまくコントロールできているようです。

 

タツオもトレーニングに協力的なので、今後も定期的(1か月に1~2回を目安)に血液検査で腎臓の状態を確認していきたいと思っています。

 

これからは、伸びてしまっている爪を切ることを目指して、トレーニングを続けていきたいと思っています。

 

今後また進展があったら更新します。

(おうち)メガネ5号

 

 

 

 

 

 

ハズバンダリートレーニング3

 

前回トレーニングの準備段階について書かせていただきましたが、今回からはいよいよ

実践編になります。

まず、採血するためにはタツオにじっとしていてもらう必要があることから、最初に「伏せ」を覚えてもらうことから始めました。

「伏せ」の体勢をとってもらうために、地面に餌を置き続けます。

餌した

これを繰り返すと、次第に「座ってた方が食べやすいぞ」というふうに思い自然に「伏せ」の体勢をとるようになります。

大分伏せ

少しずつ足を曲げ、伏せる体勢に近づいてます。

伏せた

最後には、伏せてくれるようになりました!!

「伏せ」ができるようになったら、次はからだを触られることになれてもらうようにしました。採血はしっぽから行いますが、その他からだの様々な箇所に触れても大丈夫なようトレーニングを続けました。

これまで、タツオは触られること自体には慣れていなかったため、最初は嫌がって触られた場所をすぐに引っ込めてしまったりしてしまうこともありました。ただここで大事なのは、嫌がっていることを無理やり続けないこと。無理に続けてしまうとトレーニング自体を嫌いになってしまうので、そうならないよう慎重にトレーニングを行いました。

とはいっても嫌なところを触れるようにしないといけないので、最初は「ご褒美」を与え続けてタツオの気をそらしながら、少しづつ触れるよう心がけました。

餌与えている方

しっぽを触るトレーニングの風景です。檻の前から餌を与えています。左に立っている人がしっぽを触る訓練の担当者です。

しっぽさわり遠目

最初は餌を与え続けながら遠くのしっぽを触ります。このとき、おそらくタツオはこんな風に思っているはず、です。

(あれ~何か触れているような気がするけど、今はお肉がおいしいからまいっか~。)

 

そうして触れることに抵抗が無くなってきたら、今度は「ご褒美」を与えると同時に触って、「ご褒美」と「触られること」を関連付けます。さらに、触った後に「ご褒美」を出すようになると、「触られる」から「ご褒美」をもらえると思ってくれるようになります。

そうするとどうなるか、「ご褒美」をもらうために、触ってほしくて自ら動いて近づいてくるようになる、というわけです。

しっぽ近づいた

トレーニングを進めて最終的には、写真の用にしっぽを檻のすぐ横まで近づけてくれ、触っても全然気にしなくなりました!!(少し写真が見づらくてごめんなさい)。

この要領で、からだの様々な部分に触れるようにもしています。と言葉で書くのは簡単ですが、とにかく地道に続けていくしかないのがトレーニングです。触られるのを特に嫌がったりする場所や、触ることはできるがなかなか近づいてきてくれなかったりしたときは、その都度タツオが嫌がらないよう、積極的に近づいてきてくれるよう触り方を変えたりいろいろと工夫をしました。

そうこうしてようやくしっぽも触れるようになり、いよいよ採血に取り組みました。

 

続きはまた次回の更新で。

ハズバンダリートレーニング2

前回ハズバンダリートレーニングとは?について説明しましたが、

今回はアムールトラの「タツオ」が行っているトレーニングについてお話ししたいと思います。

タツオは慢性腎不全というネコ科の動物に多い病気にかかっており、現在常に薬を投薬している状態です。腎臓の状態が良くないので、本当は定期的に検査をしたいのですが、タツオは超高齢(19歳)なこともあり、麻酔の負担をなるべくかけたくないと思っています。

そこでハズバンダリートレーニングを行い、腎臓の状態について採血を行うことで確認しようとしました。

トレーニングを行うのにまず必要なことは、「人に慣れていること」です。

いくら頑張っても動物がよってきてくれないとそもそもトレーニングになりません。

幸い、タツオは人に慣れていたので問題ありませんでしたが、

人に慣れていない動物についてはどうするのか?という疑問がわいてきます。

 

そこで登場するのがトレーニングにおいてもっとも大事な「褒める」こと。

動物たちにとっての「ご褒美」はなんといってもおいしい食べ物。

これを人が直接渡して食べてもらうところからトレーニングはスタートします。

タツオに今与えている「ご褒美」、それはお肉のミンチです。

IMG_4701

(お肉には腎不全の薬をかけているため黒くなっています)

「ご褒美」があればそれでトレーニングは一応できます。ですが、より反応を良くするため写真のような道具を使います。

図2    図3

左写真のターゲット棒は、この棒を追って眼や顔を動かしたときに「ご褒美」を与えることで関連付けを行います。

右写真の犬笛は、吹いた音と同時に「ご褒美」を与えることで音との関連付けを行います。

このような道具を使うと、ターゲット棒の動きや犬笛の音に反応して動いてくれるようになります。(もちろん、そう簡単にはできませんが)

ここまでできるようになったら、いよいよ本格的にトレーニングをはじめます。

 

続きはまた次回の更新で。

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