札幌100マイル

動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

2011年07月 の投稿一覧

夜の獣医

皆様、こんばんは。メガネ3号にございます。

夏、ですね。



円山動物園も夏本番にございます。


夏の恒例行事、夜の動物園も、おかげさまをもちまして、
大変盛況をいただいております。

夜の動物園、夜のお菓子、夜のヒットスタジオ等々、「夜の」と修飾するだけで、
何だかミステリアス且つ魅惑的な響きになるものでございます。

一方、夜の獣医。闇夜で臀部より輝きを放つでもなく、
大抵は孤独に事務所に籠り、堆く積まれた書類の山に翻弄されております。


しかしながら、夜の動物園ともなれば、ちょこっと活動的に。
来園頂いたお客様のため、ドキドキ体験に精を出すのでございます。



動物病院体験も、夜仕様。
普段は予約制なのですが、夏の夜はちょこっと大胆且つ開放的。
前回は当日参加OKの人数多めで実施しております。


では、夜の動物病院体験、一体何が行われているのか。


…写真がございません。迂闊パート2。


それもそのはず、メガネはずっと喋ったり、機材いじったり、メガネのずれを直したり、
一心不乱に活動しておりますれば、
写真を撮っている余裕など微塵もなかったのでございます。

気になる方は是非ご参加ください。
一昔前のメガネ男子ブームに乗りそびれた残念メガネが、
粉骨砕身ご案内いたします。


真夏の夜は、



動物病院へ。

暗がりに浮かぶ扉の先で、参加者の皆々様に未知なる体験をご提供、

…できるといいな。

治療のおはなし。

少し前のことになりますが、エゾシカ・オオカミ舎の人気者、
シンリンオオカミのジェイ氏が口の周りを血だらけにしていると、
突然の無線が入ったのでございます。



当時の写真は無い。迂闊。

よもや誰か食われでもしたかと、最悪の事態を想定し、
現場へ急行したのでございますが、
当然のことながら、安全管理された獣舎の中、
そのような惨劇が起こるはずはありませぬ。

ただし、ジェイ氏の口は赤く染まっておりました。
確認した時点で、出血は止まっていましたので、
時を改め、体制を整え、治療やら検査やらを施したのでございます。

さて、ここからが重労働。
ジェイ氏、似ているからとシベリアンハスキー的感覚にて、
取り押さえて強引に口の中を拝見せんとすれば、
檻の中とはいえオオカミ、返り討ちに遭うは必定。

そんな時は



寝てもらいます。

如何にして寝てもらうか、
そこにも筆舌に尽くしがたい苦労があるのですが、
今回は割愛させていただきます。
詳しくお知りになりたい方は、是非、動物病院体験プログラムへご参加ください。
メガネの1号だか2号だか3号だかが、懇切丁寧に解説いたします。


しっかり寝かしつけたならば、ここから治療が始まります。



お口チェック。
舌に噛み傷が見つかりました。どうやら自分で舌を噛んでしまった様子。
さらに古傷がいくつも…。ジェイ…。







傷口を洗浄して、注射して、ついでに身体測定と血液検査で終了です。
ウェストハイランドホワイトテリアくらいの相手であれば、一人でも何とかなる処置。
しかしながら、相手はオオカミ、
ちょっとした治療が一大事なのでございます。

苦労の甲斐がございまして、ジェイ氏現在は元気に走り回っています。
動物たちをご覧になりながら、裏方の苦労にまで想いを馳せていただけならば、
感無量にございます。

興が乗って参りましたので、ここで一句。





一号氏  遊んでないで  ブログ書け


メガネ、心の俳句。

仕事、時々、勉学

獣医師たるもの、常に勉強を怠ってはならないのでございます。

と、常日頃怠けがちな自分自身に言い聞かせております。


そんな私でも心ときめく研究発表会がございまして、
念願かなって先日出席することと相成りました。



会場となった姫路の駅にて



大福のような、色白ぽっちゃりの姫様が出迎えてくださいました。


早朝5時起床という鬼の所業も相まって
道中から些かおかしなテンションをキープ。
車窓から望む巨大な橋と海に心奪われておりました。



嗚呼…、何時かあの橋を渡り、四国上陸を果たしたい…。



会場の様子にございます。



希少な動物の繁殖生理を解明する研究や、
自然繁殖が難しい動物に人工繁殖技術を応用する研究など、
主に動物園動物の繁殖に関わる発表が行われるのでございます。

大学在籍時より、繁殖に関わる分野を専攻しておりました私といたしましては、
脳漿が躍り出さんばかりに、眼窩から眼球が零れ落ちんばかりに、
聞き入り見入りしておりました。

二日間に亘り開催された研究会。
口頭発表、ポスター発表の数々、
さらには各動物園水族館の方々、
各研究機関の学生さん、教員の方々との交流等々、
濃密な時間を過ごさせていただきました。

遠出をする貴重な機会にございます。
近隣の動物園をチェックするのも仕事のうち…、のはず。

姫路市立動物園にお邪魔いたしました。



敷地面積はやや小さめではございますが、
世界遺産、姫路城が園内から一望できる、雅な動物園にございます。



しかしながら今しばらくは工事中につき
姫路城改め、マスク・ド・ヒメジジョウが代役を務めます。



さらにこちらには繁殖の期待がかかるホッキョクグマのカップルが在籍。
昨年は残念な結果となりましたが、
今年こそは繁殖成功をと、心より願うばかりにございます。


大変に充実したこの度の姫路行、心残りが一つばかり。



滴る雨に霞むマスク・ド・ヒメジジョウ。
先日私に懸けられたる、雨男の嫌疑を晴らすこと非わず…。

梅雨のせいと自分を慰めてみたりもいたしましたが、
私が帰札するや否や、梅雨明けする始末…。
私が如何程の業を背負っているというのでしょうか…。


アフリカ

みなさんこんにちは。

個人的には久しぶりの更新です。
メガネ獣医@2号機です。


さて、今日はっていうか今日もあまり獣医さんとは関係ない話です。
でもとても大事な仕事の話なのでお付き合いください。

ここ数年動物園では様々な動物舎の新築・改修が行われています。
そのほとんどに飼育員さんや我々獣医が計画段階から参加し、いかに動物の魅力を伝えるか、いかに動物を健康的に飼育するか、いかに動物飼育にあたってのリスクを軽減するかということを議論しています。

現在予定されているものとしては、今年、西門から白鳥池の跡地にかけてアジアソーンが建設されます。現在最終的な設計が出来上がったところです。

そしてそのあとにキッドランド跡地にアフリカゾーンが建設されます。
アジアゾーンとアフリカゾーンの整備により現在熱帯動物館にいる動物たちはお引っ越しということになります。
現在その基本的な計画を立てているところです。
今日はその裏側をご紹介したいと思います。




基本計画に掲載されている将来の動物園像。
計画通りになると決まったわけではありません・・・





まず、動物舎を建てるにあたって考えなければいけないことは、何を伝えるかということです。
動物園はお客様にただ動物を見ていただくだけでなく、動物を通して何かを伝えるという役割も担っています。
動物愛護の精神であったり、環境問題に関する問題提起であったり、伝えるべきことも様々です。

それが概ね決まった段階で、今度はそれを伝えるのに適した動物は何かということを話し合います。
20110706-00.gif
こんな感じでやってます。
飼育員さんに書いてもらった絵なんですが、各自の特徴をとらえすぎです(笑)



どこまでここに書いていいのかわからないので伏せますが、現在はある程度「こういうことを伝えていこう」ということが決まり、それに基づいてざっくりと動物種が決まったところです。

この「ざっくりと」というのが悩みどころで、予算には限りがあり、それにより建物の規模も制限されるため、どのくらいの種類、数の動物を入れられるのかが今の段階では見えづらいのです。
なので、ある程度優先順位を決めて、それぞれの動物スペースを配置したときに、どれくらいの余剰スペースができるかで他の動物が入るかどうかを考えていくという形になります。

そして今現在やっていることは見せ方のアイデア出しです。
円山動物園のいいところは動物を近くで見られるところという話を聞いたことがあります。
柵越しであったりガラス越しであったり、より近くに動物を感じてもらえる工夫をしてきたそうです。

新しい施設ではそういう良いところは残しつつ、一方で、熱帯動物館が抱えていた、臭いや暗さ、埃っぽさなどの問題、どうしても動物が狭いところに入れられているという印象を持たれてしまうことなどを解決していかなければなりません。

そこで今は、動物園職員からアイデアのイメージ図を募っているところです。それを建築・デザインの専門家に提供して、形を作り上げていくわけです。
やはり皆、少しでも楽しく、ゆったりと動物を見てほしい。少しでも多くのことを感じて、覚えて帰ってほしい。という思いは強く、たくさんのアイデアが出てきています。

今日はその中の一枚を紹介したいと思います。僕の書いたものですが・・・
20110706-01.gif

どうですか?我ながらよくかけたと自負しています。
皆様当然お分かりかと思いますが、ライオンの屋外放飼場です。
ライオンが「ニャーニャー」鳴いているのは、あまりによくかけたので思わずテンションが上がり書き加えてしまったものです。もちろんニャーニャー鳴くことはありません。

見たまんまなので説明は不要ですが、ライオンに囲まれる感じを表現しています。
ガラスを多用して、近くで見せる割とよくある斬新なアイデアです。

ちなみに北海道の動物園の動物舎を考えるにあたって問題になるのは寒冷と積雪です。
関東以南の動物園は冬場でも多くの動物が屋外で展示可能であるため、屋内施設を観覧する動物はそれほど多くありません。屋内は非公開になっているんですね。

でも北海道の動物園はそうはいきません。
あたたかい地域の動物たちは一日の大半を屋内で過ごすことになるため、その屋内の環境と、お客様に見せるための施設の工夫を行わなければいけないわけです。


また、積雪は建物の構造を大幅に制限します。
例えば巨大なガラスドームみたいな建物を作ったら、冬場のメンテナンスが大変なことになってしまいます。
放飼場に雪が積もることで、動物が逃げ出すリスクも高まります。



これからそんなことも頭に入れながら練り上げていくのです。

計画では平成26年頃オープン予定です。
皆様乞うご期待。

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