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by 大熊 一精

大熊 一精
プロフィール

1967年生まれ、埼玉県川越市出身。
銀行系シンクタンクに12年間勤務の後、2002年から札幌市に移り住み、現在はフリーランスのコンサルタントとして活動中。 「一日一冊」を目標に、ジャンルを問わずに、本を読んでいます。読書量全体のうち、電子書籍端末で読む割合は3割ぐらい。 札幌市民になってからは、毎年、コンサドーレ札幌のシーズンチケットを購入し、2014年シーズンで13年目。週末ごとに悲しい思いをすることのほうが多いのに、自分が生きているうちに一度ぐらいはJ1で優勝してほしいと願いながら、懲りずに応援を続けてます。
著書「北大の研究者たち 7人の言葉」(エイチエス、2012年刊)


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『低予算でもなぜ強い? 湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地』戸塚啓

『低予算でもなぜ強い? 湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地』戸塚啓(光文社新書746,2015年3月刊)

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スポーツライター戸塚啓氏が、湘南ベルマーレを、サッカー的な視点というよりはビジネス的な視点から描いた好著です。

 

カバーの袖の部分には、この本の紹介として、こんなことが書かれています−《2014年、開幕14連勝、その後21戦負け無しの新記録を作り、史上最速でJ1昇格を決めた湘南ベルマーレ。足りないものを悔やまない、Jリーグが誇るべき「中小企業」の15年間の奮闘を、スポーツライターが丹念に迫ったビジネスノンフィクション》−そうなんです、この本は、湘南ベルマーレというJリーグのチームを描いた本なのですが、サッカーの戦術がどうこうとか、監督がどうこうとかの本ではないのです。

 

目次にも、「コンテンツとしてのサッカー」「サッカーだけを教えればいいのか」「『ここで仕事をしたい』と思わせる力」「サッカーの現場、営業の現場」「サッカークラブの『稼ぐ』力」と、Jリーグチームの運営会社の目線から見た言葉が並んでいます。近隣に横浜F・マリノスという規模の大きな同業他社がいる環境にあって、母体チームをバックアップしていた大スポンサーが離れた後の湘南ベルマーレは、どのように生き残ってきたのか。地域密着という言葉は耳に心地よい言葉ですが、地域に密着しようとしても受け入れられなければ話にならない。でも、受け入れられるだけでは、まだまだ、不十分です。地域から必要とされて、さらには、必要な存在だからみんなで支えようというレベルまで行かなければ、プロのサッカーチームという企業は存続していくことができません。

 

そのための取り組みは、1年や2年で結果が出るものではない、ということが、この本を読むと、よくわかります。ただ自分たちのよさを訴えるだけでは、サッカーというコンテンツ=モノでもサービスでもないもの=にお金を出してもらうことは難しい。まずは自分たちが魅力的な存在にならなければならない。そのためには、試合の内容やイベントをおもしろくするだけではなく、地域の人たちから尊敬される存在にならなければならない、だから、たとえば18歳以下のユースチームの選手は、サッカーがうまいかどうかの前に、挨拶ができなければいけない…そうした論点が、湘南ベルマーレに携わる人々へのインタビューから、数多く、引き出されています。

 

非常に個人的な思いになりますが、コンサドーレ札幌に興味のある人には、ぜひ、読んでほしい本です。地域で活動する方、とりわけ限られたエリアと資本で商売している(せざるを得ない)方にも、きっと、役に立ちます。

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