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2014年12月 の投稿一覧

私的 2014年のベストな10冊

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2014年もたくさんの本に楽しませてもらいましたが、ここでは、今年(2014年)に刊行された本に限って、「おもしろかった本」「印象に残った本」のベストテンを選んでみました。

 

1位 さようならと言ってなかった わが愛 わが罪

猪瀬直樹さんの作家復帰第一作。淡々とした筆致ゆえに、林真理子さんの帯文−《この作家の夫婦愛に泣き、不運さに憤る。》−の通り、読者は感情を揺さぶられるのです(この本についてはこちらでも紹介しました)。

 

2位 ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

《絶滅か、それとも進歩か。それは僕たち次第だ。未来が勝手によくなるわけはない—ということは、今僕たちがそれを創らなければならないということだ。》(「終わりに 停滞かシンギュラリティか」)。

 

3位 金哲彦のはじめてのランニング 運動ゼロからレース出場まで

たまたま今年の春から走り始めた私がたまたま見かけて手にとった本でしたが、まさしく「運動ゼロから」の人を対象にしており、安心して読めます。ちょっとでも気になったら、とりあえず、読んでみましょう。

 
4位 1964年のジャイアント馬場

『1976年のアントニオ猪木』や『1985年のクラッシュ・ギャルズ』の柳澤健氏の最新刊。馬場はすぐれたアスリートであるとともに、自分自身をプロモートすることに長けた人物だったのですね。

 

5位 マラカナンの悲劇: 世界サッカー史上最大の敗北
6位 礎・清水FCと堀田哲爾が刻んだ日本サッカー五〇年史
7位 Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か

今年は(じつは)ワールドカップが開催された年でした(もうすっかり忘れ去られてますが)。そのためサッカー本もたくさん出ましたが、なかでも印象に残ったのがこの3冊。『マラカナンの悲劇』と『礎』は、いずれも、一次資料を丹念に当たり、関係した人々のインタビューを重ねた結果の重厚なノンフィクション。『Jリーグの戦術は…』は、近年増えているサッカー戦術論がテーマではありますが、著者(西部謙司氏)の文章がとてもわかりやすく、映像がないのにまるで映像を見ているかのように理解できるのが素晴らしい。

 

8位 「本が売れない」というけれど
9位 メディアの苦悩――28人の証言

オールドメディアについてメディアの側から論じると、とかくノスタルジックな感情論に陥りがちですが、この2冊は、当事者ならではの感覚を持ちながらも、読者の側に立った視点を強く意識してメディアを論じている、とてもバランスのいい本です。本や出版やコンテンツビジネスに関心のある方にはとくにおすすめ。

 

10位 日本漁業の真実 (ちくま新書)

農林漁業というけれど、世の中で論じられるのはとかく農業だったりするわけで、漁業については意外に知られていない、というより、情報が少ない中、さまざまな角度から日本の漁業の現状と課題をまとめた良書です。

 
番外 ジャイキリ読んで〇〇してきました

ストーリー性やテーマ性という点で、もはや漫画を漫画以外の本(文字だけの本)と区別することはなかろうとも思うのですが、こうして並べてみるとこの中に入れるにはちょっと無理がある感じがしたので、番外として紹介します。サッカー(とくにJリーグ)をライブで見ることの楽しさがこれほどまでにわかりやすく語られているのは見たことがない!と感じたコミックエッセイです。Jリーグ好きの方はJリーグ未体験の人にどんどん勧めましょう。

 

ということで、10月から始めたこの書評ブログ、12月に入ってペースが落ちてしまいましたが、年明けからは週1ぐらいで、新刊旧刊問わずに、ただただおもしろい本の紹介を続けていこうと思っています。本年は短い間のお付き合いでしたが、ありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

 

みなさま、よいお年を!

北海道の動物たち 人と野生の距離(千嶋淳、ホーム社/集英社)

北海道の動物たち 人と野生の距離(千嶋淳、ホーム社/集英社)

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2014年10月刊。

 

1976年生まれの著者は、「あとがき」で、自らを《「お仕事は?」と聞かれて困ってしまうのですが、「野生生物の現状を調べ、その魅力や人間との間に抱えている問題を広く知ってもらい、解決へ向けたお手伝いをする」のが自分の仕事と考えています》と紹介しています(<羨ましい(^^;))。

 

写真が豊富で、文章も平易。それでいて、大事なことがたくさん書いてある。帯の推薦文にある通り、うれしい本、です。

 

きわめて個人的な話になりますが、帯に推薦文を寄せている竹田津実さんとは、1980年代後半に、小清水町で何度かお会いしたことがあります。当時、私は、長い休みのたびに北海道(主として道東)を訪れていました。当初は鉄道旅行がメインだったのが、やがてユース・ホステルに泊まることが目的となり、その流れで北海道の動植物にも関心を抱くようになって、自然保護(というよりも自然との共存=現代風に言えば「共生」=)の先駆的な取り組みをしていた小清水町には、何度も通い、ユース・ホステルのお手伝い(ヘルパー)という立場でひと冬を過ごしたこともあります。

 

今回、この本を読んで、その当時の感覚が、現在ではかなり違っていることに、あらためて驚きました。

 

あらためて、というのは、12年前に東京から北海道に引っ越してきて、幸いなことに道内各地をまわる機会をいただいて、たとえばエゾシカが異常なほど増えていることは実感していたり、礼文島の沿岸にアザラシが増殖していることは経験上知っていたりするからなのですが(私は1997年から「礼文島を歩こう!」というウェブサイトをやってます)、それにしても、私が道東を自分の足で歩いていた頃に比べるとタンチョウ(丹頂鶴)の数が3倍近くになっている、とか、霧多布岬までわざわざ見に行ったエトピリカが現在では絶滅してしまっている、などといったことには、いつの間にそんなことになっていたんだ!と、驚くばかりです。

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