札幌100マイル

RSS 動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

by vetblog

プロフィール

札幌市円山動物園

メガネ1号
子育て奮闘中。1号なだけにリーダー格。

メガネ2号
AGA治療を真剣に検討中。昇進につき欠番。

メガネ3号
草食系。出身地詐称疑惑に悩み中。

(おうち)メガネ4号
略してΩ4。追いつけ追い越せ修行中。

(おうち)メガネ5号
ねこ好き。


投稿したブログ数:180件

アフリカ

みなさんこんにちは。

個人的には久しぶりの更新です。
メガネ獣医@2号機です。


さて、今日はっていうか今日もあまり獣医さんとは関係ない話です。
でもとても大事な仕事の話なのでお付き合いください。

ここ数年動物園では様々な動物舎の新築・改修が行われています。
そのほとんどに飼育員さんや我々獣医が計画段階から参加し、いかに動物の魅力を伝えるか、いかに動物を健康的に飼育するか、いかに動物飼育にあたってのリスクを軽減するかということを議論しています。

現在予定されているものとしては、今年、西門から白鳥池の跡地にかけてアジアソーンが建設されます。現在最終的な設計が出来上がったところです。

そしてそのあとにキッドランド跡地にアフリカゾーンが建設されます。
アジアゾーンとアフリカゾーンの整備により現在熱帯動物館にいる動物たちはお引っ越しということになります。
現在その基本的な計画を立てているところです。
今日はその裏側をご紹介したいと思います。




基本計画に掲載されている将来の動物園像。
計画通りになると決まったわけではありません・・・





まず、動物舎を建てるにあたって考えなければいけないことは、何を伝えるかということです。
動物園はお客様にただ動物を見ていただくだけでなく、動物を通して何かを伝えるという役割も担っています。
動物愛護の精神であったり、環境問題に関する問題提起であったり、伝えるべきことも様々です。

それが概ね決まった段階で、今度はそれを伝えるのに適した動物は何かということを話し合います。
20110706-00.gif
こんな感じでやってます。
飼育員さんに書いてもらった絵なんですが、各自の特徴をとらえすぎです(笑)



どこまでここに書いていいのかわからないので伏せますが、現在はある程度「こういうことを伝えていこう」ということが決まり、それに基づいてざっくりと動物種が決まったところです。

この「ざっくりと」というのが悩みどころで、予算には限りがあり、それにより建物の規模も制限されるため、どのくらいの種類、数の動物を入れられるのかが今の段階では見えづらいのです。
なので、ある程度優先順位を決めて、それぞれの動物スペースを配置したときに、どれくらいの余剰スペースができるかで他の動物が入るかどうかを考えていくという形になります。

そして今現在やっていることは見せ方のアイデア出しです。
円山動物園のいいところは動物を近くで見られるところという話を聞いたことがあります。
柵越しであったりガラス越しであったり、より近くに動物を感じてもらえる工夫をしてきたそうです。

新しい施設ではそういう良いところは残しつつ、一方で、熱帯動物館が抱えていた、臭いや暗さ、埃っぽさなどの問題、どうしても動物が狭いところに入れられているという印象を持たれてしまうことなどを解決していかなければなりません。

そこで今は、動物園職員からアイデアのイメージ図を募っているところです。それを建築・デザインの専門家に提供して、形を作り上げていくわけです。
やはり皆、少しでも楽しく、ゆったりと動物を見てほしい。少しでも多くのことを感じて、覚えて帰ってほしい。という思いは強く、たくさんのアイデアが出てきています。

今日はその中の一枚を紹介したいと思います。僕の書いたものですが・・・
20110706-01.gif

どうですか?我ながらよくかけたと自負しています。
皆様当然お分かりかと思いますが、ライオンの屋外放飼場です。
ライオンが「ニャーニャー」鳴いているのは、あまりによくかけたので思わずテンションが上がり書き加えてしまったものです。もちろんニャーニャー鳴くことはありません。

見たまんまなので説明は不要ですが、ライオンに囲まれる感じを表現しています。
ガラスを多用して、近くで見せる割とよくある斬新なアイデアです。

ちなみに北海道の動物園の動物舎を考えるにあたって問題になるのは寒冷と積雪です。
関東以南の動物園は冬場でも多くの動物が屋外で展示可能であるため、屋内施設を観覧する動物はそれほど多くありません。屋内は非公開になっているんですね。

でも北海道の動物園はそうはいきません。
あたたかい地域の動物たちは一日の大半を屋内で過ごすことになるため、その屋内の環境と、お客様に見せるための施設の工夫を行わなければいけないわけです。


また、積雪は建物の構造を大幅に制限します。
例えば巨大なガラスドームみたいな建物を作ったら、冬場のメンテナンスが大変なことになってしまいます。
放飼場に雪が積もることで、動物が逃げ出すリスクも高まります。



これからそんなことも頭に入れながら練り上げていくのです。

計画では平成26年頃オープン予定です。
皆様乞うご期待。

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