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動物病院だより メガネ獣医奮闘記

現場で働くメガネの獣医3名と動物たちとの悲喜こもごもをお送りします。

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仕事、時々、勉学

獣医師たるもの、常に勉強を怠ってはならないのでございます。

と、常日頃怠けがちな自分自身に言い聞かせております。


そんな私でも心ときめく研究発表会がございまして、
念願かなって先日出席することと相成りました。



会場となった姫路の駅にて



大福のような、色白ぽっちゃりの姫様が出迎えてくださいました。


早朝5時起床という鬼の所業も相まって
道中から些かおかしなテンションをキープ。
車窓から望む巨大な橋と海に心奪われておりました。



嗚呼…、何時かあの橋を渡り、四国上陸を果たしたい…。



会場の様子にございます。



希少な動物の繁殖生理を解明する研究や、
自然繁殖が難しい動物に人工繁殖技術を応用する研究など、
主に動物園動物の繁殖に関わる発表が行われるのでございます。

大学在籍時より、繁殖に関わる分野を専攻しておりました私といたしましては、
脳漿が躍り出さんばかりに、眼窩から眼球が零れ落ちんばかりに、
聞き入り見入りしておりました。

二日間に亘り開催された研究会。
口頭発表、ポスター発表の数々、
さらには各動物園水族館の方々、
各研究機関の学生さん、教員の方々との交流等々、
濃密な時間を過ごさせていただきました。

遠出をする貴重な機会にございます。
近隣の動物園をチェックするのも仕事のうち…、のはず。

姫路市立動物園にお邪魔いたしました。



敷地面積はやや小さめではございますが、
世界遺産、姫路城が園内から一望できる、雅な動物園にございます。



しかしながら今しばらくは工事中につき
姫路城改め、マスク・ド・ヒメジジョウが代役を務めます。



さらにこちらには繁殖の期待がかかるホッキョクグマのカップルが在籍。
昨年は残念な結果となりましたが、
今年こそは繁殖成功をと、心より願うばかりにございます。


大変に充実したこの度の姫路行、心残りが一つばかり。



滴る雨に霞むマスク・ド・ヒメジジョウ。
先日私に懸けられたる、雨男の嫌疑を晴らすこと非わず…。

梅雨のせいと自分を慰めてみたりもいたしましたが、
私が帰札するや否や、梅雨明けする始末…。
私が如何程の業を背負っているというのでしょうか…。


アフリカ

みなさんこんにちは。

個人的には久しぶりの更新です。
メガネ獣医@2号機です。


さて、今日はっていうか今日もあまり獣医さんとは関係ない話です。
でもとても大事な仕事の話なのでお付き合いください。

ここ数年動物園では様々な動物舎の新築・改修が行われています。
そのほとんどに飼育員さんや我々獣医が計画段階から参加し、いかに動物の魅力を伝えるか、いかに動物を健康的に飼育するか、いかに動物飼育にあたってのリスクを軽減するかということを議論しています。

現在予定されているものとしては、今年、西門から白鳥池の跡地にかけてアジアソーンが建設されます。現在最終的な設計が出来上がったところです。

そしてそのあとにキッドランド跡地にアフリカゾーンが建設されます。
アジアゾーンとアフリカゾーンの整備により現在熱帯動物館にいる動物たちはお引っ越しということになります。
現在その基本的な計画を立てているところです。
今日はその裏側をご紹介したいと思います。




基本計画に掲載されている将来の動物園像。
計画通りになると決まったわけではありません・・・





まず、動物舎を建てるにあたって考えなければいけないことは、何を伝えるかということです。
動物園はお客様にただ動物を見ていただくだけでなく、動物を通して何かを伝えるという役割も担っています。
動物愛護の精神であったり、環境問題に関する問題提起であったり、伝えるべきことも様々です。

それが概ね決まった段階で、今度はそれを伝えるのに適した動物は何かということを話し合います。
20110706-00.gif
こんな感じでやってます。
飼育員さんに書いてもらった絵なんですが、各自の特徴をとらえすぎです(笑)



どこまでここに書いていいのかわからないので伏せますが、現在はある程度「こういうことを伝えていこう」ということが決まり、それに基づいてざっくりと動物種が決まったところです。

この「ざっくりと」というのが悩みどころで、予算には限りがあり、それにより建物の規模も制限されるため、どのくらいの種類、数の動物を入れられるのかが今の段階では見えづらいのです。
なので、ある程度優先順位を決めて、それぞれの動物スペースを配置したときに、どれくらいの余剰スペースができるかで他の動物が入るかどうかを考えていくという形になります。

そして今現在やっていることは見せ方のアイデア出しです。
円山動物園のいいところは動物を近くで見られるところという話を聞いたことがあります。
柵越しであったりガラス越しであったり、より近くに動物を感じてもらえる工夫をしてきたそうです。

新しい施設ではそういう良いところは残しつつ、一方で、熱帯動物館が抱えていた、臭いや暗さ、埃っぽさなどの問題、どうしても動物が狭いところに入れられているという印象を持たれてしまうことなどを解決していかなければなりません。

そこで今は、動物園職員からアイデアのイメージ図を募っているところです。それを建築・デザインの専門家に提供して、形を作り上げていくわけです。
やはり皆、少しでも楽しく、ゆったりと動物を見てほしい。少しでも多くのことを感じて、覚えて帰ってほしい。という思いは強く、たくさんのアイデアが出てきています。

今日はその中の一枚を紹介したいと思います。僕の書いたものですが・・・
20110706-01.gif

どうですか?我ながらよくかけたと自負しています。
皆様当然お分かりかと思いますが、ライオンの屋外放飼場です。
ライオンが「ニャーニャー」鳴いているのは、あまりによくかけたので思わずテンションが上がり書き加えてしまったものです。もちろんニャーニャー鳴くことはありません。

見たまんまなので説明は不要ですが、ライオンに囲まれる感じを表現しています。
ガラスを多用して、近くで見せる割とよくある斬新なアイデアです。

ちなみに北海道の動物園の動物舎を考えるにあたって問題になるのは寒冷と積雪です。
関東以南の動物園は冬場でも多くの動物が屋外で展示可能であるため、屋内施設を観覧する動物はそれほど多くありません。屋内は非公開になっているんですね。

でも北海道の動物園はそうはいきません。
あたたかい地域の動物たちは一日の大半を屋内で過ごすことになるため、その屋内の環境と、お客様に見せるための施設の工夫を行わなければいけないわけです。


また、積雪は建物の構造を大幅に制限します。
例えば巨大なガラスドームみたいな建物を作ったら、冬場のメンテナンスが大変なことになってしまいます。
放飼場に雪が積もることで、動物が逃げ出すリスクも高まります。



これからそんなことも頭に入れながら練り上げていくのです。

計画では平成26年頃オープン予定です。
皆様乞うご期待。

別れの朝

動物の搬出があると、獣医師も必ず借り出されます。
今朝は、2頭のダイアナモンキーと、

アカアシガメと



キアシガメが


それぞれの新天地へと旅立って行きました。



この2頭のカメ、実は30年近くも旧は虫類館を支えてくれた大功労動物です。
私の在園歴の10倍以上。重ねた年齢も、私よりも上。

そんな彼らがいなくなると、旧は虫類館の終焉をひしひしと感じます。



既に動物たちの新施設への移動はすべて終了し、



館内から動物たちの息遣いが消えました。

もともと静謐な暮らしの動物たちが佇む空間でしたが、
館内は、往時とは別の静寂に包まれています。


かつては数多の爬虫類で賑わっていたバックヤードも、



つはものたちが、夢のあと。





隣接する昆虫館も、最後の時が迫っています。



そんな折、飛翔室では、



私達との別れを彩るかのように、
ランタナの花が、盛大に咲き誇っていました。

とても美しく、少し哀しい、花々の色。

命なき建造物の、声なき惜別の挨拶なのかもしれません。


両建物様、お疲れさまでした。


昆虫館の傍らより湧き出た、謎の地球外生物。
日の光の下で、改めて見てみると…



鮮やかな緑が美しい…?
ともすれば、生命の躍動を感じさせる…?

このままでは、この者の素性がわからぬままの別れとなりますれば、
残念至極にございます。

おはやうございます。

私共動物園の獣医の朝は早い…



もとい、早くありたい。

布団という甘美なる装置の魅力には抗しがたく、
理想の起床時間からは大幅に遅れ、日々目を覚ますのでございます。

しかしながら、モコモコの悪魔に打ち勝ち、
朝早く出勤することに成功した暁には、
動物たちの健康チェックと嘯き、
誰もいない開園前の動物園へと散策に出るのでございます。

古来より、早起きは三文の得と申しますように、
朝の動物園では、オモチロキ光景に出くわすことがございます。




過ぎ去りし、冬の1コマ。



エゾシカのメグム氏が通りがかりのカラス氏と対峙しておりました。
しばらく様子を窺っていたところ、カラス氏優勢のように見受けられますれば、
メグム氏の今後の研鑽を、願ってやまないのでございます。



ある日、カンガルー館にて



シンクロニシティーン!!




また別の日、カンガルー館にて



シンクロニシティーン2!!!


ただそこにいるだけで、縦横無尽に愛らしさを振りまく熊猫たち。
このような見事なるコンビプレイまで繰り出されては、抗う術はございませぬ。
末恐ろしいばかりにございます。





在りし日の、旧爬虫類館では



親チャクワラの上に子チャクワラ、そのまた上に孫チャクワラ。
某カリスマ飼育員のカリスマブログに同様な写真がアップデイトされておりますが、
カメラにおさめたのはこちらが先。  
のはず。
3頭そろったカメラ目線を、ぴしゃりと押さえてございますれば、
カメラの腕前ならば、こちらが上。
ということはない。


しかしながら、朝の動物園も心躍ることばかりではありませぬ。
時には、不穏なる光景を目にしてしまうこともございます。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



ある朝、昆虫館某所に出現せしは、
毒の瘴気を排出するという、腐海の生物か。
あるいは、壊されゆく建物の、現世への未練を載せた断末魔か。

いずれにせよ、この世に存在してはならぬものと見受けます。
この異形を目にした私の身に、良からぬことが起きはしないかと、
不安な日々を過ごす、今日この頃にございます。

虫とり

本格的に暖かくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
メガネ3号にございます。

暖かくなりますと、様々な方々が元気でいらっしゃいます。

そのうちの一つ



むし。

獣医師はしばしば虫とりに勤しむことがありますが、
今日はそんな虫のお話をさせていただきたく存じます。

なお、冒頭のような美しい虫は、今後一切登場いたしません。
お食事中の方、足が六本以上もしくは無足の生物は愛せない方、
就寝中に顔面にゴキブリが落ちてきたトラウマを抱えた方等々は
次のリンク先には行かれないほうが、幸せでありましょう。


獣医師が対峙する虫といいいますと、そう、寄生虫。
素知らぬ顔して、無垢な動物達にパラサイト。
時には宿主の方々の健康を脅かす、困った虫々にございます。

さて、そんなパラサイターのトップを飾るのは



たっぷりと血液を食し満足げな、マダニ。
この者は、野生のタヌキの皮膚にパラサイトしておりました。
野山に突入したペットや人間にパラサイトすることもありますれば、
皆様もお気を付けくださいませ。

見つけてもすぐに引き抜いてはいけません。
ダニの口先が皮膚の中に残ってしまうことがございますゆえ、
病院を受診されることをお勧めいたします。


恐れ多くも、当園のスター、ホッキョクグマのララ氏にパラサイト、



クマ回虫。



普段は瓶の中にて病院体験(http://www.city.sapporo.jp/zoo/others/hospital.html)
などにいらっしゃる方々をお出迎えしております。

ララ氏のお腹の中に潜伏しておりました。
可愛い振りしてララ氏、割とやるもんだね、と。


こちらはユキヒョウ。



卵の状態で潜伏しているところ、顕微鏡にて発見。


巧妙に隠れる寄生虫達の潜伏先を突き止め、ご退去願うため、
私共は日々苦悶しているのでございます。



円山動物園に隠れているムシの中には、こんな方も。



範○勇次郎氏と並び地上最強の生物との呼び声高い、
みんなの人気者、クマムシ氏にございます。
この方の魅力は筆舌に尽くしがたいため、
細かな説明は割愛させていただきます。
ググルなり、ウィキるなり、クマムシ氏の秘密を知れば、
皆様、その虜となること請け合いでございます。


深夜のコックローチアタックにより、心に傷を負った私なれど、
虫との日々は今後も続いていくのでございます。

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