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冬プロレポート~冬の円山動物園から~

冬の動物園プロジェクト、略して冬プロのメンバーが冬の動物園の魅力を発信

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『釧路動物園』タグの付いた投稿

冬プロ16日目 アムールトラの『リング』来園

みなさんこんにちは
そしてはじめまして。
円山動物園のメガネ獣医2号です。

冬プロジェクト企画。
ブログ毎日更新の苦行?も16日目に突入。

休み明けで出勤してみると、ありましたよ。


ブログ当番のうさちゃん。
その愛らしさとは裏腹に見るものをブルーにさせる『毎日更新』の文字




いやー、存在は知っていたけど(冬プロメンバーだから知ってて当然なんだけど・・・)、思わず見なかったことにしようかと思いましたよ。

ただね、既に15日連続で更新しているわけで、ここで途切れさせると色々マズイわけですよ。
写真では見えませんが、これまで更新した人の名前を書いたメモがくっついていて、それもそこはかとないプレッシャーを感じさせます。

なので自らを奮い立たせてPCに向かっているわけです。



さて、冒頭から愚痴で始まりましたが、今日はしっかりネタがあるのである意味ラッキーです。
他の日に当たってたらネタ探しでエライことになってたかもしれません(笑)

というのも、今日はアムールトラのオス『リング』の搬入があるんですね。

これまで、円山動物園には『タツオ』という愛想のいいオスがおりまして、ドイツから来たメスの「アイ」とカップリングしておりました。

澄ましたカオのタツオ氏


グラビア風のアイ様

『タツオ』と『アイ』は仲も良く、『タツオ』自身も愛想がよくて人気の個体だったのですが、残念なことに子宝に恵まれず、ペアリング開始から5年が経過しています。



ご存知の方も多いかもしれませんが、野生のアムールトラは乱獲や生息地の減少、分断などにより生息数を減らしており、国内外の動物園などにおいて繁殖が取り組まれているところです。
メスの『アイ』はドイツ生まれの良い血筋ですが、もう8歳。脂の乗った?良いお年頃です。
今後の国内の動物園における種の保存のためにも、適齢期を過ぎる前に繁殖させなければなりません。

そのため、大変残念ですが、ペアの組み換えを行うという結論に至りました。
『リング』はこれまでに種付け経験のあるオスなので、繁殖の可能性もより高いだろうという判断です。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、12月14日に『タツオ』を帯広動物園に移動させており、本日、『リング』を搬入するわけでございます。

ということで、前置きが長くなってしまいましたが、今日はこのトラの搬入作業をご紹介したいと思います。

動物園職員にとって動物の移動はなかなか大変な出来事です。
どのように動物にとっても人にとっても安全に移動させるかということに頭を悩ませます。

移動させるための檻の材質や構造、どのように檻に入れ、またどのように檻から放飼場に出すか、考えなければいけないことがたくさんあります。
大型肉食獣となればなおさら慎重に行わなければなりません。

今日の計画は
①15時頃『リング』が多摩動物公園から、移動用の檻に入って到着
②『リング』を多摩動物公園製の檻から、円山動物園製の移動用の檻に移し替える
③円山動物園製の檻をトラの屋内放飼場に接合し、『リング』を放飼場内に放つ。

という段取りです。

②の作業は多摩動物公園製の檻がサイズ的に円山のトラの放飼場に接合させることができないために行うものです。
これをしないと、麻酔をかけて檻から出すしかないので、動物にとってのリスクが大幅に高まります。
輸送で負担もかかっているので、できるだけ自然な形で移動をさせたいわけです。


① 『リング』到着
予定では15時過ぎに円山到着とのことでしたが、飛行機の遅れのため、16時近くになって到着
ユニックで動物園の軽トラックに積み替えます。
写真は撮ってません。
というか撮り忘れました(笑)

② 檻の移し替え
今日の一番手間取りそうな作業です。
まず、檻を軽トラックごと動物病院の大型入院室に搬入します。



ちなみに軽トラごと入れたのは、移動に便利ということと、移し替える円山動物園製の檻の高さに合わせるためです。

次に、円山動物園の檻と接合です。
このときに檻がずれないように固定することが何よりも大切です。
太い針金や、固定ベルトなどを使ってがっちりと固定します。
手前の白い檻が多摩動物公園製の檻、奥の板を貼っている檻が円山動物園製の檻です。
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ちなみにこの作業中、『リング』はひたすらグルグルうなり、時折吠えて我々をビビらせます。

がっちりと固定されたことを確認したら、檻の扉を引き上げます。
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これで多摩の檻と円山の檻を自由に行き来できるようになったわけですが、これですんなりと移動するようなものではありません。
『リング』にとっても長旅でストレスを受けた後、たくさんの人がガヤガヤ作業する中に置かれたわけで、そんな状況の中、新しい場所(円山製の檻)に移動するわけがありません。

移動する先が広く周囲を見渡せるような場所であればまだよいのですが、暗くて狭い場所だと、なおのことそんなところには行きません。
こちらもそれがわかっているので、声をかけたり、音を出してみたり、えさで誘ってみたりと色々工夫するわけです。

ただ、今回の移動はあるものを使うことでとてもすんなりいきました。
それがこちら、エアーコンプレッサーです。
20101216-09.jpg

某係長の発案で使ってみたのですが、一発で移動しました。
下手すると移し替えるだけで何時間もかかるかもなどと心配しておりましたが、あっさり行き過ぎて逆に不安になったくらいです。

続いて『リング』の入った円山製の檻を熱帯動物館に移動します。
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まず、人力で屋外に出して、
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ユニックで釣り上げてトラックへ。
思えば今日一日で何度釣り上げられるのか。
少し気の毒です。


③ 熱帯動物館の放飼場へ

まずはトラックで熱帯動物館へ
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また、ユニックで釣り上げて降ろします。
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そして人力で移動し、放飼場横の搬入扉に接合
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ここでも『リング』はグルグルうなり、吠え、周りをビビらせます。
檻越しなのにホントに怖いんです。
思わず腰が引けます。



興味があるのか寄ってくるリッキー氏
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一方、何やら不穏な空気を感じているアイ様
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ちなみに、いきなり同居させるわけにはいかないので、『アイ』を放飼場の手前側に入れた状態で、『リング』は放飼場の中仕切りの奥に入れます。

ここでも先ほど同様、檻がずれないようにがっちりと固定して、扉を引き上げます。
いつもならここでも時間を食うところですが、今日はコンプレッサーという強い味方。
一発で移動です。
コンプレッサー万歳。

扉の施錠を確認して作業完了です。
無事に終わってよかった( ̄o ̄;)


移動完了後の『リング』はというと、比較的落ち着いていましたね。
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一方で『アイ』はもう完全にご立腹のご様子
20101216-26.jpg
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20101216-23.jpg
しばらくは落ち着きそうにありません。



しばらくの間は新しい環境に馴らすため、『リング』は屋内放飼場の奥のほうで、『アイ』は手前側で飼うことになります。
「アイ」との同居ももうしばらく先になると思います。まずはしばらくお見合いですね。

同居がうまくいくこと、そして繁殖が成功すること、皆さんもお祈りいただければと思います。


それでは以上でトラ移動レポートはおしまいです。
長くなってしまってすみません。

明日は誰を当番にしようかな。

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