2011年06月 の投稿一覧
別れの朝
Posted by vetblog on 2011年6月21日(火) 20:15
動物の搬出があると、獣医師も必ず借り出されます。
今朝は、2頭のダイアナモンキーと、
アカアシガメと
キアシガメが
それぞれの新天地へと旅立って行きました。
この2頭のカメ、実は30年近くも旧は虫類館を支えてくれた大功労動物です。
私の在園歴の10倍以上。重ねた年齢も、私よりも上。
そんな彼らがいなくなると、旧は虫類館の終焉をひしひしと感じます。
既に動物たちの新施設への移動はすべて終了し、
館内から動物たちの息遣いが消えました。
もともと静謐な暮らしの動物たちが佇む空間でしたが、
館内は、往時とは別の静寂に包まれています。
かつては数多の爬虫類で賑わっていたバックヤードも、
つはものたちが、夢のあと。
隣接する昆虫館も、最後の時が迫っています。
そんな折、飛翔室では、
私達との別れを彩るかのように、
ランタナの花が、盛大に咲き誇っていました。
とても美しく、少し哀しい、花々の色。
命なき建造物の、声なき惜別の挨拶なのかもしれません。
両建物様、お疲れさまでした。
昆虫館の傍らより湧き出た、謎の地球外生物。
日の光の下で、改めて見てみると…
鮮やかな緑が美しい…?
ともすれば、生命の躍動を感じさせる…?
このままでは、この者の素性がわからぬままの別れとなりますれば、
残念至極にございます。
おはやうございます。
Posted by vetblog on 2011年6月15日(水) 20:50
私共動物園の獣医の朝は早い…
もとい、早くありたい。
布団という甘美なる装置の魅力には抗しがたく、
理想の起床時間からは大幅に遅れ、日々目を覚ますのでございます。
しかしながら、モコモコの悪魔に打ち勝ち、
朝早く出勤することに成功した暁には、
動物たちの健康チェックと嘯き、
誰もいない開園前の動物園へと散策に出るのでございます。
古来より、早起きは三文の得と申しますように、
朝の動物園では、オモチロキ光景に出くわすことがございます。
過ぎ去りし、冬の1コマ。
エゾシカのメグム氏が通りがかりのカラス氏と対峙しておりました。
しばらく様子を窺っていたところ、カラス氏優勢のように見受けられますれば、
メグム氏の今後の研鑽を、願ってやまないのでございます。
ある日、カンガルー館にて
シンクロニシティーン!!
また別の日、カンガルー館にて
シンクロニシティーン2!!!
ただそこにいるだけで、縦横無尽に愛らしさを振りまく熊猫たち。
このような見事なるコンビプレイまで繰り出されては、抗う術はございませぬ。
末恐ろしいばかりにございます。
在りし日の、旧爬虫類館では
親チャクワラの上に子チャクワラ、そのまた上に孫チャクワラ。
某カリスマ飼育員のカリスマブログに同様な写真がアップデイトされておりますが、
カメラにおさめたのはこちらが先。
のはず。
3頭そろったカメラ目線を、ぴしゃりと押さえてございますれば、
カメラの腕前ならば、こちらが上。
ということはない。
しかしながら、朝の動物園も心躍ることばかりではありませぬ。
時には、不穏なる光景を目にしてしまうこともございます。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ある朝、昆虫館某所に出現せしは、
毒の瘴気を排出するという、腐海の生物か。
あるいは、壊されゆく建物の、現世への未練を載せた断末魔か。
いずれにせよ、この世に存在してはならぬものと見受けます。
この異形を目にした私の身に、良からぬことが起きはしないかと、
不安な日々を過ごす、今日この頃にございます。
虫とり
Posted by vetblog on 2011年6月1日(水) 19:38
本格的に暖かくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
メガネ3号にございます。
暖かくなりますと、様々な方々が元気でいらっしゃいます。
そのうちの一つ
むし。
獣医師はしばしば虫とりに勤しむことがありますが、
今日はそんな虫のお話をさせていただきたく存じます。
なお、冒頭のような美しい虫は、今後一切登場いたしません。
お食事中の方、足が六本以上もしくは無足の生物は愛せない方、
就寝中に顔面にゴキブリが落ちてきたトラウマを抱えた方等々は
次のリンク先には行かれないほうが、幸せでありましょう。
獣医師が対峙する虫といいいますと、そう、寄生虫。
素知らぬ顔して、無垢な動物達にパラサイト。
時には宿主の方々の健康を脅かす、困った虫々にございます。
さて、そんなパラサイターのトップを飾るのは
たっぷりと血液を食し満足げな、マダニ。
この者は、野生のタヌキの皮膚にパラサイトしておりました。
野山に突入したペットや人間にパラサイトすることもありますれば、
皆様もお気を付けくださいませ。
見つけてもすぐに引き抜いてはいけません。
ダニの口先が皮膚の中に残ってしまうことがございますゆえ、
病院を受診されることをお勧めいたします。
恐れ多くも、当園のスター、ホッキョクグマのララ氏にパラサイト、
クマ回虫。
普段は瓶の中にて病院体験(http://www.city.sapporo.jp/zoo/others/hospital.html)
などにいらっしゃる方々をお出迎えしております。
ララ氏のお腹の中に潜伏しておりました。
可愛い振りしてララ氏、割とやるもんだね、と。
こちらはユキヒョウ。
卵の状態で潜伏しているところ、顕微鏡にて発見。
巧妙に隠れる寄生虫達の潜伏先を突き止め、ご退去願うため、
私共は日々苦悶しているのでございます。
円山動物園に隠れているムシの中には、こんな方も。
範○勇次郎氏と並び地上最強の生物との呼び声高い、
みんなの人気者、クマムシ氏にございます。
この方の魅力は筆舌に尽くしがたいため、
細かな説明は割愛させていただきます。
ググルなり、ウィキるなり、クマムシ氏の秘密を知れば、
皆様、その虜となること請け合いでございます。
深夜のコックローチアタックにより、心に傷を負った私なれど、
虫との日々は今後も続いていくのでございます。