遅ればせながら、白いケモノの話
Posted by vetblog on 2014年5月9日(金) 18:38
こんばんは。‘GWを忘れた’メガネ3号です。
北海道の遅い桜の季節も遅いなりに終焉を迎え、ようよう暖かくなってきました。
桜とホッキョクグマが同時に楽しめる稀有なシーンも今年は見納め。
よくよく考えますと、北の土地の桜には、出会いも別れも想起されませんが、
去る3月に、新しい土地への旅立ちを迎えたクマたちがいました。
双子のホッキョクグマ、マルルとポロロが
熊本市動植物園と、とくしま動物園へそれぞれ旅立って行きました。
動物園の動物の引っ越しには獣医師がつきものです、
と申しますと意外に思われるかどうか、もはや判断がつきかねる私ですが、
皆様いかがでしょうか。
特にこちらの白い獣たちのような大型動物の輸送に、
獣医は必須と言っても過言ではありません。
それは何故かと申しますと、引っ越し用の狭い檻に自発的に入ってくれる動物は稀でして、
麻酔をかけて眠ったところを運び上げて檻に載せる必要があるのです。
可愛い可愛いともてはやされた2頭ですが、近距離で見るとなかなかの迫力です。
ハスキー犬くらいのつもりで事に当たれば、間違いなく返り討たれます。
作業は1頭ずつ行われました。
まずはマルルから。
麻酔が十分に効いたのを確認してから運びます。
麻酔量を決め、吹き矢にて適切に投与し、
かつ麻酔深度を見極めるのが獣医の大切な役割です。
一つ間違えば、重大な事故が起きかねませんので、獣医の責任は重大です。
メガネ1号氏の鋭い眼光。緊張感が窺い知れます。
目的は引っ越しですが、麻酔をかける貴重な機会。
身体測定や健康診断を併せて行います。
この時2頭とも体重130kgオーバーでした。
ホッキョクグマの新生子の体重は600gほどだと言われていますので、
およそ200倍に成長しました。たった1年で凄まじい成長ぶりです。
普段見られない個所も、丹念にチェックします。
口の中や
足の裏。
輸送檻に入った後は、クレーンで移動。
クマが、浮きます。
1頭終わったらまた1頭。お次はポロロ。
麻酔が十分に…以下繰り返し。
作業写真も…既視感に苛まれかねませんが、よく似た双子なので仕方がありません。
わらわらと取り巻くヘルメット軍団も同じような絵面です。
一晩動物病院で過ごした後、
翌日担当飼育員が見守る中、旅立っていきました。
ようやくここで、獣医も一息。あとは行き先の動物園の職員さんにタスキを託します。
引っ越し先の熊本と徳島でも、職員の方々やお客様に大切にされているようです。
機会があれば会いに行きたいと思いますが、四国・九州ともなりますと、
個人的財政破綻になりかねません。いつの日になるのやら。
底抜けに陽気な北の桜の季節も終わり、そろそろ夏の支度を始めねばなりません。
今年の夏も、熱く、忙しい季節となりそうです。
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5月27日に徳島のポロロに会って来ました。
朝10時、とても元気にたくさんのポリタンクで遊んでいました。
竹筒の紐を引っ張り、おやつを食べる高度な技術を身につけていました。
食いしん坊は変わりないようです。
ポロロがプールに飛び込むたびに、遠足で来ていた子供たちが拍手し、歓声があがります。
でも、ポロロが一番興味を示したのは、清水飼育員さん似の夫です。(笑)
夫が動くたびにポロロも移動、ガラス面に手を近づけると、真剣に捕まえて舐めようとしていました。
思いがけないポロロの行動に、周りの方も楽しみましたが、一番喜んでいたのは夫です。
運良く、とくしまの飼育員さんにもお会いする事ができ、とても大切にされている事がわかりました。
動物園スタッフの方々も、札幌からの来園者が多くなった事を喜んでいました。
今のポロロの姿をララに見せたいな~と思いながら帰って来ました。
もしすんなり檻に入った場合は麻酔なしで身体測定もなしなのかな?っと、ちょっと気になりました。