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2014年10月27日 の投稿一覧

『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド(草思社文庫)

『銃・病原菌・鉄』(上・下)ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰=訳(草思社文庫)

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原著は1997年刊、邦訳は2000年に単行本として刊行された後、2012年に文庫化されました。原題は “GUNS,GERMS,AND STEEL〜The Fates of Human Societies”、日本語版には「一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎」という副題が付されています。

ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌の犠牲になったアメリカ先住民や非ユーラシア人の数は、彼らの銃や鋼鉄製の武器の犠牲になった数よりもはるかに多かった。
(プロローグ)

 

なぜ地球上の各地に現在のような人口分布、そして富や権力の偏在が起きたのか?を解き明かすうえで、じつは、病原菌の存在と進化は、欠かすことのできない要素であった−といった話は、この本の第11章(文庫版では上巻の最終章)で、詳しく説明されています。

 

人間の死因でいちばん多いのは病死である。そのため、病気が人類史の流れを決めた局面も多々ある。たとえば、第二次世界大戦までは、負傷して死亡する兵士よりも、戦場でかかった病気で死亡する兵士のほうが多かった。戦史は、偉大な将軍を褒めたたえているが、過去の戦争で勝利したのは、かならずしももっとも優れた将軍や武器を持った側ではなかった。過去の戦争において勝利できたのは、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側にその病気をうつすことができた側である。
(第11章 家畜がくれた死の贈り物)

 

それにしても、「人間である」という点では同じなのに免疫のある側とない側とが存在していたのは、なぜなのか?あるいは、現代のように飛行機で人やモノが行き来しているわけではなかった時代に、病原菌はいかにして生き延びて、遠く離れた土地にまで勢力を広げていったのか?…そうした数々の疑問に対し、著者は、学問の枠を超えた知見を総動員して、謎解きを進めていきます。

文庫本とはいえ、上下巻それぞれ約400ページ、いくつかの図表は挿入されているものの、基本的には文字がびっしり、しかも最初から順番に読んでいかないと理解しづらい、という具合に、なかなか手強い本ではありますが、わかりやすい日本語訳で綴られているため、ぱっと見の印象よりは、はるかに読みやすいです。

電子書籍(Kindle)版も出てます。

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