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2014年10月27日 の投稿一覧

浜本学泰ができるまで⑦:「仕組債を売るか、仕組みを創るか」

紆余曲折があって、米系証券会社に出戻りました。

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初めてその部署に出社してみると、本来ありえない部署間の異動なので、周囲の目線は冷たく、
現場のマネジメントも、なぜこいつが来たのか分からないという表情でした。

私に声をかけたのは、東京支社のプライベートバンキング部門担当の取締役なので、
現場には話が伝わっていないのです。

部長にも課長にも、「あなたは何をしに来たのですか?」といわれる始末。

ほかの人たちは、東半分の日本各地に顧客を抱え、株式や投資信託も販売するのですが、
それよりもトータル的な資産運用の助言を通じて、実は販売会社の収益性の高い「仕組み債」
を販売することを課されていました。

私はしょっぱなから「私は、前の部署でやってたことをこちらでやれと言われたので来ました。
それによってこの部署にコミッションを稼いで貢献するつもりです」と申し上げました。

現場のマネジメントはわかっていない様子でした。

私も、短ければ数か月、長くても半年くらいしかいないからと、今思えば、なめてた部分も
あったものと反省しております。

これが、この後自分を苦しめることになります。

数か月が過ぎ、前の部署の人たちとその時もコンタクトを取り、ファンドマネージャーの依頼によって
上場会社の社長とアポイントを取り、機関投資家のところにお連れする中で、上場会社の社長と
いろいろとお話をしたり、自社株の扱いについてアドバイスすることをしておりました。

そして、ご案内したファンドマネージャーから、その会社の株を大量に買いたいのだが、
オーナーと交渉をしてほしいと依頼がありました。

中小型成長株の場合は、流通している株式が少ないので、市場で買おうとしても大量には買えません。
大量に買おうとするとすぐに値段が上がってしまうので、まとまって持っている株主さんに直接交渉をして、
市場価格を参考にしながらまとめて売買する「ブロックトレード」というのを行うのが一般出来なのです。

異動して初めてブロックトレードの依頼が来たので、やっと手数料を稼げると思い、一生懸命
オーナーと交渉して有利な条件を引き出し、相手の投資家様との売買も成立して、喜んでいると、
ふと気づいたことがありました。

「あれ?この部署にどうやって手数料が入ってくるのかな?」

相手の部署に問い合わせても、今まで前例がないので、そちらに手数料を渡すことはできない
とのことで、今までも何件かそういう案件があったのだけど、全部手数料は投資家に販売した
部署がもらってた。そっちは、オーナーが株式を売ることでキャッシュが手元に入るのだから、
その資金を運用してもらったら手数料が入るだろ?

という言われようでした。

今までは、それで仕組債を買っていただいたりしていたらしいのですが、私は、「仕組債は売りません。
ブロックトレードで収益を上げます」と宣言してしまっていました。

これでは、私はこの部署にはいられなくなります。

ということで、関係部署や本社の財務部などに掛け合い、今まではほとんどなかったけど、今後は
プライベートバンキングの部署からブロックトレードの元になる株式を仕入れることが増えるから、
コミッションを分けられる仕組みを整えてほしいと粘り強く交渉をしていました。

なかなか交渉はうまくまとまらず、あっという間に半年の時間が過ぎました。

その間、私のコミッションはゼロです。

そろそろ私のクビが怪しくなってるのを気配で感じるようになってきました。

ブロックトレードの案件は、すぐにやろうと思ってできるものではなく、オーナーがまず株式
を出してくれる環境にあることと、投資家がその銘柄を大量に買いたいと思うかどうかがすべて
整わないといけないので、下準備やお膳立てがとても大切になります。

ようやく、各部署間の調整がつき、ブロックトレードをしたらプライベートバンカーにも手数料が
もらえるようになりました。

一緒なチームにほかに2人の先輩がいましたが、彼らは今まで1円ももらえずにブロックトレードを
行っていたのですが、その相手の部署から私が来たことで、初めて手数料がもらえる仕組みが整った
ことになります。

それから、3人で一生懸命案件を作る努力をしました。

そのお2人は、そういう不遇な目にあいながらも生き延びてきた人たちなので、恐るべき営業力を
発揮されました。

そうやって、ブロックトレードも決まり始めてきました。

何とか首の皮一枚でつながったというやつです。

そうこうしている間に、その部署での生活も11か月が過ぎるころ、ようやく弟子入りしたかった
投資顧問会社の社長から連絡がありました。

それまでも数か月に1度は食事を一緒にさせていただき、現状をお聞きする機会をいただいており
ましたが、なかなか「もう来てもいいよ」と言ってくれないので、半ば泣きつく形で迫ったという
こともあります。

それにしても、「しばらくしたらやめるかも」と思って異動して11か月。

とっても長くて辛い時間でした。

しかし、同時にいろんな部署の人たちを説得して新しい仕組みを創ることを学ばせて
いただきました。

私自身はその仕組みにより儲かることはありませんでしたが、私とともに必死になって
案件を作り続けていた先輩2人は、その年のボーナスで〇億円をもらったとお聞きしました。

私が残っていたらという気持ちもありましたが、私は夢に向かって進むことが出来たので、
それまでの二人の苦労が報われたのだと喜ばしい気持ちでした。

私自身は、2003年11月、あこがれの独立系投資顧問に入社でき、ファンドマネージャー
というタイトルをいただくことになりました。

さあ。こころから、夢にまで見たファンドマネージャーの生活が始まります。

胸をときめかせ、ものすごいモチベーションで毎日を過ごしておりました。

しかし、運用の現場は私が思っていた理想郷ではなかったのです。

次回以降は、運用現場の実際のところについて書いてまいりたいと思います。
次号に続く

金融全般⑮:「銀行と銀行預金」

こんにちは。

金融全般の第15回目は、皆さんが日々お付き合いされていらっしゃる
「銀行と銀行預金」について書いてまいりたいと思います。

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皆さんが日々のお金の出し入れや、給料の振込先、お金のやり取りをする際など
に銀行預金口座が使われます。

銀行や、信用金庫、信用組合などにお金を預けると「預金」と呼び、
ゆうちょや、JA、JFマリンバンクにお金を預けると「貯金」と呼ばれますが、
内容は同じです。

ここでは代表して「預金」という言葉を使いますが、「貯金」も同じですので
そのようにご理解下さい。

現在、日本国内において「預金」は元本保証されている金融商品です。

では、どこが元本保証をしているのでしょうか?

そうです。皆さんが預けていらっしゃる銀行そのものです。

1997年以降、多くの銀行が破たんをしましたが、こうなりますと、元本保証
という言葉は、担保されないこととなります。

※ご参考「金融大学「破たんした銀行」」

http://www.findai.com/yogo/0056.htm

現在は、預金保険機構という機構が設定されており、日本国内の銀行に預けた
お金は、各銀行につき1人当たり1,000万円までは、もしその銀行が破たんした
としても、預金保険機構が保証してくれるという制度が導入されました。

ということで、各銀行に預けている1000万円までは「元本保証される」という
ことになります。

1000万円以上預けていたら万が一の時は担保されないことになりますので、いく
ら銀行預金が「元本保証」だといっても安心できない世の中であることは認識
しておく必要があります。

そして、預金には、「普通預金」と「定期預金」があります。

決済用の「当座預金」もありますが、「運用」の観点からこの文章を書いて
おりますので、ここでは金利の付かない当座預金は除外いたします。

「普通預金」は、いつでも出し入れ自由であり、「定期預金」はある特定の
期間は出し入れしないことを約束する代わりに普通預金に比べて高い金利を
受け取ることが出来る貯蓄性の預金ということになります。

「定期預金」とひとくくりに行っても、いろんな期間の長さがあり、期間と
預ける金額によって、受け取れる金利も変化するようになっています。

一般的には、「大きな金額を長い間預ける」と高い金利を得られるように
なっています。また、銀行によって同じ期間や金額でも金利は異なっております。

※ご参考「定期預金の金利比較」

http://www.woman110.com/200807/

普通預金でたまったお金で、しばらく使う予定のないお金を定期預金に切り替え、
金利収入を高くするということが従来からなされてきました。

しかし、「定期預金」は、約束した期間より前にお金が必要になってしまうと
「途中解約」という手続きを取らねばならず、その手続きを行えばいつでもお金
を引き出すことが出来ます。

その代り、当初約束した高い金利はもらえず、代わりに「ペナルティ金利」という
当初の約束の5%程度の低い金利に切り替わってしまいます。ただし、ペナルティと
いっても元本を割れることはありません。

今、日銀が物価上昇率2%をターゲットにしている中、預金金利は0%に近い水準
でとどまっており、いくら金利が高い定期預金と言っても、物価の上昇に追いつけ
ない状態が続いております。

銀行にお金を置いておいたら安全で増える

こういう過去からの思い込みが日本の人たちにいかに多いことか?

例えば、100万円を1年定期に預けても、一番金利の高いあおぞら銀行でも0.3%。

しかも、その0.3%の利息に対して20%の源泉分離課税がなされますので、

3000円×0.8=2,400円

これが、1年間に増える金額です。

この間に、物価は2%上昇したとすると、1年前の100万円は、

100万円÷1.02=98万392円

の価値しかなくなり、これに2400円を足しても、98万2792円と、実質は目減り
している
ことになるのです。

上記の事例は最も金利が高い銀行の事例ですが、メガバンクなどは定期預金の
金利は、0.025%
となっております。

それで計算すると、

100万円×0.025%=250円

この20%が引かれるので、受け取れる金利は200円です。

100万円を1年預けて200円しか増えません。

この恐ろしい現実をみなさんはどう受け止めますか?

さらにこのお金をどこかで使おうと、資金を動かすと数百円の手数料がかかりますし、
もし既定の時間外や、他のATMで引き出そうとしても数百円の手数料がかかり、さらに
大切なお金を減らします。

メガバンクなど低い金利の銀行に預けていた場合には、振り込みを1回したら利息が
吹き飛んでしまうのです。

銀行にお金を置いておくということは、わずかしか増えない環境であるのにも関わらず
1000万円を超えた部分は完全に元本保証されるわけでもなく、資金移動の手数料は高い
ままという状況を選択していることになります。

更に、驚愕の事実があります。

日本がゼロ金利政策を選択してから、預金金利は0%付近を推移していますが、銀行の
貸出金利も低い状態が続いております。

これはつまり銀行の収益の柱である「利ザヤ」という預金者からの調達金利と、融資先
へ貸し出す貸付金利の差が縮小してしまい、収益状況が悪化している状態が続いている
ことを示しています。

銀行という商売は、金利が高い状況の方が収益性が高いのです。

しかし、金融庁と言いますか、この国は(世界的にもそうですが)、銀行を通じて
国民の資産を管理する仕組みを導入しているので、銀行に対する保護政策が次から
次へと打たれます。

その最たるものが、「金融自由化」という名のもとに、「銀行」「証券」「保険」の垣根
を取り払おうとする政策です。

銀行で、証券会社や保険会社の商品を販売できるようにする「窓販」というものがスタート
して長い月日が流れます。

これはどういうことを意味しているのか?

・銀行にすべての金融サービスを集中させて収益構造を強化し、
銀行の収益基盤を安定化させる

これにつきます。

これによりどういう状況が生み出されているかと言えば、

・十分に商品知識を持っておらず、お客様に対してリスク説明も十分に
出来ない状況でリスク商品が販売されている。

・証券会社、保険会社の収益基盤が損なわれ、投資家、保険加入者に不都合
が生じるケースが多発している。

・銀行の方が勧めるのならばと、商品を十分に理解しないまま、リスク商品
を購入して、後から損失を抱えたことを知る投資家が急増。

ということになっています。

更にひどいことには、一番お金を貸すのに儲かる高金利の商売である消費者金融
業界に政治的な圧力をかけ、「クレサラ弁護団」という東京都知事選にも出た
宇都宮弁護士などを使って、多重債務者の被害という名目でロビー活動をして、
法律に則って商売をしていた消費者金融業界に「グレーゾーン金利」分は過去に
さかのぼって支払うように仕向けることで、消費者金融会社は体力を奪われ、
最大手の武富士は破たんに追い込まれ、その他プロミス、アコムは銀行の子会社
にされ、高金利帯のビジネスも銀行の収益源とされてしまっているのです。

このように日本の金融行政は、すべて銀行に有利なようになされていくというの
は昨今の情勢を追いかけていくだけで簡単に理解できます。

消費者金融の問題に関しても、証券、保険の問題に関しても、銀行にしてみれば
金融行政の決定を受けて対応に追われているのが現状で、銀行員の皆様は本当に
大変な業務に追われていると思います。

実際、銀行に就職して、証券や保険や消費者金融のことまですることになるとは
夢にも思わなかったはずです。

行員の方々のキャパシティにも限界があると思います。

銀行員の方々のご苦労には本当に頭が下がります。

しかし、これも日本の金融行政がそういう状況を作り出しているのです。

更にひどいことには、後日詳しく書かせていただきますが、2014年1月より
NISA(ニーサ、小額投資非課税制度)が導入され、年間100万円までの投資に対する
利益が非課税となりました。

銀行、証券会社などを含めて、NISA口座は1つしか作ることが出来ないので、
各金融機関はこぞってNISA口座の獲得競争を繰り広げております。

しかし、私の考えでは、NISA口座を有効に使うためには決して銀行でNISA口座を
開設してはいけないのです。

証券投資や保険に加入するという金融サービスを利用する際には、必ず最初にお金
を移動する必要があります。

通常銀行にあるお金を証券口座や保険料支払いに移動させることが、証券会社や
保険会社の営業マンからすると難しい行為なのです。

銀行にすべてのサービスを集中させることによって、銀行はすでにお金を預かって
おり、その人の資産状況もほぼわかっていることから、とても有利に金融サービスに
人々を誘導することが可能なのです。

証券投資、保険加入、NISA講座の導入など、すべてがたいへん入りやすい状況が
銀行の店頭にはそろっているのです。

しかし、購入側の投資家・消費者・保険加入者にほとんど知識がなく、勧める銀行員
の知識もあいまいなことから、とても危うい金融サービスが日本全体で行われている
という状況に誰も警鐘を鳴らしていないことを、個人的にたいへん不思議に感じて
います。

銀行が悪いわけではありません。

日本の金融行政はそういう状況であり、日本の金融業界は前述の状態であるということ
を私たち預金者・投資家、保険加入者が知っていないといけないということなのです。

皆さんにおなじみの銀行預金や、銀行そのものについて、考えてみました。

ご参考になれば幸いです。

浜本学泰

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