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訃報
Posted by zoozakki on 2014年4月1日(火) 17:47
大変残念なお知らせです。
動物たちのニュースでご報告させていただいたとおり、去る3月31日にエゾヒグマの『栄子』の安楽死の処置を行いました。
栄子は1973年1月に登別クマ牧場で生まれ、同年12月にまだ幼い仔グマとして当園に来園いたしました。
以降、すくすくと成長し、1981年(昭和56年)には初めての子供を出産し、以来、1996年(平成8年)までに15回の出産で32頭の子供を産んだ偉大な母となりました。また、一般的に30年と言われるクマの寿命を超えても旺盛な食欲を見せる元気なおばあちゃんでもありました。
しかしながら2011年1月、栄子が38歳になった頃、後肢の動きが急に鈍くなり、その後自力で立つことができなくなりました。獣医師による検査の結果、脊椎疾患による後躯麻痺(不随)と診断され、また根治治療が不可能であることも判明いたしました。
ただ、当時、栄子自身は後足を動かすことはできなくても、完全な寝たきりということではなく、動く前脚を使って自力で多少は姿勢を変えることができましたし、全身状態も健康的、そして何より目に強い光が感じられたことから、出来る限り長生きさせてあげようということで、ケアをしていくこととしました。
麻痺(不随)が起きている動物のケアにおいて問題となるのは褥瘡(床ずれ)の防止です。
特に体が大きければ大きいほどそのリスクが高まります。栄子の体重は140kg以上あり、頻繁に体重のかかる場所を変えてあげなければあっという間に褥瘡ができてしまいます。
そのため、起立できなくなって以降、極力一箇所に体重がかからないように寝藁など柔らかい床材を敷き、毎日何回も職員が栄子の体の向きを変えてあげて、褥瘡ができないように、もしできてもそれが進行しないように管理をしておりました。
起立不能になった当初は元々暮らしていた世界のクマ館の寝室でそのような管理を行っておりましたが、世界のクマ館は建物自体が古いせいもあり、温度などの環境管理が難しい施設であったため、2012年7月には栄子を動物病院に移し、動物病院の特設入院室でケアをすることになりました。
その後も何度か体調を崩したり、軽い褥瘡ができてしまったことがありましたが、職員のケアと何より栄子自身の体力で何とか乗り越えておりました。
しかしながら今年に入ってから、それまで動かすことができていた前脚の動きが鈍くなり、栄子自身が自分の力で体勢を変えることが一切できなくなり、いわゆる寝たきりの状態、エサも自力で食いつくことができず、職員が一つ一つ口元に差し出してやらなければ食べられない状態になってしまいました。
また、全身的にも慢性的な腎不全を患い、体のだるさなどの症状が出ていることも推察されました。
褥瘡の状態も急速に悪化し、その痛みも日に日に強くなっている様子が見られました。
そのため、これ以上の延命は栄子の苦痛を強め、長引かせるだけと判断し、安楽死の処置を行うことといたしました。
栄子は体調を崩す前も多くの方に愛された人気者であり、体調を崩した以降も、展示をしていないにもかかわらず、多くの方が気にかけてくださり、果物などの差し入れをいただいておりました。
ここ数年の栄子はもしかしたら動物園の動物の中で一番良いものを食べていた動物かもしれません。
エゾヒグマの寿命は30年ほどといわれますが、栄子は41歳、人間の年齢にはたとえづらいのですが、おそらく120歳に近いものと思われます。
3月30日には大好きなスイカやトウモロコシを食べてもらい、最後のお別れをいたしました。
死後の測定の結果、栄子の体長(頭胴長)159㎝、体重128kgでした。
病理解剖の結果、生前の獣医師の診断通り、脊椎の重度の疾患が認められました。
最後になりましたが、これまで栄子を応援してくださった多くの皆様に厚くお礼申し上げます。
栄子おばあちゃん、本当によく頑張ってくれました。ほんとうにお疲れ様でした。
そして安らかにお眠りください。今までありがとう。
第一レストハウスに献花台を設けました。
亡き栄子を偲んでいただければ幸いです。
円山動物園飼育展示課 飼育展示二係長 石橋 佑規
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