初めてのホッキョクグマ館 ララとリラの巻
Posted by zoozakki on 2018年1月27日(土) 14:39
当ブログをご覧の皆様
いつもご覧いただきありがとうございます。
デナリの初めてのホッキョクグマ館を投稿してから、続報をブログ内で出すことができておりませんで申し訳ありませんでした。
ご存知の方も多いかと思いますが、12月末から始めたデナリの訓練期間もあっという間に終わってしまいまして、1月24日よりララとリラの親子のホッキョクグマ館への馴化訓練を開始いたしましたのでご報告いたします。
こちらもご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、現在ホッキョクグマたちが暮らす世界の熊館とホッキョクグマ館は動物用の連絡通路でつながっており、移動のたびに体に負担がかかる麻酔をかけることなく、彼らの意思で移動してもらうことができるようになっています。
連絡通路は世界の熊館のホッキョクグマ館側のモート(堀)式の放飼場の寝室がその入り口となっており、当初の予定では、1月24日休園日にララ親子を現在使用している檻型の放飼場から、かつて彼らが使っていたホッキョクグマ館の放飼場を通って、世界の熊館寝室、連絡通路を経て、ホッキョクグマ館の寝室まで移動してもらい、寝室で一晩過ごした後、25日の朝から放飼場での訓練を行う予定でおりました。
そしていよいよ24日当日。午後から移動のため、ホッキョクグマ館までのルートをすべて開放し移動開始。
ただ、相手は動物。
やはりすんなり希望通りには進みませんで、まず元々彼らがいたモート式放飼場でひと遊び。
前日に積もったフカフカの雪がたまらないらしく、二頭でゴロゴロ。これまでの檻型の放飼場は雪が積もりづらかったので、フガフガ言いながら遊んでいました.
リラは遊びながらも時折寝室から連絡通路まで偵察に行きますが、ララに呼び戻され世界の熊館に戻ってきては走り回り転げまわって遊ぶという状態。
また、ララは遊びながらも寝室の奥が気になり、何度も入り口を覗き込みますが、なかなか寝室内に足を踏み出そうとしません。
1時間弱そのような状態が続き、ようやくララも連絡通路まで到達。
デナリの時はここからは比較的スムーズに(と言っても30分くらいはかかりましたが)寝室まで行ったのですが、やはり警戒心が強いララ。
連絡通路からホッキョクグマ間の建物内に入ろうとしません。
リラも数メートルは入るものの、寝室までは30mあります。
完全に膠着状態になってしまったので、我々も無理に移動させることはせず、また、建物内に職員がいることで警戒させてしまってはいけないので、翌朝には寝室まで移動してくれていることを祈りながら、その場を離れました。
そして屋外放飼場への馴化開始を予定していた翌25日の朝、残念ながら状況は変わらず。
ここで、当初は寝室に慣れてもらうためにも一旦寝室に入ってもらってから、屋外放飼場に出てもらうことを予定しておりましたが、なかなか連絡通路に入ってきてくれないのは、連絡通路が細長く、先が見えづらいため、ララたち自身が安全な場所であるかどうか判断するための情報が不足していると考え、作戦を変更し、初めから放飼場のほうに出てもらうことにしました。
放飼場に出るための扉は寝室まで行くよりは近く(連絡通路の入り口からだいたい20m)、扉を開けることで、ララたちから見て、連絡通路の奥に外があるようだと認識してもらえれば、連絡通路を通り抜けてくれるのではと期待したわけです。
そして、屋外に抜ける扉を開放しておよそ10分。
今日は駄目かな・・・と思い始めたところで、ようやくリラが扉から顔をのぞかせました。
撮影係もちょっと油断していて、残念ながらその瞬間をカメラに収めることはできませんでしたが、リラがララを呼び、すぐにララも顔を出しました。
その後放飼場を1周し、
プールを発見。
そこから先は二頭で大はしゃぎでプールで遊んでくれました。
ちなみに、記念すべき最初の入水は、水際で躊躇していたララを、後ろからリラが押してドボンというものでした。(この瞬間も撮れませんでした・・・)
上の写真は慌てて這い上がろうとするララと、慌てるララよりもプールのほうが気になって仕方がないリラです。
すぐにリラも入水し、ずーっと遊んでくれました。
ガラス越しの担当者の姿にも興味津々です。
プールから出た後は、デナリ同様新雪でゴロゴロ。
なんだかわからない姿になっています。
ララは放飼場内を探索し
デナリが遊んでいた柳の枝を発見。
リラが物欲しそうに見ますが、無視します。
そして我々が恐れていたことも・・・
今回の放飼場には多くの植栽(自然の木)を植えています。
動物園では植栽を動物に弄られるのを避けるため、電気柵などで囲ってしまうことが多いのですが、今回ホッキョクグマ館の設計では、触れない植栽なんて、ただの景観で、動物にとっての良い刺激にならないと考え、あえて柵などで覆うことはしませんでした。
デナリはその我々の空気を読んでくれた?のか、少し興味を持った程度で枝を折ったりすることはありませんでしたが、リラは放飼場に出てから1時間もしないうちに、木を押すと揺れて面白いということに気が付いてしまいました。
もちろんそれ自体は遊びの選択肢の一つ、エンリッチメントの一環として弄れるようにしているので、狙い通りといえば狙い通りなんですが、果たしてお客さんへの公開まで木がもってくれるのか?とても複雑な心境でした。
その後ガラス越しに飼育員と対面
ガラスがあるということはすぐに認識してくれたようで、心配していたような突進はありませんでした。
広い放飼場内には様々な刺激があります。
嬉しそうに枝を咥えてプールに放り投げ、それをめがけて飛び込むというリラらしい遊びも見せてくれました。
今まで見ることができなかったアングルで雰囲気で、今までにない刺激にワクワク(本当にワクワクしているのかは彼らにしかわかりませんが・・・)しながら過ごす彼らの姿を見ることができるのは、設計に携わった者としても本当にうれしかったです。
特にララがドスンドスンという音を立てて走り回る姿を見ることができたのは担当飼育員にとっても私にとっても驚きであり、この施設を作って良かったと思える瞬間でした。
残念ながら、木は3本折られてしまいましたが、その木を使って遊ぶ姿もまた手前味噌ですが、素晴らしいものでしたし、葉のついた枝を敷いて二頭で仲良く眠る姿も感動でした。
ほかにも、
雪にまみれて保護色のようになっている姿や、
浅瀬で入水しようかどうしようか迷っている姿
授乳する姿なども見られました(環境が変わって二頭の関係性がどうなるか、心配していましたが、幸い?リラは相変わらず甘えん坊です)
今は寝室に収容しても嫌がらないよう、寝室への出入りを自由にし、寝室内でくつろいだり餌を食べたりしてもらっています。
いろいろな姿を見ることができて、我々もテンションが上がってしまうのですが、馴化訓練が始まって、まだ3日目、まだまだ気を抜くことはできません。
今後も彼らが安全にまた、退屈することなく暮らしていけるよう、注意深く観察を続け、いろいろな調整をしながら、訓練を進めていきたいと思います。
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