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by 大熊 一精

大熊 一精
プロフィール

1967年生まれ、埼玉県川越市出身。
銀行系シンクタンクに12年間勤務の後、2002年から札幌市に移り住み、現在はフリーランスのコンサルタントとして活動中。 「一日一冊」を目標に、ジャンルを問わずに、本を読んでいます。読書量全体のうち、電子書籍端末で読む割合は3割ぐらい。 札幌市民になってからは、毎年、コンサドーレ札幌のシーズンチケットを購入し、2014年シーズンで13年目。週末ごとに悲しい思いをすることのほうが多いのに、自分が生きているうちに一度ぐらいはJ1で優勝してほしいと願いながら、懲りずに応援を続けてます。
著書「北大の研究者たち 7人の言葉」(エイチエス、2012年刊)


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『なぜローカル経済から日本は甦るのか』冨山和彦(PHP新書932)

『なぜローカル経済から日本は甦るのか』冨山和彦(PHP新書932)

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タイトルはキャッチーですが、この本の内容をうまく言い表しているのは、むしろ、副題の「GとLの経済成長戦略」のほうです。Gとはグローバル(国際経済)、Lとはローカル(地域経済)。

どういうことか?

「G」、すなわち、グローバルについては…

国際的に取引され得る生産物は、経済のボーダレス化の中にあっては、価格(コスト)面でも、性能面でも、世界を相手にしなければならない。だから、グローバルに取引され得る商品を扱っている企業(主として製造業)は、世界チャンピオンにならない限りは淘汰されてしまう。したがって、世界チャンピオンを目指して、厳しい生存競争を勝ち抜かなければならない。

一方の「L」、すなわち、ローカルは…

国際的に移動できない生産物(サービス)は、海外と戦うことは、そもそもあり得ない。たとえば地域のバス会社が提供する公共交通というサービスを利用する人は、そのサービスに不満があるからといって、他の地域のサービスを利用するわけにはいかない。だから、「L」に属する経済セクターは、世界チャンピオンを目指す必要はない。だからといって「L」は何もしなくてよいわけではない。「L」が目指すべきは、世界チャンピオンではなく、県大会の優勝者である。

そして、日本国民(就業者)の多くは「L」に属しているにも関わらず、一般に語られる日本経済のあり方は「G」を前提にしている、それは高度成長期までは妥当であったが現在では当てはまらない。

だからといって、「G」ではなく「L」を中心に考えるべきだ、というわけではなく、「G」も応援しなければならないし「L」も大事にしなければならない、「G」と「L」は並列で論じていくべき事項である…

こうしたことが、著者自身の経験に基づく知見と、各種のデータによって、丁寧に説明されています。

内容は非常に多岐にわたっており、経済や金融に縁がない方にはやや手強いと感じられるかもしれませんが、著者が経験した具体的なエピソードやそこから得た肌感覚と、理論や統計とのバランスが非常によくとれており、また、難しい話を簡単に伝えるための喩え話がとてもうまいので、読みやすい本にまとまっています。

私がこの本をできるだけ多くの方に読んでいただきたいと思うのは、私自身の経験=1990年代に行なってきた経済や金融の調査研究、メガバンク以前の大手都市銀行内での仕事、東京から札幌への転居、ベンチャーの起業への関与、地場の中小企業とのお付き合い=の中で感じてきた多くのことが、この本に書かれている内容と合致しているからです。

それは具体的に何か?という話を書き始めると、この数倍の分量になってしまいそうなので、それはまた、いずれ、どこかで機会があれば、ということで。

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