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スローカーブを、もう一球(山際淳司、角川文庫)
Posted by 大熊 一精 on 2014年11月30日(日) 06:39
スローカーブを、もう一球(山際淳司、角川文庫)
昭和60年2月10日初版発行。現在は電子書籍(Kindle)版も出ています。
もしかすると作品以上に言葉のほうが有名になった「江夏の21球」をはじめ、8本のノンフィクションが収録されている短篇集。何度も読んでいる本なのですが、山口高志の評伝を読んだら「江夏の21球」を思い出して(「江夏の21球」の舞台は山口高志の全盛期直後です)、ひさしぶりに読んでみました。
収録されている8本の短編のうち、野球をテーマにしたものは、半分の4本です。なかでも私が好きなのは、本のタイトルにもなっている「スローカーブを、もう一球」のラストシーン。進学校である高崎高校の、合理的すぎるほどに合理的な主戦投手の物語の、この、ラストの数行は、文字しか書いていないのに、目の前に映像が見えてきます。
好きなシーンの次点は、これまた高校野球を描いた「八月のカクテル光線」の、これまたラストシーン。山際淳司さんは、スポーツを描くにあたって当時としては画期的な手法を用いたことで、この本で日本ノンフィクション賞を受賞されたわけですが、あらためて読んでみると、映像を切り取るのが巧かったのだなと感じます。
有名な「江夏の21球」は、やっぱり、衣笠がマウンドに行く場面でしょう。
電子書籍版もあるので、未読の方は、この機会に、ぜひ!