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浜本学泰ができるまで④:「機関投資家向け営業時代」
Posted by finance on 2014年10月19日(日) 11:39
さて、ハラハラドキドキ、ファンドマネージャーが顧客の営業部隊に配属
されました。
私は、営業前線の精鋭として配属されたのではなく、「営業店経験があり
リサーチが分かるやつ」というレッテルで配属されたものと思われます。
先日の不祥事でお取り潰しになったその部署は、国内外の機関投資家を顧客
として、主に株式を販売する部隊でございました。
私はその中でも、「中小型成長株」を専門に扱うチームに配属となりました。
中小型成長株とは、東証1部の誰でも知っている企業ではなく、創業間もなく
して上場したような新興企業を専門に扱う部隊で、お客様も中小型成長株に
投資するファンドマネージャーということになります。
トヨタ、パナソニックといった主力銘柄は扱わず、楽天、ライブドアといった
新興企業の株式を専門に販売する部隊です。
何が違うかといえば、主力株にはすべて担当アナリストがついて、取材して
分析を行い、銘柄のレポートが発行されるので、その内容などをいち早くお伝え
して、注文をもらうということすればよいのですが、中小型株の場合はアナリスト
がカバーしていないものがほとんどなので、私達セールス部隊も、積極的に上場
企業に取材に行き、インタビューをしてその内容などを投資家にお伝えしたり、
上場企業の社長様を直接投資家のところにお連れしてミーティングを行っていた
だくというサービスを行う対価として、注文をいただくということでした。
私はリサーチの経験も生かし、いろんなデータ分析を投資家のためにして差し上
げたり、いろんな企業オーナーを投資家に紹介することで、たくさんの注文をい
ただくことができ、私自身もファンドマネージャーさんたちと毎日会話させてい
ただき投資のヒントをたくさん教えていただける毎日がとても楽しく、いつしか
その部署の中でもそれなりにご評価いただけるようになっていきました。
私は、将来の夢をファンドマネージャーかディーラーかということで考えており
ましたが、その頃は、短期よりも長期と思っていたのでファンドマネージャーに
なりたいと強く思うようになり、それに近づくために全力を尽くすことをしてお
りました。
そして、毎日多くのファンドマネージャー様といろんな議論をさせていただく中で、
「弟子入りさせていただくにはどなたが良いだろうか?」
「尊敬出来て、師匠と呼ばせていただきたい方はどなただろうか?」
という観点で、いつもファンドマネージャーの方たちと接しておりました。
2年ほどすると、お二人に絞られておりました。
投資哲学がしっかりしていて、銘柄選択のレベルが高い独立系投資顧問会社があり、
その社長でありチーフファンドマネージャーの人は、いわゆる「カリスマファンド
マネージャー」の中では群を抜く存在の人で、すべての証券会社のセールスやアナ
リストからは、恐れられている人でした。
私はその人の担当となり、最初はいろいろと難しいことを言われましたが、なぜか
私を気に入ってくださり、いろんな難しい難題を次から次へと与えられ、全力で答
えていくという日々が続きました。
ますます私を気に入ってくださり、「いつかこの人に弟子入りしたい」と思ってお
りました。
しかし、その投資顧問会社は、ファンドマネージャーが6名の独立系投資顧問会社で
預かり資産は約2500億円。少数精鋭の運用業界のオールスターチームのようなとこ
ろで、業界でも一目置かれる運用会社でした。
さらに社長の個性もとても強く、リサーチの姿勢も厳しく、到底素人が門をたたける
ようなレベルの会社ではありませんでした。
私には、「私を弟子にしてください」とお願いする度胸はありませんでした。
そしてもう一方、尊敬できるファンドマネージャーがいました。
国内最大手の信託銀行の中小型株のファンドマネージャーで、その人が推奨する
銘柄はすべて激しく値上がりするので有名でした。
「なぜこの人は上がる株が分かるのだろう」
と不思議に思っていたものでした。
その人も業界では「とても鋭い方で分析も深い方で、中小型株はその方に聞け」という
のが常識でした。
とても鋭い方なので、浅はかな知識や調査では、瞬く間に内容を見透かされ、話を聞い
てもらえなくなるかもしれないと、恐れているセールスもいました。
私はその方をとても尊敬しており、この人からも是非とも学びたいなと思っておりました。
と思っていると、この後者の方が、信託銀行を辞めて、米系大手証券会社にアナリスト
として転職するというニュースが流れました。
バイサイド(投資家)から、セルサイド(証券会社)への転身。
私の行きたい方向からは逆方向の転職でした。
お客様でいてくださるうちは、いろいろと教えてくださる機会もあったのに、ライバル企業
に転職してしまっては、その人との関係も希薄になってしまうなと落ち込んでいた矢先の事
でした。
「一緒にやるパートナーを探してるんだけど、君、私と一緒にやらないか?」
というお誘いをその方からいただいたのです。
こんなにうれしいことはありません。
弟子入りしたいと思っていた方からお誘いをいただけるなんて。。
将来はファンドマネージャーになりたかったので、証券会社に転職したら、それは実現できない
のですが、前述の独立系投資顧問会社の社長に弟子入りを申し出るレベルに成長するために、と
てもありがたい機会であり、本当に興味のあったその方の「上がる株の選び方」を学べるチャンス
と思い、ぜひその方に弟子入りしたいと思いました。
そして、国内最大手証券会社から、米系大手証券会社(かつては最大手米系証券会社)への転職
が決まり、私は中小型成長株部門の立ち上げを行うヘッドとして、ヘッドハンティングを受けた
形となりました。
転職するということは、お客様方にご挨拶の連絡を入れるわけですが、すべてのお客様に転職す
る旨をお伝えしておりました。
前述の独立系投資顧問会社の社長とお話しした時でした。
「なんであんなアメリカの会社にいっちゃうの?野村證券をやめるなんて思わなかったよ。
やめるんだったらうちに来ればよかったのに。。」
「えぇぇぇぇぇっっっ」
「もっとはやくいってくださいよぉぉぉぉーーー」
と思いましたが、そんなことを言い出す度胸が私にはありませんでしたので無理でしたが、
無謀にも言ってみたらよかったんだなぁなどと反省しました。
しかし、もう米系証券には転職するサインをしてしまっているので、やめるわけにもいき
ません。
結果としては、先に米系証券会社でその方の下で弟子入りできたことが大きな資産となり
ますので、お誘いいただき本当によかったと実感するわけですが、その当時としては少し
後ろ髪をひかれる思いで、国内最大手証券会社から、米系大手証券の中小型株部門のヘッ
ドとして2002年6月に移籍することになったのです。
以下、次号以降に続く。
外資系証券で体験した、日系とは違う、恐るべき現実が明らかに。。。。。