札幌100マイル

円山動物園ブログ

円山動物園の動物の近況や出来事などを綴ります

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アムールトラ アイの体調について(第3報)

療養中のアムールトラのアイの近況についてお知らせします。

 

アムールトラのアイ(雌15歳)につきましては、今年9月上旬頃から嘔吐が目立つようになり、10月上旬から投薬による治療を行っており、皆様にご心配をおかけしているところです。

 

12月現在も投薬は続けていますが、食欲はだいぶ安定してきました。また、嘔吐の頻度も下がってきております。

食欲が安定していない間は、命に直結する可能性が高い嘔吐の治療に専念するために、アイの持病である慢性腎不全の投薬治療を中止しておりました。

しかし、食欲が安定し採食量も増えてきたため、12月中旬からは、今行っている消化器の治療に加えて腎不全の治療も再開することが出来ました。

9月から続いていた慢性的な嘔吐の経過を考えると、病気が完治したとは考えにくい状況であり、今後も注意深く経過を見なければならない状況ではあります。

引き続き飼育展示課スタッフ一丸となり、アイが元気に過ごせるよう力を尽くしてまいります。

 

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アムールトラのアイの体調について

現在、体調不良により治療中のアムールトラのアイ(雌15歳)の体調についてお知らせいたします。

アムールトラのアイは以前から胃内容物の嘔吐が時折見られましたが、ネコ科動物では健康な個体であっても毛玉や草などによる生理的嘔吐をすることがあり、鶏肉を給餌した翌日に嘔吐していることが多いことから、加齢による消化機能の低下等を考慮して、一回の給餌量や給餌内容(鶏の長骨の除去や粉砕、肉の大きさを小さくする)を変更するなどにより対処しておりました。

アイは過去の血液検査で徐々に腎機能が低下していることかわかっており、慢性腎不全の投薬治療をしておりますが、9月下旬からは、餌の種類に関わらず頻回の嘔吐がみられ、10月に入ってからは、食欲が減退し嘔吐に加えて下痢や未消化便なども見られたため、慢性腎不全の原因とする嘔吐などを考慮した投薬治療を行っているところです。その結果、10月11日以降は嘔吐の頻度、餌の消化状態や便の性状などに回復の兆候が見られ、食欲も徐々に回復してきております。

持病である慢性腎不全は完全に治ることはありませんので、今後も治療を継続していく必要がありますが、飼育展示課一丸となり、アイの体調回復に向け、努力を続けていきますので、温かく見守っていただければと思います。

なお、アイの体調によっては投薬治療や体調管理のため、アムールトラをご覧いただけない日があるかもしれませんが、どうかご了承くださいますようお願いいたします。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

 

お別れのご挨拶

お久しぶりの投稿です。メガネ獣医3号です。

 

随分と間を開けた後の投稿であるのにも関わらず何なのですが、

4月の人事異動により、8年間勤務した円山動物園を離れることとなりました。

これまでお世話になった皆様、どうもありがとうございました。

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思い返せば、まさに光陰矢の如しな動物園生活でした。

動物園に来た当初は右も左もわからず、ただおろおろとしておりましたが

円山動物園の諸先輩方からの指導、全国の動物園スタッフとの交流、

大学の教員の方々や野生動物研究者との繋がり、その他にも様々な方々との関係を通じ、

最近になって、ようやく少しは動物園の人らしくなってきたように思っておりました。

本当にたくさんの方に支えていただいたのだと実感しています。

 

 

円山動物園に足りないものを少しずつでも補っていこうと、

努力してきたつもりでございます。

直近の事例としてはハズバンダリートレーニングを取り入れた

動物たちの健康管理の進展が挙げられるでしょうか。

ホッキョクグマの採血トレーニングは以前にもご紹介したのですが、

キャンディの採血成功以来、他の個体にもチャレンジしていましたが

苦戦が続いておりました。

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継続した挑戦の甲斐あって、ようやくつい先週のことですが

ララからも採血することができました。

円山動物園のホッキョクグマたちの多くは高齢の域に差し掛かっています。

血液検査によって健康状態が詳しく把握できれば、

老いゆくクマたちのこれからのケアを充実させていくことができます。

ホッキョクグマに限らず、これからも動物たちの高齢化は進行しますので、

今後も重要な取り組みとなるはずです。

 

研究・調査・教育分野にも少しは貢献できたのではないかと。

 

妊娠には至りませんでしたが、アムールトラの人工授精にチャレンジできたことは

将来的に円山動物園での希少動物繁殖への一助となるはずです。

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ブログや動物園HPでもたびたび紹介していましたが、

野生コウモリの調査事業に関われたのは幸せでした。

動物園内の冬眠ねぐら発見に立ち会えたのは、中々に得難い経験だったと思います。

これからも、札幌市内の野生コウモリ情報が円山動物園から発信され続けることでしょう。

コウモリ キリン舎[1]

 

動物園内での講演に限らず、学会シンポジウムなどでお話しすることもありました。

ブログをご覧の皆様の中にも、私の話を聞かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

その節はお世話になりました。

私が獣医実習を担当した学生さんと、他の動物園の同業者として再会するなど

年月の流れをしみじみと感じる出来事もありました。

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振り返れば、円山動物園ひいては野生動物保全のために、

もっともっと貢献できることがあったのではないか、努力が足りなかったのではないかと

自責の念にもかられます。

しかしながら、

マルチな機能を持つ動物園の中でマルチな分野へマルチな形で関わることができ、

大変に刺激的かつ充実した日々でありました。

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今後は動物とは基本的に関係のない職場となりますが、

かつて在籍した↓の彼のように、陰ながら円山動物園を応援していきたく存じます。

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繰り返しになりますが、私の円山動物園での在職中に関わったすべての方々へ、

いくら感謝しても感謝し尽せないのですが、

感謝の念を表明する以外他になすべきことが見つかりませんので、

何度でも深く感謝申し上げます。

 

本当にありがとうございました。

 

サーバルキャット エンの検査をしました

10月19日に、今年5月に左前肢を骨折したサーバルキャットのメス「エン」のX線検査を実施しましたので、その結果をご報告します。

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「エン」は5月12日に左前肢を骨折したため、手術により橈骨と尺骨のプレート固定を実施しております。

6月の検査では、骨の癒合が少しずつ進んでいるものの、完全には癒合していませんでした。

 

そこで昨日、10月19日に状態確認のため全身麻酔下でX線検査を実施しました。

サーバルキャットは、見た目は可愛い猫のようですが、こう見えても鋭い牙と爪をもつ立派な猛獣です。

遠くから吹き矢を使って麻酔をかけなければいけません。

麻酔をかけるために吹き矢の筒を檻の隙間から差し込むと、好奇心旺盛な「エン」は、近くに寄ってきて前肢で引っかこうとしたり、

ジャンプしてとびかかってきたりと、なかなか吹き矢を打たせてくれません。

 

しばらく苦闘したのち、他の獣医がおとりとなって気を引いてる間に、やっと吹き矢で麻酔をすることができました。

骨折当初は6kg台まで減少していた体重も、7kg 台に戻り肉付きも良好でした。

肝心の骨折部位ですが、6月にはまだ癒合していなかった部分も完全に癒合していることを確認できました。

 

今後は埋め込まれている二枚のプレートのうち橈骨に設置しているプレートを除去する予定です。

プレート除去後はしばらくの間、プレートを止めるネジが埋まっていた穴が治癒するまで安静にする必要があります。

完全に治癒してしまえば、高いところに登る訓練をはじめる予定ですので、サーバル本来の高い身体能力を皆さんにお見せできるかと思います。

もうしばらく、お待ちください。

 

 

 

 

ヒマラヤグマのトモについて

みなさん、おはようございます。

現在展示を中止しておりますヒマラヤグマの「トモ」の状態についてお知らせいたします。

 

ヒマラヤグマの「トモ」は9月29日の午前10時ころに、右の後足を持ち上げ、地面につけることを嫌がる行動が見られたため、安静のために29日以降は室内に収容し、展示を中止しております。

 

翌30日も跛行(歩き方の異常)が見られたため、鎮痛消炎剤を投与しながら経過を観察しているところです。

徐々に症状は軽減し、座った状態から立ち上がった直後のみ、右後ろ足を上にあげて歩きますが、しばらくすると4本足で普通に歩くような状態です。

右後足に外傷や腫れなどは見られませんが、立ち上がる際に一時的に強い症状が見られることから、股関節の脱臼または亜脱臼等も疑われるため、このまま症状が続く場合は、今週中に麻酔下での検査を実施する予定です。

 

跛行の原因についてですが、跛行が見られる前日の28日に、外放飼場への水飲み槽の設置作業がありましたが、目視及び録画映像の確認では、水飲み槽が原因で怪我をしたような形跡はありませんでした。

 

しばらくの間は室内での安静を継続いたしますので「トモ」についてはご覧になれませんのでご了承ください。

 

 

 

 

 

 

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