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冬プロレポート~冬の円山動物園から~

冬の動物園プロジェクト、略して冬プロのメンバーが冬の動物園の魅力を発信

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2011年02月02日 の投稿一覧

猛禽舎リニューアル!

皆さまこんばんは。
メガネ獣医2号です。

丸2カ月休みなしで更新が続いておりますこのブログ。
既に3回書いている人もいるようです。

まだまだ先は長いなあ・・・

さて、気を取り直して・・・

今回もネタがあるので、ちょっと気が楽です。
前回はトラの移動を書きましたが、今回は猛禽類の移動を紹介します。

オオワシやコンドルなどの大型猛禽類を飼育する猛禽舎は昭和53年に建築された施設で、色々なところにガタが来ておりました。
まぁ昭和53年って言ったら僕の生まれた年なので、ガタがくるもの当然といえば当然。
最近、僕も疲れがとれませんし、夜通し遊ぶなんてこともできなくなりました(涙)
月日というのは残酷です。

まぁそれはさておき、この猛禽舎、11月から全面的な補修工事を行っておりまして、その間ここで飼育していた大型猛禽類たちは動物病院付属の入院用ケージで仮住まいをしてもらっていたんですね。

当初の予定では12月末には工事が終わる予定だったんですが、あまりにも施設の傷みがひどくて、工期を大幅に延長し、結局先月末まで工事が続いておりました。

んで、このたび、工事も無事終わりましたので、彼らにも長き仮住まいを終え、美しくリフォームされた猛禽舎にお戻りいただくことになったわけです。



ただ、彼らにはリフォームなどと言ってもよくわからないわけで、自分から元の住処に戻ってくれるはずもなく、我々が捕まえて連れて行かなければならないわけでございます。

前回トラの移動をご覧になった方は、動物の移動って大変なんだなってことはなんとなくわかっていただけたかなと思いますが、大型猛禽類の移動も結構大変です。
まぁ、トラと違って喰われることもありませんし、逃げても飛んでいっちゃうだけなんですが(まぁそれもとんでもなくまずいんだけど・・・)、一つ間違うと人も鳥も結構な大怪我になってしまいます。


その辺のこともぼちぼちお話ししながら今回の移動をご紹介しましょう。

まずは、捕獲です。

猛禽類の捕獲は玉網や熊手を使います。
彼らは飛べちゃうので、まずは地面に降りて来させなければなりません。
普段は↓のような感じ。


その中に熊手をもって入っていくわけですね。


まぁ、ふつうはケージの中に人が入れば、びっくりして↓のような感じになります。


もう意地でも降りねぇぞって感じですね。

まぁ、こんな状態なったのを何とか下に降ろすわけですが、パニックになって逃げ回るので、怪我をさせないように手早く動けなくする必要があります。

こんな感じ。

次に捕まえるわけですが、ここで気をつけなければならないのは、翼と足です。


なぜ翼かというと、彼ら大型猛禽類を飛翔させるだけの筋力をもつ翼なので、変に抑え込もうとすると自らの翼の力でポッキリ骨が折れてしまうことがあるのです。
なので、できれば翼をたたんだ状態で抱え込むのが理想ですが、今回は残念ながらそのような体勢にならず、翼を掴んでの移動となりました。


そしてもう一つ気をつけなければならないのが足です。
彼ら猛禽類の多くは足で獲物をとらえます。
特にワシタカ類などは強靭な握力で獲物を掴むことで絶命させるため、その足に掴まれると大変なことになります。
少なくともしばらく病院のお世話になることになります。

なので、常に足の動きに注意を払いながら、掴まれることがないように動かなければなりません。

彼は熊手を掴んで放さないため、熊手ごと移動になりました。
ちなみに職員も、気休め程度にしかなりませんが、一応、皮手袋を嵌めています。


ちなみに以前、オオワシに腕を掴まれたことがある職員曰く、『万力でつぶされるようだった』そうです。
まぁ僕自身は幸いにして今まで万力で挟まれたことがないので、どれくらい痛いかは分かりませんが、結構痛そうです。
ただその職員が掴まれた時は、ラッキーなことに爪が刺さることがなかったため大事には至らなかったそうです。

こんな爪しているわけですから、爪が刺さってたら間違いなく腕を貫通してますね。
ああ怖い。

一方でクチバシはそれほど危なくありません。
と言っても咬まれれば痛いですし、あざができたり血が出ることはありますが、足ほどやばくはないということです。


つづいて移動です。
常に持ちあげた状態で移動します。
万が一、手が外れてしまった場合に備えて、玉網をあてながら移動です。



彼らの体重は6~9kg程度なので、米袋より軽いのですが、暴れるうえ常に持ちあげた状態で保持しなければならないので、非常に重く感じます。
体力に自信のある職員でも連続だと2羽が限界だそうです。

僕は今回も写真係に徹しようと思っていたのですが、そううまくいくはずもなく、捕獲・移動要員に駆り出されました。
20110202-16.jpg
『2羽が限界なんて大げさだなぁ』と内心鼻で笑っておりましたが、確かに2羽が限界です。
この写真を撮ったのがそれまで2羽を捕まえて移動させていた職員なんですが、このピンボケぶりがそのキツさを表しているようです。

ちなみにコンドルあたりだと10kg超えるので、一人で持つのは無理ということで、複数人で運びます。
↓はコンドルです。他の猛禽類に比べてけた外れに大きく感じます。
翼もオオワシの1.5倍くらいありそうです。

ちなみに先ほどクチバシはそれほど危なくないと書きましたが、コンドルの類はどちらかというとクチバシが脅威です。
彼らはその体重で獲物を押さえつけ、くちばしで引きちぎるという食事スタイルであるため、クチバシの力が強いのです。
しかも首が見た目以上に伸びるので、リーチが長い。

コンドルにかまれたことがある職員曰く、『ペンチで挟まれたように痛い』そうです。
まぁ、これもペンチで挟まれたことがないし、自分で挟む趣味もないので想像するしかありませんが、なかなか痛そうですね。
なので、頭をフリーにしないように、タオルで頭をくるんで掴んだまま移動です。

ということで、ひやひやしながら無事到着、新しくなったケージに放します。
20110202-13.jpg
20110202-14.jpg

劇的ビフォーアフターのように、新しくなった住処に感動してくれればよいのですが、特に彼らの反応にめぼしいものはありませんでした。
もう少し空気読めよと思いましたが、まぁ、こちらも匠が設計したわけではないので、あまり強いことは言えません。

まぁ実際はこんなしょうもないことを考えていたわけではなく、捕獲と移動、そして新しい環境という色々なストレス要因によって、鳥たちがダメージを受けていないかを観察しなければなりません。
特にうちの大型猛禽類はウルスラ(55歳以上)を始め、年齢のいっている個体もいるので心配です。

幸いオオワシが捕獲の際に軽く翼をぶつけて、少し出血したことを除けば、肉体的な損傷はそれほどありませんでしたし、移動後高い場所の止まり木や休息場所で休んでいる様子からみても精神的なダメージもそれほど多くなさそうです。
後は明日以降の餌喰いを見て判断することになると思います。
20110202-15.jpg

というわけで、今回の移動も無事終わりました。
めでたしめでたし。

さて、リニューアル後の一般公開ですが、隠しようもないので明日からでも一応ご覧いただけます(笑)
ただ、正式なリニューアルオープンは2月5日ということになります。

スノーフェスティバル(2月7日~2月13日)と併せて、ぜひご来園ください。
スノーフェスティバルの目玉、チューブスライダーも着々と出来上がってきていますが、結構大きいですよ。
ありゃあ子供じゃなくても楽しそう。。

今度、閉園後にゴミ袋敷いて滑ってこようかな・・・

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