今日も動物園
Posted by winterpj on 2011年12月29日(木) 19:21
みなさんこんにちは。
メガネ獣医2号です。
獣医ブログでもすっかりご無沙汰にもかかわらず、今日はこちらに書くことになりました。
今日は年に3日しかない休園日。
あまりご存知ない方もいらっしゃるようなんですが、動物園はほぼ年中無休。
12月29日～31日までの3日間しかお休みしておりません。
ただ、動物のお世話は毎日ありますし、具合が悪くなる動物だっているので、飼育系のスタッフはほぼいつもと変わらない出勤体制です。
動物園で働くようになってから正月気分に浸れたことがありません（>_<）
まぁ愚痴はこのくらいにして、めったにない休園日ということでお客さんが入っていないうちに色々やっておこうと画策するわけですが、そこはやっぱり動物園。
いつも通りトラブルは起きるわけです。
今日のトラブルは彼。
グラントシマウマの飛馬君。
シマウマは基本臆病な動物なんですが、彼は少し度を越しています。
ちょっとしたことで驚いて獣舎を走り回り、金網などに顔をこすって擦り傷や切り傷をつくるということがしばしばあります。
今日は屋外の柵を飛び越え、マレーバク放飼場に侵入しておりました。
お客さんもいないのに何に驚いたのか皆目見当がつきませんが、よほど驚くことがあったのでしょう。
超えてしまった柵。低いっちゃあ低いか・・・もう少し嵩上げが必要かな・・・
飼育員さんも渋い顔です。
侵入後も興奮さめやらず、色々なところに顔をぶつけたようで、傷だらけ。
左目の上がボコって腫れているのは今年の1月に同じく興奮して暴れまわった時に出来た傷跡。このときは5cmくらい皮がめくれちゃっていたので、流血したボクサーみたいになっていました。
今日の傷は右目の上から額を横切る細い傷です。あと、右耳の前の毛がごっそり抜けて禿げています。
出来れば消毒して開いている部分を縫ってあげたいところですが、まずおとなしく触らせてはくれませんので、治療するには全身麻酔をかけなければなりません。
ただ、麻酔って実は結構リスクがあって、眠ったまま戻ってこない（死んでしまう）ということも少なくないんですね。
なので、野生動物の治療を行うときは、その治療を行わなければ相当の不都合が生じる、放っておくと死んでしまうという場合に限られます。
ちなみに前回シマウマに麻酔をかけたのは、蹄底の裂傷でまともに歩けなくなっていた時でしたが、この時も大変大がかりなものでした。
使う麻酔薬も普段使っている薬がシマウマには効きづらいので、いつもと違ってとても危険な薬（人間にとって）を使うことになり、万が一に備えて人間のお医者さんにまで来てもらってました。
薬を扱うときもこんな格好です
この薬、間違って人間の粘膜（口とか目とか）に付いちゃうと、そこから吸収されて昏倒してしまうらしいです。まぁゾウをも眠らす薬だそうですから、そのくらい強力なんですね。
人間に置き換えれば足の裏ちょっと切っちゃったという話ですから、生き死にに関わるものではないでしょうし、治療も局所麻酔かけてちょちょいとやってしまうのでしょうが、馬にとって蹄のトラブルは非常に厄介で、そのようなリスクを冒しても早期治療が求められるんですね。
人手が必要なので、すごくたくさんの人が来ています。
このときは北大の先生方にも手伝ってもらいました
ただ今日のケースは、ちょっと顔を切っちゃったという程度なので、細菌感染さえなければすぐに治っちゃいますから、今回は特段治療はせずに様子を見ることになりました。
僕も動物園に来るまでは怪我や病気の動物は全部手をかけて治療するもんだと思っていたのですが、野生動物については今回のように手を出さないほうが良いというケースはあるということを、動物園に来てから学びました。
医療といっても、人間、ペット、野生動物、対象が違えばそのアプローチの仕方も違うってことですかね。
って、全然冬って感じの内容じゃなくなった（笑）
冬でも色々あるんだよってことを書きたかったんですが・・・
興が乗ってくると色々書きたくなっちゃうんですよ・・・
新小岩の定食屋のこと書いてた人もいたし、まぁいいか（笑）
まぁこういう回もあるってことで・・・
それでは今日はこの辺で・・・
そのうち獣医ブログも書きたいと思います。
ブログを書けというメガネ3号のプレッシャーもかなりきつくなってきましたし（笑）
ああそういえば宣伝を忘れてました。
正月三が日、獣医の園内ガイドを行います。
獣医さんがこれまでの治療を振り返りながら園内をガイドして回るという、これまでありそうでなかった新企画です。
先着10名、10時30分から動物園センター受付で整理券を配布します。
ガイド自体は11時から1時間程度の予定です。
実際の獣医さんの治療の話が聞ける貴重な？機会ですので、ぜひお越しください。
