札幌100マイル

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爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

by zoohonda

zoohonda
プロフィール

本田 直也

◆ 1976年 札幌生まれ
◆ 1996年より円山動物園勤務
◆ 担当は爬虫類館と猛禽類のフリーフライト
◆ NPO法人日本放鷹協会認定 諏訪流鷹匠。

春から夏は爬虫類を求め、北海道、沖縄のフィールドワークへ、
秋から冬は愛鷹、愛犬と共に鷹狩りへと素敵な日々を送っている。

鷹やら犬やら爬虫類やらと山の方で暮らしている。


投稿したブログ数:395件

カンボジアモエギハコガメの孵化

今年もカンボジアモエギハコガメの孵化に成功いたしました。


卵は3月6日に産卵されたもの。
http://sapporo.100miles.jp/zoo_honda/article/14

孵化したのは6月26日でございます。
今年は孵卵温度を高めに設定したためいつもより早めの孵化でございました。





カンボジアモエギハコガメはモエギハコガメの亜種でベトナムとカンボジアに生息しております。
中国では昔から食用にされてまして、現在では絶滅に瀕しているカメなんです。
特にアジア産のカメ類ってのは産卵数が少ない種が多いもんで一度個体数が減ってしまうと回復するのが困難なんですよ。

動物園の役割のひとつとして、「種の保存」があります。
特に貴重な種に関しては国際的視野を持って積極的に繁殖事業を行っていく必要があるわけです。
でもモエギハコガメはやたら飼育が難しく、繁殖はおろか長期飼育するのも困難な種。

このカメは1994年に動物商から円山動物園に25匹が寄贈されました。
しかし3ヶ月以内にほとんどが死亡、2000年の段階で♂♀各1匹だけが残りました。
大半の個体が餌も食わずに死んでいく・・・・・

とにかく現地でのストックや輸送状態が非常に悪いんですよ。
現地では食用ですから、狭い籠なんかに山積みにされて市場に並んだりしてるんです。
そんな過酷な状況の中ではすぐに病気になってしまいます。
んで日本に輸入されて来る頃にはすでに取り返しの付かない状態まで悪化しているわけです。
(最近ではかなり改善されたようで輸入される個体の健康状態も良いです)

生き残った♂♀のペア、でも健康状態は良くなかったですね。
痩せているし、頑固な偏食だし・・・
でもね、「このペアをなんとか復活させて、繁殖までもっていく!」
そんな強い決心で繁殖事業に挑んできたんですよ。

体重の増加、偏食の改善、繁殖に向けての体内リズムの再確立を2年かけて実施しました。
結果、2002年に初産卵、04年に初めて孵化に成功いたしました。
その後、2006年、07年と継続した繁殖を行っております。
現在はバックヤードにて6匹の個体を管理しております。
(左から、♀親、2004年産まれ、2006年産まれ、2007年産まれ)


ほんとは展示して皆さんにも観察してほしいところなんですが、この種はなにせ神経質。
2005年に一度展示を行ったのですが、それが原因でこの年は繁殖しませんでした。
環境の変化で繁殖リズムが狂ってしまったんですね。
それぐらい微妙な条件が必要なんです。

この種は世界的にもみても繁殖例は少ないです。
国内の施設では円山動物園のみが繁殖に成功しております。
飼育技術者の立場から種の保存に貢献。
まさに飼育係冥利に尽きるって感じでございますね。

この種は貴重な種、展示よりも繁殖を第一に考えております。
でも近いうちに何らかの形でお披露目したいと思っていますので、それまでご理解よろしくお願いいたします。




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