それが一番大事
Posted by zoohonda on 2007年7月29日(日) 23:44
バックヤードのアオダイショウとシマヘビの産卵が始まりましてね。
僕はね、今まで公私ともに様々な爬虫類の繁殖をやってきましたよ。
でもね、やっぱり一番うれしいのは身近なアオダイショウやシマヘビが毎年継続して繁殖することなんです。
僕らって日本のことを「すごく小さな島国」って思い込んでますよね。
でも実際はそれほど小さな国ってわけでもないんですよ。
実際ヨーロッパのほとんどの国より国土面積は広い。
愛すべき飼育技術の国、ドイツや英国よりもね。
ただ山地が多くて、狭い平野部に人口が密集しちゃってるから窮屈に感じちゃうんですかね。
確かに人口は多いからさ。
日本って南北に長くて地形も複雑なもんだから亜寒帯から亜熱帯までと多様な気候が見られるのが特徴。
しかも島国ときている。
そう、こんな特殊な環境で進化適応してきた日本の野生動物ってのはほんと貴重なんですよ。
大陸の影響は受けてはいるけど、そのほとんどは日本にのみ生息している固有種だしね。
例えば以前ここで紹介した臭いヘビ「ヨナグニシュウダ」ね。
まあ近縁種は他国にもいるけど、ヨナグニシュウダっていうヘビは世界中で与那国島だけにしかいないんです。
ひろーい世界の中で、小さな小さな与那国島だけにしかいないわけなんです。
これほど分布域が狭い種ってのも珍しい。ほんと貴重なんです。日本の宝なんですよ。
僕が毎日観察してるシマヘビやカナヘビ、それを取り巻く生態系も「ここ」だけにしかないものです。
身近なものも「生態系の多様性」の一部、だからその中にいる僕らはもっとそれを知る必要があるわけです。
地球的視野で見れば、僕らにとって身近な生態系がいかに大切なのかってことがわかりますよね。
でもね、
日本人特有の性質なのかもしれんけど、外国産をもてはやす風潮が間違いなくあるんですよ。
外国コンプレックスみたいなね、外国の動物の方が素敵で貴重に見えちゃうみたいな。
まあ動物に限らずだけど。
んでそっちばっかりに目がいきすぎちゃって自国の生態系の価値や魅力に気が付かない場合が多いんだな。
まさに灯台下暗し。
動物園もそう。
例えばアオダイショウなんかはいつでも捕れるもんだから適当に扱われていることも多いっすよ。
外国産の立派な展示場横の仮設水槽の中に入れられてたりさ。
僕はね、こういうのを見るとほんと悲しくなっちゃいましてね。
「アオダイショウの方がずっと素敵で大切なんじゃい!」って叫んでしまうわけですよ。
僕が爬虫類館担当になって最初にやったことは外国産を裏に引っ込めて北海道産の展示を始めたこと。
一番身近で大切なものを知ってもらいたいですからね。
当然飼育技術に関しても遅れてます。
実際日本産の動物ってのは飼育、繁殖が技術的に難しいのが多いんですよ。
爬虫類に限らずね。
ここら辺の技術確立ができてないと、いざという時の対応が遅れてしまうんですね。
当然管理能力が欠けていると身近な生態系のメッセージを発信することも難しくなりますしね。
実際、身近なアオダイショウやシマヘビ、カナヘビなんかを継続的に繁殖させることってなかなか困難です。
だからこそ円山動物園では日本産爬虫類の繁殖に力を入れているし結果が出ればすごくうれしいわけです。
動物園の役割である「環境教育」や「種の保存」、これらを外国産動物主体に行っていく。
例えばトラやゴリラを通して熱帯雨林の現状を知ったり、保全のために行動を起こしたりね。
うん、たしかにすごく大切なことだし実行するべきです。
でもね、僕らの役割は、まず何よりも先に「身近な生態系を知り、保全していくこと」だと思いますよ。
それが一番大事(DMBB)
世界の珍しい動物のことはよく知っていても、肝心な自国のものがおろそかになってしまってる・・・
これじゃあなんかかっちょ悪いでしょ。
「アオダイショウを笑う者は、アオダイショウに泣く」
今宵はこの名言を残し、ドロン(死語)したいと思います。
では。