『カメ』タグの付いた投稿
それはいつも休日中
Posted by zoohonda on 2007年3月9日(金) 00:17
今日は休み明け。
先日交尾させたカンボジアモエギハコガメのケージを覗いてみる。
あっ・・・・産んでるな。
ゆっくり土をほっくり返してみると・・・
ほらね。
10日程前から餌を食べず、ケージ内をしきりに動き回っていた♀。
これは産卵前の兆候です。あーもうすぐ産むなーとは思っていたのですが、
毎年必ず僕の休日中に産むんですよねー。
動物園では担当者のいない日に何かが起こるのです。良いことも悪いことも・・・
もちろん先日交尾させてすぐに卵を産んだわけではありません。
爬虫類っていうのは「精子貯蔵」をする動物なんです。
一度交尾すると♀は体内で精子を生きたまま貯蔵するんです。
んで良い時期に受精させて産卵する。
つまり1度交尾すれば数年間は有精卵を産む事が可能なんですね。
だからこの卵もいつの精子と受精したのかはわからんのです。
それだけ自然界では配偶者と出会う機会が少ないってことです。
1度の出会いで数年は種を残せるようにするっていう戦略です。
少ないチャンスを有効に使うんですよねー。
なんとも合理的で神秘的な特徴。
んでこのカンボジアモエギハコガメの場合、たぶん3年は交尾させなくても産卵可能です。
でも交尾させないでいると年々有精卵が採れる確立も下がります。
一応動物園では年に2,3回程度交尾させて、毎年確実に有精卵を採ってます。
時期はいつでも良いんです。
交尾さえさせればあとは♀のリズム、タイミングで産卵してくれますから。
んで卵をよーく見てください。真ん中が白くなってますよね?
これは、卵の発生がはじまってるんです。つまり有精卵。
産んだ直後は透き通った感じなんですよ、んで2日くらい経つと発生が始まり白濁してくる。
だからこの卵はたぶん2日前くらいに産んだんでしょう。
無精卵の場合はずっと透き通ったまま。
でかいっすよね。単一電池と同じくらい。
♀は甲長14cmくらいなんで体の割りにはかなりでかい卵を産みます。
だから他の種のように一度に何個も産まないんです。
この個体は一度に1個。んで年に3回程度産みます。
んでこれが孵化装置。
まったくアナログな方法ですが、これが1番良い。
このカメは落ち葉が堆積したような湿度の高い森林で暮らしています。
必要な孵化環境は、まず「多湿」と「通気性」そして「ある程度の温度」。
普通カメは深く穴を掘ってそこに卵を産みます。
でもこのカメは違う。
必ず浅い場所に産むんです。
たぶん自然界では落ち葉の下とか朽木の下なんかにさらっと産んでるじゃないかなー。
浅いってことはそれだけ通気性が必要ってこと。
通気性と多湿という矛盾した環境を提供するのです。
卵1個に対して、大きなケースとたくさんのミズゴケ。これは長期間環境を安定させるためです。
このたっぷりのミズゴケが長期間十分な湿度と通気性を確保してくれるんですねー。
んで温度は適当。室温にまかせてます、だいたい18〜27℃くらい。
この環境でだいたい110日くらいで孵化します。
まだまだ先は長いですが、また近況を報告しますね。
バックヤードがモエギハコガメだらけになっちゃうな、こりゃ。
辛くはないわ、この東京砂漠
Posted by zoohonda on 2007年2月24日(土) 00:42
クモノスガメの展示場です。
カッサカサです。湿度20%です。人間だったら速攻でインフルです。
クモノスガメに対しては毎年12〜2月まで、「カッサカサ飼育」をしております。
展示場の散水を減らし砂漠化させてしまうのです。
この時期のカメたちはまさにカッサカサです。ほとんど動きません、てゆーか動けません。
あえて過酷な環境にさらして、カメの活動スイッチをオフにしてるのです。
餌は通常期は週に3回、でもこの時期は週に1〜2回程度で量も質も下げております。
んで餌を与える前はお風呂に入れ温浴させ、水も飲まします。
ちょっとだけスイッチを入れてあげるのです。
ゼンマイを少しだけ巻いてあげるって感じです。短時間動けるけどまたすぐに止まってしまう状態ね。
んじゃなんでわざわざそんなことするの?って話ですよ。
クモノスガメはマダガスカルに生息しています。
雨期と乾期がある場所です。んで夏は高温で多湿です。そして冬は低温で乾燥してます。
彼らが活動するのは温暖で多湿な雨期。
この時期に栄養を十分とって繁殖も行ない、乾期にはほとんど活動しません。
だから年間に活動している期間って実は結構短いんですよ。
温帯に生息している爬虫類もそうです。冬は冬眠してしまいますからね。
でも動物園という環境は動物に対して常に良い環境を提供するのが普通です。
常に快適な環境を提供し、いつでも活動できる状態を保っているわけです。
動物園で展示している温帯産の爬虫類達も冬眠することなく年中快適な温度の中で暮らしてます。
冬眠なんかしなくても普通に元気だし餌もよく食べてます。
が、しかーし!
実は長期間の快適な状態に耐えられない種もいるんだなこれが。
それがズバリ、
このクモノスガメと同じマダガスカルに生息する「ヒラオリクガメ」(バックヤード飼育・非公開)。
特にヒラオリクガメはほんとに弱い・・・
野生動物ってのは、種それぞれの生息地の環境の中で進化・適応してきた存在。
だから本来であれば、その生息地の環境(温度や湿度、日長時間、食物など)の中でしか
体調や繁殖など生活そのものを持続させることができないわけです。
んなーこたーない!動物園の動物は元気に長生きしてるじゃねーか!って思う方もいるでしょう。
正解です。
普通の動物達は「適応能力」ってものがあって快適な環境に適応して野生よりも長く生きれるんです。
通常哺乳類や鳥類などの恒温動物は適応力が強いっす。動物園の中では元気に長生きできる部類。
(長生きはできでも繁殖ができるかは別問題。それはまた今度)
しかし、きわめて特殊な環境で暮らす動物、または爬虫類を含む変温動物(外温性動物)などは
適応能力が低い。
特にリクガメは長命な動物。
10年くらい飼育したからって飼育法が正しいとは言えないんですよ。
50年以上元気に維持してれば良い環境ですねっ言えるくらい。
「ソロモンの指輪」でローレンツ博士も言ってます。
「リクガメは飼育をはじめた時から死がはじまってる」ってね。
例えばリクガメを飼育してて20年で死んでしまったとします。
それは20年も生きたんですねーではなく、20年かけて死んでいったというだけなんです。
本来であれば100年生きる動物ですよって。
爬虫類の中で常時快適な環境で問題がでずらいのは赤道付近に生息する種類。
赤道直下は気候変動も少なく、常時安定していますからね。
しかし熱帯であろうが、温帯であろうが安定した自然環境ってのはありません。
冷たい雨期もあれば、あったかい雨期もあるし
灼熱の乾期もあればマダガスカルのように低温の乾期もある
北海道のように寒い冬もあれば、沖縄のように温暖な冬もあるわけです。
ぜーんぶ地域によってバラバラ。
んでここですんごく重要なキーになるのが「基礎代謝」。
恒温動物ってのは体温を維持できます。
そのかわり体温を保つために食べ続けなきゃいけないわけです。
燃費が悪いんですよ。
人間も冬は体温維持のために多少代謝が上がり食欲も増しますけど、
夏であろうが冬であろうがちゃんと規則的に食事をしないと体がもちませんよね?
恒温動物は基礎代謝が高く、常時「一定」だからです。
でも爬虫類のような変温動物の場合、体温を保つことができません。
寒くなれば体温は下がりそのまま動かなくなるだけ。
冬眠中は半年であろうと1年であろうと飲まず食わずでも全然平気です。
燃費が良い。
爬虫類は、
温暖で雨が降る時期にだけ代謝が上がり活動します。
んで暑すぎたり寒すぎたりする時期は代謝が下がり動かない。
つまり哺乳類とは違い、生息地の中で大幅な基礎代謝の変化を経験するわけです。
一見「冬眠」や「夏眠」ってのは動物にとっては過酷なだけで意味のない行為に思えますよね?
まして飼育において再現することなんて残酷だ!と思われるでしょう。
でも僕は最初に述べました、彼らはその環境の中で進化適応してきたと・・・
「冬眠」「夏眠」といった過程の中で経験する「代謝の変化」は生きていくために
非常に重要なことなんです。体調の維持や繁殖、生理のリズムを整えるために必要なことなんですよ。
だから爬虫類の飼育には「代謝のコントロール」ってのも常に考えていかないといけないわけです。
温度や湿度や光や餌なんかを積極的にいじりながらね。
んじゃいよいよ答えです。
クモノスガメやヒラオリクガメ、常時快適環境(高温で多湿)で飼育すると
結局最後には「オーバーヒート」しちゃうんですよ。
代謝のスイッチを切って休ます時期が必要なんです。
丈夫なエンジンもまわしっぱなしだと壊れてしまうわけです。
数年は平気でも最後には体のあちこちに負担がかかって病気になってしまうんですね。
ヒラオリクガメなんてまだ7cmくらいの子ガメですが、期間中の3,4ヶ月は全く餌も食べないんですよ。
でも痩せもしないし、体調も崩しません。
代謝が低下してエネルギーを使わないから食べなくても平気なんです。
毎年3月くらいから、温度も湿度も上げていきます。
んで餌の回数も増やし、新鮮な野草や花をたくさん食べさせるんです。
日長時間も伸びてますんで、この時期彼らは積極的に繁殖活動を行なうんですよ。
動物園でも2年前からやっと産卵するようになりました。
孵化までは成功してないんですけどね。
すんげー長くなっちゃいました。ごめんちゃいね。
Deepだから仕方ないんですわ。
交尾のさせかた(カンボジアモエギハコガメ編)
Posted by zoohonda on 2007年2月19日(月) 23:38
3日前から湿度を下げカラカラにしとく
飼育ケージ内の物(水入れや隠れ家)を全部とりだす
♂のケージに♀を入れる
上からぬるま湯をたっぷりかけて湿度を上げる(カメにもかけてね)
10分待つ(覗いちゃダメよ)
んで・・・・・・・
交尾成立
行為が終わったら(30分程度)再び♀を取り出し元のケージへもどす
最近♂の行動がもちょもちょしてきたため本日交尾を実施いたしました。
2月に入ると日長時間がのびますよね、爬虫類館は年中暖房しているんで、本来繁殖行動を引き出すために必要不可欠な「温度変化」を提供してやることができないんですよ。
だから、この日長変化を利用して発情のタイミングを調整しているんです。
2月に♂と♀の「やる気」が最高潮に達するように飼育管理を行なうのです。
彼らの行為がスムーズにいくよう事前にしっかりお膳立てをして、
最高のムードを演出してあげるのが飼育係の役割なんですよ。
他に2月に「やる気」を設定しているのは「ヨウスコウワニ」
動物園に来た際は観察してみてくださいね。
あと、かるーく展示場のガラスをドンって叩いてみてください。
きっとエキサイティングな光景を目の当たりにすることができますぜい。
交尾を終えた♂
恍惚の表情・・・・・・・・