札幌100マイル

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爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

by zoohonda

zoohonda
プロフィール

本田 直也

◆ 1976年 札幌生まれ
◆ 1996年より円山動物園勤務
◆ 担当は爬虫類館と猛禽類のフリーフライト
◆ NPO法人日本放鷹協会認定 諏訪流鷹匠。

春から夏は爬虫類を求め、北海道、沖縄のフィールドワークへ、
秋から冬は愛鷹、愛犬と共に鷹狩りへと素敵な日々を送っている。

鷹やら犬やら爬虫類やらと山の方で暮らしている。


投稿したブログ数:395件

それはいつも休日中

今日は休み明け。
先日交尾させたカンボジアモエギハコガメのケージを覗いてみる。

あっ・・・・産んでるな。
ゆっくり土をほっくり返してみると・・・

カンボジアモエギハコガメのたまご
ほらね。

10日程前から餌を食べず、ケージ内をしきりに動き回っていた♀。
これは産卵前の兆候です。あーもうすぐ産むなーとは思っていたのですが、
毎年必ず僕の休日中に産むんですよねー。
動物園では担当者のいない日に何かが起こるのです。良いことも悪いことも・・・


もちろん先日交尾させてすぐに卵を産んだわけではありません。
爬虫類っていうのは「精子貯蔵」をする動物なんです。
一度交尾すると♀は体内で精子を生きたまま貯蔵するんです。
んで良い時期に受精させて産卵する。

つまり1度交尾すれば数年間は有精卵を産む事が可能なんですね。
だからこの卵もいつの精子と受精したのかはわからんのです。
それだけ自然界では配偶者と出会う機会が少ないってことです。
1度の出会いで数年は種を残せるようにするっていう戦略です。
少ないチャンスを有効に使うんですよねー。
なんとも合理的で神秘的な特徴。

んでこのカンボジアモエギハコガメの場合、たぶん3年は交尾させなくても産卵可能です。
でも交尾させないでいると年々有精卵が採れる確立も下がります。
一応動物園では年に2,3回程度交尾させて、毎年確実に有精卵を採ってます。

時期はいつでも良いんです。
交尾さえさせればあとは♀のリズム、タイミングで産卵してくれますから。

たまご02
んで卵をよーく見てください。真ん中が白くなってますよね?
これは、卵の発生がはじまってるんです。つまり有精卵。
産んだ直後は透き通った感じなんですよ、んで2日くらい経つと発生が始まり白濁してくる。
だからこの卵はたぶん2日前くらいに産んだんでしょう。
無精卵の場合はずっと透き通ったまま。

でかいっすよね。単一電池と同じくらい。
♀は甲長14cmくらいなんで体の割りにはかなりでかい卵を産みます。
だから他の種のように一度に何個も産まないんです。
この個体は一度に1個。んで年に3回程度産みます。

んでこれが孵化装置。
たまご3
まったくアナログな方法ですが、これが1番良い。
このカメは落ち葉が堆積したような湿度の高い森林で暮らしています。

必要な孵化環境は、まず「多湿」と「通気性」そして「ある程度の温度」。
普通カメは深く穴を掘ってそこに卵を産みます。
でもこのカメは違う。
必ず浅い場所に産むんです。

たぶん自然界では落ち葉の下とか朽木の下なんかにさらっと産んでるじゃないかなー。
浅いってことはそれだけ通気性が必要ってこと。
通気性と多湿という矛盾した環境を提供するのです。

卵1個に対して、大きなケースとたくさんのミズゴケ。これは長期間環境を安定させるためです。
このたっぷりのミズゴケが長期間十分な湿度と通気性を確保してくれるんですねー。
んで温度は適当。室温にまかせてます、だいたい18〜27℃くらい。
この環境でだいたい110日くらいで孵化します。

まだまだ先は長いですが、また近況を報告しますね。
バックヤードがモエギハコガメだらけになっちゃうな、こりゃ。

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