札幌100マイル

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爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

by zoohonda

zoohonda
プロフィール

本田 直也

◆ 1976年 札幌生まれ
◆ 1996年より円山動物園勤務
◆ 担当は爬虫類館と猛禽類のフリーフライト
◆ NPO法人日本放鷹協会認定 諏訪流鷹匠。

春から夏は爬虫類を求め、北海道、沖縄のフィールドワークへ、
秋から冬は愛鷹、愛犬と共に鷹狩りへと素敵な日々を送っている。

鷹やら犬やら爬虫類やらと山の方で暮らしている。


投稿したブログ数:395件

ドイツ連載開始。

皆様、お久しぶりです。
本田☆直也でございます。

実はね、スイスとドイツに行ってたんですよ。

今回は札幌市立大学との共同研究で渡独。
デザイン学部の斉藤雅也先生と行ってきたんですよ。
スイス一箇所、ドイツ六箇所の計七箇所の施設をめぐってきました。

斉藤先生の専門は建築環境学。世界的に活躍されてる研究者です。
先生の研究分野は「住環境」ね。
その中でも「熱」や「光」といった目に見えないものが対象です。
人間が健康に、しかも快適に暮らすための環境を日々研究しておられるんですね。

今回の目的は「寒冷地における熱帯産動物の屋内飼育環境について」。
札幌は寒冷で、熱帯産種は屋内飼育が中心となります。
そこで屋内でも本当の意味で健康、且つ快適に暮らせる環境について視察してきたんです。
主に爬虫類・類人猿・ゾウの環境作りに関してです。
ドイツやスイスは寒冷で屋内飼育が中心ですからね。

だから動物舎のデザインとかではないんですよ。
学んできたものは「熱環境」です。
ヨーロッパにおける暖房システムとそれが作り出す温度や湿度の「質」。
そしてそれをどのように維持しているかってことを知りたかったんです。
目に見えないものこそが本当に重要で、そこに「住の本質」があると思うんですよ、人間も動物もね。
だから動物園と建築環境学という分野がコラボするってのはごく自然であり、最強のコンビです。
浜省にバンダナってくらいしっくりくるわけですよ。
お互いが必要とする関係であり、もともと赤い糸で結ばれていたわけです。


昨今、どの動物園でも環境エンリッチメントが盛んに行われていますよね。
そのほとんどが飼育動物を行動させることで「精神面に良い影響を与える」というものです。
これは「肉体的には健康である」、「精神面をケアすることが、肉体的健康にもつながる」ということが前提にあると思います。

「じゃあ動物達は肉体的にほんとに健康なの?」
僕はいつも疑問に思いますね。
そして真っ向から否定しますよ、「健康ではない」ってね。
ただ体調を崩すほどの影響が出てないだけです。

動物には「適応能力」があります。
たとえ不適切な環境であっても、それに「耐えられる力」があるんですね。
そして長生きもするし、繁殖もする。
その能力のおかげで、僕らは本当に提供すべき必要な条件ってのを見失ってしまってるんですよ。
でも不適切な環境による影響ってのは必ずその動物の姿や行動に現れているんですね。

「繁殖しているから良い環境」ってのは幻想です。
僕はある種のリクガメをダンボール箱で繁殖させてましたから。
繁殖させる条件と健康を維持するための条件はまったく別物です。

適応能力は高等生物ほど高く、下等生物ほど低いです。
僕はずっと適応能力の低い爬虫類をやってきましたから、敏感なんですね。
適応能力が低い分、必要な環境を提供してやらないと死んでしまうんですよ。
だから飼育環境を作る際はその条件を「細かくピンポイントで探る」って視点が必要なんですね。
でも残念ながらその条件を提供できない場合がほとんどなんです。
だからそれを補うための「処置」をしていくことで、健康を維持している状態なんです。
僕はこれを「飼育」とは呼ばないんですね、あくまでも「処置」なんです。

爬虫類は適応能力が低いから処置が必要。
でもね、これは人間や他の高等動物も一緒だと思うんですね。
人間や高等動物は処置をしなくてもただ「耐えれている」だけ。
「死なないから気づかない」ってことが多すぎる。

だから、「健康」という概念をもっともっと高いレベルに設定することが必要だと思うんですね。
そして適応能力の低い爬虫類の飼育環境を徹底的に考えることで、「住環境」というものの本質に迫ることができるのではないか?
それが斉藤先生と僕の共通認識だったんです。
そしてそれを解消する一つの条件が、「熱の質」だったというわけなんですね。
ここから動物園と大学との共同研究が開始されたんですよ。

続く・・・たぶん


スイス・チューリッヒ動物園のゴリラ屋内飼育施設。

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