2010年12月09日 の投稿一覧
クロコダイルハンター本田。
Posted by zoohonda on 2010年12月9日(木) 21:16
今秋、マレーガビアル2頭を繁殖目的のために熱川バナナワニ園さんに搬出したんです。
うちの個体は全部♀ですので、このまま管理していても繁殖はできないんですね。
こんな希少なワニをそのような状態で置いておくわけにはいかないわけなんですよ。
積極的に移動を行い、繁殖を目指していく必要があるんですね。
でもね、そもそもうちの動物園は巨大なワニの捕獲経験がないんですよ。
だからどうやっていいのかもわからない。
最初は、フレディ・バー教授ばりにプールに飛び込んで、ワニの口を押さえ込んで捕獲するもんだと思ってたんですね。
もうまさに命がけです。
まあ当然、飼育員の間でも「誰が飛び込むのよ」という話になるわけですよ。
そして結果、「守る物がない」という珍妙なロジックにより僕がやることに。
まあ担当者だから仕方ないですね。
僕は「笑顔が素敵だから」という理由で吉田飼育員を推薦したんですけどね。
でも結局、搬出時にはバナナワニ園の方が出向いてくれることになりましてね。
捕獲法を伝授してくれることになったんですよ。
ほんと心からうれしかったです。
今回は完全非公開で行われた搬出時の様子を、克明、且つスリリングに、しかもちょっと膨らませてお伝えしたいと思います。
まずはワニ5頭を片方の展示場へ全て移動します。
そして輸送箱を空いた展示場内へ運び入れるんですね。
この箱は両端が落とし扉になっているんですよ。
勇敢な僕はこの時すでに膝を負傷してましたからね。
普通に歩いていたら、植物の根っこに引っかかって擦りむいちゃったんですよ。
ほんと名誉の負傷と言っても過言ではありません。
そして、両展示場の仕切りに箱を備え付け、ロープを通します。
僕はこの時すでに場外におります。
完全な一傍観者です。
負傷したんですから無理もありません。
不安そうな伊藤獣医師。
なんせ初めての経験ですからね。
そしていよいよ捕獲です。
バナナワニ園の横山さんと浜野さんが作業に入ります。
実に勇ましく頼もしく、僕は少し鳥肌が立ってしまいました。
なんせ日本で最もワニを知り尽くした方々ですからね。
安心して拝見させていただきました。
まず先がワッコになったロープをプールへと投げ込みます。
そしてカギ状になった鉄棒で引っ掛けながら、ワニの首を通しタスキ掛けにするんです。
うまく引っかかりました。
後はワニの動きを見ながら、箱へと引っ張り込むのです。
ワニが完全に箱に入った時点で作業に加わる僕。
カメラは全てを捕らえております。
1頭目の捕獲は無事に終了。
祐川飼育員もうれしそうです。
そして2頭目の作業、いよいよ僕の出番でございます。
負傷した膝をかばいながらの捕獲です。
ロス五輪での柔道山下選手を彷彿とさせます。
そして外から笑顔で眺めているのは塚田飼育員。
危険な作業を安全な場所から見る、こんな楽しいことはありません。
ぶきっちょマンの僕がワニにロープをかけられるのか?
夢中で紐を操り、ワニのプールに落ちそうになっております。
冷静沈着な横山さんがベルトを掴んで落ちないようにしてくれておりました。
現場では一切気がつかなかったんですよ。
今画像を見てホロっときてしまいました。感謝の気持ちでいっぱいです。
そして割とスムーズにロープかけに成功。
暴れるワニ、落ち着くまでそっとしておきます。
無事に箱に入りました。
そして今度は箱の中でワニをひっくり返し性別チェックです。
総排泄孔を開き中を見ます。
うん、間違いなく♀です。
そして、最後の難関、ワニに巻いたロープを外す作業です。
蓋をちょっとだけ開けて、ロープをひっかけます。
興奮気味のワニが口を開けておりますね。
緊張の瞬間です。
全ての作業は無事に終了。
ワニを運び出し、そのまま静岡へと移動します。
実にスムーズに、しかも人間もワニも安全に作業を終えることができました。
これも熱川バナナワニ園の方々のおかけでございます。
本当にありがとうございました。
そして後日、ワニ達も長旅を無事に終え、バナナワニ園へと到着したと連絡が入りました。
なんと♂との同居もスムーズにいったそうです。
本当に良かった。
来年は新爬虫類・両生類館が完成します。
今度はワニの移動を、我々で行わなくてはなりません。
でももう大丈夫です、蝦夷のクロコダイルハンターが誕生したんですからね。
あっぱれ!クロコダイルハンター!
ビバ!クロコダイルハンター!
ではおやすみなさい。