札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

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ワニの清掃。

マレーガビアル舎のプール清掃。

水洗い作業は上から行います。

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ホースを駆使し、ワニの「糞」を中心まで誘導し排水口に落とすのがアタクシの任務。

この作業、非常にゴルフ的なのです。

ホースをクラブ、糞をボールに見立て、排水口にカップインさせるスポーツ。

僕はこれを「ゴル糞」と呼び、日々紳士的な態度で挑んでおります。

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たかだか数個の糞に対して無駄な水道代はかけてられません。

基本バーディー狙いで、最短で作業を終えられるよう心がけています。

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しかしこれがはなかなか難しい。

水を当てても糞はなかなか思うような方向へは動いてくれません。

四方壁に囲まれた施設ですから、壁に当たった水が様々な方向へと流れ複雑な水流が起きているのです。

ベテランキャディさんもこの流れを読み切るのは無理でしょう。

たまに奇跡的にジェット水流が起こり、一気に排水口に吸い込まれていく事もありますが極めて稀です。

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せっかくカップ側まで寄せても、糞はそこでピタッと止まってしまいます。

そうこうしているうちにポロロッカのように水が逆流してきて、あらぬ方向へと押し流してしまうのです。

四十路の男が一個の糞に翻弄されています。

いつも冷静な僕もこの時ばかりは「もー!」と叫びながら作業しています。

そして観覧通路では来園者の皆様もこの光景に興味深々、糞の行方をじっと見守っています。

ギャラリーが注目する中、プレッシャーを感じながらの糞流し。

僕も期待に応えるべく、糞の形状、水を当てる角度、水流を読みながら作業を進めます。

そしてやっとのことでカップイン。

ギャラリーの方々の顔はニヤっとゆるみ、同時に拍手が沸き起こるのです。

この時の僕たちの一体感といったら、言葉では伝えきれません。

まさに飼育係冥利につきるってやつですね。

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あ、ちなみに僕自身ゴルフの経験は一度もありません。

では。

逃避。

こちらはサイイグアナのオス。

僕が近づくと、こんな体勢をとります。

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おもむろに体を持ち上げ、両目を閉じ地蔵のように動かなくなるのです。

これはサイイグアナに限らずイグアナの仲間によく見られる行動で、こうなったら触っても全然OK。

この機会に体のチェックをしたり、毛はないけどブラッシングしたり、脱皮の皮を剥いたりといろいろケアができます。

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奴さんもうっとりと両目を閉じて、されるがままです。

そしてこの様子を見た人は100人いたら105人が同じことを言います。

「イグアナとても喜んでますね!すごく気持ち良いんですね!」って。

でもこれ違うんです。実はこの行動「逃避」の反応なのです。

つまり「嫌だなー早くどっか行ってくれないかなー」的な状態。

ただ逃げたり、攻撃したりするほどの拒絶ではなく「我慢はできるけど早く終わらないかなー」くらいの拒否具合。

ちょっと苦手な親戚のおじさんと二人で食事するくらいの感じだと思います。

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何度も言ってますが、人間ってどうしても自分たちの「モノサシ」で他種を見てしまいます。

人間のフィルターを通して動物の状態を安易に判断するということは、

「適正なBMIを知るために、自分の身長や体重を平行四辺形の計算式に当てはめている」くらいトンチンカンな行為なのです。

 

人が思っていることと、実際に動物が感じていることが全く正反対だなんて、ほんと恐ろしいことです。

だから動物と携わる者は客観性を持ちつつ、それぞれ適切な形で無償の愛を提供していくことが大切ですね。

人間と近い種ならまだズレは小さいかもしれないですが、遠ければ遠いほど事は深刻になります。特に爬虫類や両生類。

皆さまも爬虫類両生類館に来る際は自分のモノサシを捨て頭の中を真っ白にしてきてください。彼らの違った一面を垣間見る事ができると思います。

 

 

 

 

 

産卵が早すぎる。

驚いたことに展示場のエゾサンショウウオが産卵しちゃいました。

オス個体が澄ました顔で放精しています。

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例年より2ヶ月くらい早いです。

何かの暗示でしょうか。

きっかけとなった外的要因があるはずなのですが、正直なところよくわかりません。

とりあえずこのまま経過を見守りたいと思っております。

環境のリズムを管理し、イメージ通りに住人たちを誘導する。

でも実際はイメージ通りに事が進まないこともしばしばです。

こんなに身近な生物なのに、僕らは彼らの一部分しか理解できていないんですよね。

これからも380%楽しく観察していきたいと思っています。

 

冬眠2。

「冬眠展示」を行っているのは北海道産種だけではありません。

世界で冬があるのは北海道だけじゃないですからね。

ここの爬虫類両生類館では厳しい冬を再現するだけではなく、それぞれの地域に合わせた「柔らかい冬」を提供することもできます。

例えばこれ。

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オーストラリア南東部代表コウヒロナガクビガメ。

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現在水温は13℃、メスはわりと動きますがオスは1日の大半を底でじっとしています。

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続いてもオーストラリア代表のマツカサトカゲ。

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誰も気が付いていないと思いますが、実は冬眠状態です。

夏もじっとしていますが、現在は低温によって代謝が下がりじっとしています。

同じ「じっと」でも質が違うのですよ。

 

そして南アフリカ代表のアルマジロトカゲ。

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こちらも現在低温管理中です。

たまに岩の間から出てきますが、基本ほとんど動きません。

ちなみに夏場もほとんど岩の間から出てきませんが、現在の状況とはやはり質が違うのです。

 

そして中国南部、ベトナム代表のチュウゴクワニトカゲ。

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こちらはオス。

基本年中ここにいますが、夏場と比べると佇まいはかなり異なりますね。

目瞑って完全に眠っています。

 

とりあえずこんな感じで各々が冬を過ごしているわけですが、

冬と言ってもここは自然下と違いますから、風雪に晒されたり、アライグマの襲撃に遭うことはありません。

展示場内全体が冬眠に適切な状態になっているので、地面に潜り込む必要もなくどこで休んでも良いのです。

ベッドに行かなくても、ソファでも廊下でも本棚の上でもトイレでも土間でもどこで寝ても良いのよって感じなのです。

あと冬眠ってのは「代謝の低下」により不活発になる状態ですから、活動が完全に止まるわけではないんです。

野生のカメなんて水面に氷が張った状態でも、求愛したりしてますからね。

だから言わなきゃ誰も冬眠状態にあることに気が付かない。

あとエゾサンショウウオやキタサンショウウオなんて冬眠って概念すら通用しないです、餌も食べるし。

ほんと野生動物って偉大です。人間の偏ったモノサシなんかでは測ることはできませんね。

 

 

 

 

 

冬眠。

今シーズンも始まりました、円山動物園名物「冬眠展示」。

夏でもそれほど動かない爬虫類たちが、冬眠することでより動かなくなってしまうという斬新な「行動しない展示」。

皆様、本年もこの機会をお見逃しなきよう謹んでお知らせ申し上げます。

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北海道ゾーンは照明も最低限とし、薄暗い環境になっております。

爬虫類両生類たちが飼育下において健康を維持し繁殖を継続していくためには、それぞれの生息地の季節性の提供が必須です。

そのため北海道ゾーンでは展示しながらも「冬」を再現できるような施設の設計となっております。実に画期的なのです。

ヒガシニホントカゲとニホンカナヘビは完全に土に潜り冬眠していますので観察することはできませんが、

他のヘビ類は夏期と同様に不活発な姿を存分に堪能できます。

しかし夏場ですら姿を見せないシロマダラとジムグリに関しては、これまで通り非常に観察は困難ですので予めご承知おきください。

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早いもので、この斬新且つ画期的な展示も今年で5回目となります。

こちらの思惑とは裏腹に、世間では驚くほど話題になっておりません。

時代が追いついてくるまでもう少し時間がかかりそうですね。

これからもしばらくぶっちぎりで先頭を走り続けることになりそうです。

先を考えると若干気が重くなりますね、若干。

では。

 

 

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