札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

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カンボジアモエギハコガメの孵化

今年もカンボジアモエギハコガメの孵化に成功いたしました。


卵は3月6日に産卵されたもの。
http://sapporo.100miles.jp/zoo_honda/article/14

孵化したのは6月26日でございます。
今年は孵卵温度を高めに設定したためいつもより早めの孵化でございました。





カンボジアモエギハコガメはモエギハコガメの亜種でベトナムとカンボジアに生息しております。
中国では昔から食用にされてまして、現在では絶滅に瀕しているカメなんです。
特にアジア産のカメ類ってのは産卵数が少ない種が多いもんで一度個体数が減ってしまうと回復するのが困難なんですよ。

動物園の役割のひとつとして、「種の保存」があります。
特に貴重な種に関しては国際的視野を持って積極的に繁殖事業を行っていく必要があるわけです。
でもモエギハコガメはやたら飼育が難しく、繁殖はおろか長期飼育するのも困難な種。

このカメは1994年に動物商から円山動物園に25匹が寄贈されました。
しかし3ヶ月以内にほとんどが死亡、2000年の段階で♂♀各1匹だけが残りました。
大半の個体が餌も食わずに死んでいく・・・・・

とにかく現地でのストックや輸送状態が非常に悪いんですよ。
現地では食用ですから、狭い籠なんかに山積みにされて市場に並んだりしてるんです。
そんな過酷な状況の中ではすぐに病気になってしまいます。
んで日本に輸入されて来る頃にはすでに取り返しの付かない状態まで悪化しているわけです。
(最近ではかなり改善されたようで輸入される個体の健康状態も良いです)

生き残った♂♀のペア、でも健康状態は良くなかったですね。
痩せているし、頑固な偏食だし・・・
でもね、「このペアをなんとか復活させて、繁殖までもっていく!」
そんな強い決心で繁殖事業に挑んできたんですよ。

体重の増加、偏食の改善、繁殖に向けての体内リズムの再確立を2年かけて実施しました。
結果、2002年に初産卵、04年に初めて孵化に成功いたしました。
その後、2006年、07年と継続した繁殖を行っております。
現在はバックヤードにて6匹の個体を管理しております。
(左から、♀親、2004年産まれ、2006年産まれ、2007年産まれ)


ほんとは展示して皆さんにも観察してほしいところなんですが、この種はなにせ神経質。
2005年に一度展示を行ったのですが、それが原因でこの年は繁殖しませんでした。
環境の変化で繁殖リズムが狂ってしまったんですね。
それぐらい微妙な条件が必要なんです。

この種は世界的にもみても繁殖例は少ないです。
国内の施設では円山動物園のみが繁殖に成功しております。
飼育技術者の立場から種の保存に貢献。
まさに飼育係冥利に尽きるって感じでございますね。

この種は貴重な種、展示よりも繁殖を第一に考えております。
でも近いうちに何らかの形でお披露目したいと思っていますので、それまでご理解よろしくお願いいたします。




最安値

動物園でもっとも餌代が安い動物ってなんだべかなー?しばし考えておりました。
いろいろ悩みましたが、結局「夏場の爬虫類」という結論に達しました。
まあ餌用のコオロギとかなり接戦だったんですけどね。

爬虫類館には動物食、植物食、雑食とそれぞれ食性の違う種が暮らしております。
その中で頻繁に餌を与える必要があるのは植物食の種、イグアナとかリクガメね。

どんな餌を与えてるかというとこんな感じです。



左側がアカアシガメ、キアシガメ、手前がイグアナ、奥の2つはクモノスガメね。

まあこの日はペレットや少量のリンゴなんかも加わっていて豪華メニューだったんですが
基本メニューはタンポポ、オオバコ、クローバー、ハコベ、そしてハイビスカス。
そう、これ全て野草類なんですよ。

植物食の爬虫類には低カロリー、高繊維、高カルシウムの餌が必要なんです。
野草類は育った土壌にもよるけど、市販の葉野菜よりはこれらの条件を満たしております。
なんせ「タダ」だしね。

だから春から夏はこの野草類のみを利用してるんです。
市販野菜は使っておりません。
新鮮な野草をその都度刈ってきて新鮮な状態で与えているんですよ。
園内そこら中に生えてますからね。
他の飼育員にとっては邪魔な雑草、でも僕にとっては宝みたいなもんなんです。

ハイビスカスは爬虫類館と隣接している熱帯植物館に年中咲いております。
しぼんでしまった花を摘んで餌にしてるんですよ。

んで最後にビタミンD3入りカルシウム剤をふりかけて完成。
このカルシウム剤のみ何円かかかっちゃってるんですわなぁ。
それで餌用コオロギが食ってる煮干の欠片とどっちが高いか悩んじゃったんですよ。

まあとにかくこの時期の爬虫類は餌代がかかってないのです。
動物食種に与えているコオロギやネズミは自家生産ですしね。
雑食性種に与えている果実類だけは多少のお金はかかってますが、まあそれでも微々たるもんです。



そんなこんなで僕の日課はこの雑草刈から始まります。
カマを持った飼育員が園内を闊歩しておりますが、「ナマハゲ」ではありません。
特に泣く子も探しておりませんので、どうぞ怖がらないでください。

もし見かけた際は
「おっ今日も雑草刈りですな!」とか「よっ蝦夷の雑草ハンター!」などと声をかけていただければ幸いです。


花びらのように花びらを囲むクモノスガメたち。
決して小食な種ではありません。

マムシの捕まえ方&危険動物にはマイクロチップを

爬虫類館唯一の毒蛇、「マムシくん」に個体識別のためマイクロチップを挿入しました。
危険動物に指定されている種を管理する場合、法律で義務付けられているんです。
まあ、マムシは毒蛇なもんで危険動物に指定されているんですよ。

ヘビの毒にはね、大きく分けると「神経毒」と「出血毒」ってのがあるんです。
例えばウミヘビやブラックマンバといったコブラ科の種はほとんどが「神経毒」。
んでマムシやハブ、ガラガラヘビなんかのクサリヘビ科の種は「出血毒」ね。

まあどっちが危険かってのは一概には言えないんだけど、やっぱむごいのは出血毒。
神経毒は神経系に作用するので適切な治療を受ければ後遺症も少ないみたい。
それに比べ出血毒ってのは組織を破壊していくから、ものすごく痛いし患部はひどい状態になるのね。

実はマムシの毒ってかなり強いんですよ、沖縄のハブよりも強いんです。
でもね、体が小さいから注入量が少ないんです、だから咬まれて死ぬようなことは少ないんです。
反面ハブは毒は弱くても体がでかいんで注入量が多い。
んで致死量に達して死亡例が出てしまうんですよ。

僕は咬まれたことないけど、咬傷事故なんかがあるとたまに病院から依頼がくるんです。
何ヘビに咬まれたのか調べてってね。

咬まれた人は大抵ヘビに詳しくないからわからないんですね。
ヘビを何種類か連れていって、直接見てもらうんだけど記憶が曖昧なんです。

だからお医者さんもどーしていいのか困ってしまうんですね。
マムシなら血清打てば良いんだけど、もし違ったら大変ですから。
患部がパンパンに腫れあがっていても確信がないから治療できないんです。

でもね、咬み傷を見ればすぐにわかるんです。
マムシは前に長い毒牙が一対あるんです、だから患部には毒牙の痕が残るんですよ。
小さい穴が二ヶ所あったらマムシです。他のヘビの場合はこうはならないですからね。
それに、通常マムシ以外のヘビに咬まれても激痛や腫れの症状なんてでませんよ。

まあそんなこんなで出血毒のマムシくん、動物園には2匹おります。
マイクロチップを埋め込むのは獣医さんです。
とりあえず万が一噛まれても良いよう血清だけは準備されました。
なぜか一人分だけ・・・

マムシくんです



まずなにかで頭をきっちり押さえましょう。
慌てちゃダメですよ。



そして、素早く頭の後ろを親指と人差し指で掴みます。
頭の押さえ方が甘かったりとするとスルッと抜けて咬まれます。
素早く慎重にね。



そしてクネクネしないように尾を持ち体を伸ばします。
ここで獣医さんの登場です。
たぶん、一人分の血清ってのは僕のためみたいですね。



そしてマイクロチップの挿入です。
尾の付近に入れます。
作業は10秒程度、あっと言う間に終わります。



「ぶぎゅー勘弁してくださいよ」



ついでに古い脱皮の皮が残っていたので取ってあげました。


「このクソジジイ!今穴掘ってやるからそこに入れ!」(毒蝮三太夫・毒舌集より)

興奮覚めやらぬ日々よ

こんばんは、尊敬する人はオースティン・スティーブンスです。

GWも今日で終了。
たくさんの方々に来園していただき本当に感謝しております。
ありがとうございました。



そんなこんなで先日、決定的瞬間をとらえることができました。

最近、連日のヘビフィーバーで僕は常に興奮気味なんですよ。
その日も朝から爬虫類館で突然鼻血が出ちゃってね、それがものすごい出血なんです。
水のようにドボドボしたたり落ちちゃって、ほんと早く止めなきゃ死んじゃうなって感じでしたよ。

でも爬虫類館にはティッシュがなくて、血を流しながら代用品を探していたんですね。
ほんと最初はヘビでも鼻に突っ込んでおくかって思いましたよ、まじで。
シマヘビがサイズ的にもちょうどいいかなって。

そこで偶然に目に止まったのはカメの飼育ケースの蓋に使ってるダンボール。
これを薄く裂いて軟らかくすれば使えるなって思って蓋を取ったんですね。

「ん?」
そしたら中のカメがなんかもぞもぞしてるんです。
「おっこれは!」
すぐにカメラを構えましたね、もう鼻血なんか関係ないです。

そのカメはカンボジアモエギハコガメ、先日産卵したカメです。
http://sapporo.100miles.jp/zoo_honda/article/3
http://sapporo.100miles.jp/zoo_honda/article/14


オシリです、足でもぞもぞやってます。
穴を掘ってるんです。



おっ排泄孔が膨らんできましたよ。
いえ、まだまだわかりません、でかいウンコかもしれませんからね。
油断は禁物です。



出てきた!間違いない、これは卵でございます。
もう僕も興奮の絶頂ですよ。
鼻血はひたすらすすり続けることで凌いできたのですが、もう限界です。
これ以上、ニーズには答えられません、結局作業着の上着でツッペしました。

20070507-00.JPG

先っちょが出てきました。
なんかグロいですな。

20070507-01.JPG

もうちょいです。
切れそうです。

20070507-04.JPG

出た。
玉のような卵です。

20070507-06.JPG

足を交互に使い上手に埋めていますね。


20070507-05.JPG

10分後、きれいに埋めてしまいました。
そして上から土を踏み固めています。
お疲れ様でした。


カンボジアモエギハコガメ、今年2回目の産卵でございます。
飼育難易度は非常に高く、繁殖例は世界的にも少ないです。
でもね、円山は毎年成功してるんですよ。
これは円山の誇りでもあるのです。

では、ばっははーい。

お得な情報

全国2千万人、雌雄判別ファンの皆様こんばんは。
今宵はお得な情報第一弾として、「ヘビの雌雄判別法」についてお知らせします。

まあ慣れた人ならちょっと見れば、すぐに雌雄の違いは区別できるのですが
今回は確実に見分ける方法を紹介したいと思っております。

今回お送りする情報は皆さんご存知、2大雌雄判別法の一つ「プロービング」です。
プロービングをするには当然この道具が必要ですね。
はいこれ


「セックスプローブ」です。
細いのから太いのまで5本、赤ちゃんから大蛇まで幅広いニーズに合わせ取り揃えております。

ではさっそく使ってみましょう。
本日雌雄判定を受けるのはこのお方


極悪面のヨナグニシュウダ♂(じゃあしなくて良いじゃん)
日本最西端の島与那国島に生息する貴重なヘビです。
今回繁殖計画を実行するにあたり雌雄判別を行ないました。

シュウダってのは「臭蛇」って書きます。
興奮させるとものすごく強烈な臭い汁を出す蛇なんです。
手についたら大変、洗っても簡単には落ちませんよ。
性格はいたって極悪。
顔を見てください、ヘビ業界においてもこんな悪人面はそうそういません。

んで巨大です。2m近くあります。
しかもでかいくせに動きが早い。
捕まえると頭を振り乱し、強烈な臭い汁を撒き散らしながら、あたり構わず噛み付いてきます。
ほんと最悪です。
でも僕はこのヘビが死ぬほど好きなんですね。


まずヘビを捕まえて尾の部分を引っ張り出し、「総排泄孔」をこちらに向けます。
あっその前に総排泄孔について説明しますね。

「ヘビの肛門はどこにあるんですか?」ってよくお客さんに聞かれます。
ヘビには穴が一つしかありません。
糞も尿も産卵も交尾も全てその穴で行ないます。
一つの穴がすべての役割を果たす、だから「総排泄孔」なのです。

んでプローブをこの総排泄孔に差し込むんですね。


まあ、どっからどう見ても♂なんですけど一応実施いたしました。
プローブが差さっている場所が「総排泄孔」ね。
ここからウロコの形状が変わっているのわかります?
画像上側が尾、んで下側が腹。
つまりヘビはここから腹と尾が区別されるんですよ。



脇の方から尾の方へゆっくりと差し込みます。
腹側に差したらダメですよ、腸が破けます。

ゆっくりゆっくりクルクル回したりしながら止まるまで差し込んでいきます。
んで止まったら抜いてくださいね。


ここまで入りました。
間違いなく♂です。
♂の場合、総排泄孔の中に生殖器が入ってます。
その分スペースが広いんですね、だからプローブが深く入るんです。
♀の場合は生殖器がありませんからスペースが狭い。
だからプローブは少ししか入りません。

んで♂の場合、生殖器があるから総排泄孔の下側が太いんです。
♀はそれがないので総排泄孔から下が急に細くなるんですねー。
これが外見からの雌雄の見分け方です。

次回は2大雌雄判別法の2つ目、「ポッピング」についてご紹介いたします。

では知って得する情報でした。
急な出張の際などに是非お役立てください。

注) ちなみに今こうしてブログを書いてる時も手がものすごく臭いです。
   吐き気がします。
   シュウダを扱う際は必ず手袋をはめましょう。

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