札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

『爬虫類館』カテゴリーの投稿一覧

ミスターユリウス。

コモドオオトカゲと共に技術指導のため来札した、タマンサファリのユリウス氏。
彼との奇妙な生活が始まって10日がたちました。
なんせ寝る時以外はほぼ一日中一緒に過ごしていますからね。



すっかり五郎さんみたくなってます。
南国から来たのに「北の国から」スタイル。
雪を見るのも初めてで、粉雪舞うたび写真を撮りまくっております。

ユリウスはコモド諸島産まれ、そう、生粋のコモドっ子なのですよ。
幼少の頃からコモドドラゴンを身近に感じ、非日常的な日常を過ごしてきたわけです。
タマンサファリの飼育員となって13年、僕と同期です。

奥さんと幼い娘さんを国に残し、言葉の通じない遠い異国へと一人でやってきたユリウス。
すごく謙虚で、シャイで真面目なユリウス。
そんな彼にとってここでの生活は大きなストレスでしょう、心情は痛いほどわかります。
僕も以前ニューヨークに行った際、所持金も少なくどうしていいかわからないまま夜の街をさまよいました。
挙句のはてにハトの餌を自販機で買い求め、涙ながらに飢えをしのいだ経験があります。
あの大都会で食いぱっぐれるくらいのチキン野郎だったわけです。

彼との生活で大変なのは、やはり言葉でしょう。
彼はインドネシア語しか話せません。
通訳の人が付く日もありますが、付かない日も多々あります。


彼との生活を豊かにするための必須アイテム。
常にこれを持ち歩きお互い必死に伝えるべきことを伝えているのです。



最近の二人の様子。一日の大半はこんな感じです。
お互い辞書を開きながら、言葉を探しています。

ユリウスがおもむろに辞書を開いた時は、僕に何かを伝えたいサイン。
言葉が見つかるまで15~20分くらいかかり、僕もそれをじっと待ちます。
彼から発せられる情報は、今後のコモド飼育にとって非常に重要なことですから。

そしてやっと出てきたセリフは・・・「今日は雨ですね」
僕は「そうだね・・・・」
そんなユリウスがとっても愛おしいです。

でも最近は、めんどくさいのか開き直ったのか、無理はせず二人で鼻唄を歌いながら過ごしています。
そして疲れたら無言、長時間の沈黙も全然へっちゃらです。
無言でも長時間一緒に過ごせる関係、そう、ある意味家族になったのですね。



職場のみんなからも愛されています。
特に女性陣の人気者。
僕と二人で居る時は決して見せない笑顔ですね。

コモドオオトカゲに会いに来た際は是非ユリウスにも声をかけてください。
彼も喜ぶと思いますよ。

スラマッシアン (こんにちは)
クナルカン  (はじめまして)
ナマ サヤ ナオヤ (私は直也です)
テリマカスィ  (ありがとう)
サマサマ (どういたしまして)

これくらい覚えておけば大丈夫です。
皆様のお越しをユリウスと共にお待ちしております。

コモドオオトカゲは丸顔族。



コモドが来て1週間が経過、2頭とも落ち着いております。
んでもって先日、初めての給餌を行ったんですよ。



タマンサファリでは1週間に一度、ニワトリを与えているんですね。
ニワトリ1羽をぶつ切りにして2頭に分けて与える。
ほんとは餌の質と量は変えていきたいんだけど、しばらくはタマン方式をそのまま引継ぎたいと思っています。
20081106-02.JPG

とりあえず2頭とも食べてくれたので一安心です。
でも2頭とも肥満ぎみでございます。
飼育下育ちだなってのがすぐにわかる体型ですね。
オオトカゲってのは餌の乏しい環境の中で進化適応してきた種類。
だから餌の豊富な飼育下では容易に太ってしまうんですよ。
でもこのプロポーションだけはもうちょい何とかしたいですね。
僕はね、動物のプロポーションにはめちゃくちゃうるさい男なんですよ。
飼育下の動物達って本来の美しいプロポーションを保っていないんですね。
ほんと別の生き物じゃないの?って思うこともしばしばあるんです。

「精神的、肉体的な健康を考慮した上で、本来の美しい体型を保たせる」
これは僕が動物を管理する上で最も重要視していることなんですね。
特にカメなんて適切な管理をしてないとすぐに甲羅が歪んできちゃいます。
甲羅が一度歪むと2度と元には戻らない、失敗は許されないわけです。
日々の飼育管理が単なるルーチンワークでは絶対に達成できないことなんですよ。
皆さんがいつも見ている動物園の動物達、実際は全然違う印象を持っているかもしれません。


でも飼育下産まれのコモドはほんとに温厚ですね。
触っても全然平気、ちらっと横目で見てくるだけです(そのチラ見がなんとなく怖い)。
大きくて強い動物ってのは往々にして温厚で扱いやすい傾向があります。
怖いものがないから、警戒心も薄く、ある意味鈍感で精神が安定してるんですね。

20081106-04.JPG

来園者からも「かわいいー」って歓声が飛んでおります。
ほんと今まで爬虫類館では聞いたことないセリフですよ。
うん、たしかにコモドはかわいらしい顔つきなんです。
それは他のオオトカゲよりも鼻先が短く、顔が丸いからね。
ほんと丸顔族は得ですよ、みんなにかわいがられるんですから。
レッサーパンダなんてそれの最たるものですよね。
爬虫類だったら、リクガメ類とかシシバナヘビとかかな。
反面、ウマヅラコウモリやインドガビアルといった面長族はちょっと厳しいな。
人間ってのは無意識的に丸顔でフワフワしたものを愛おしいと思うようだから。
僕はみんなとは好みがちょっと違いますけどね。



毎週土日は「コモドオオトカゲのポイントガイド」もやっております。
皆さん、是非見に来てくださいね。
僕だったら二万回くらい見に行きますよ。
世界の宝が円山にいるんです・・いまだ信じられませんよ、僕は。

インドネシアの至宝ご来園。

いやーみなさん、とんでもないことになってしまいましたよ。
20081101-00.JPG

その日は突然やってきました。
とうとうきてしまった・・・夢にまで見たこの日・・・・
20081101-01.JPG

非現実的なことが現実になった瞬間・・・・
20081101-02.JPG

OH MY GOD!
http://www.city.sapporo.jp/zoo/topics/topics2-146.html
そんなわけで、世界最大のトカゲ、コモドオオトカゲのペアがインドネシアからやってきました。
インドネシアがこのトカゲを国外に出すのは異例なことです。
現在日本でコモドが見れるのはここだけ!
なんてことでしょう!コモドを管理できるなんて誰が想像できたでしょう!
ありえない!ほんと超YPです!
20081101-03.JPG

大人の太ももより太い尾。
もしこれで叩かれたら、脳挫傷確実です。
20081101-04.JPG

例えようのない巨大な足。
ほんと参りましたよ。ほんと超YPです。
20081101-09.JPG

全身からオーラが出まくりです。
世界の宝がここにいるのです。
20081101-06.JPG

夫婦仲良し。
20081101-07.JPG

技術指導のため、トカゲと共にやってきたユリウスさん。
インドネシア、タマンサファリの飼育員です。
スラマッパギー。
20081101-08.JPG

本日より一般公開です。
是非皆様会いにきてくださいね。
この機会を見逃すと人生の3分の2を損することになります。
20081101-05.JPG

ほんともう信じられない!
ほんと超YPです!



※超YP(チョー・ヨンピル) 

蛇眼力を研ぎ澄ませ。

皆様ご無沙汰でございます。
すっかり紅葉一色、あき竹城一色の季節になりましたね。

フリーフライトも再開しましたので、是非動物園に足を運んでくださいね。
http://sapporo.100miles.jp/zoo_yoshida/article/277
セーベルの死という大きなダメージもありましたが、それを乗り越え精進していきたいと思っております。

いやーでも今年はほんと「ヘビ年」ですよ。
とにかく市民やマスコミからヘビに関しての問い合わせや種の鑑定依頼が多かったんですね。
「変なヘビを見かけたので見て欲しい」「庭先にヘビがいるんだけど毒蛇かもしれないから鑑定して」などなど。
マムシのアルビノもやってきたしね。

北海道に生息しているヘビは5種類。
これを瞬時にしかも確実に見分けるには研ぎ澄まされた「蛇眼力」(じゃがんりき)が必要です。
「蛇眼力」の定義は「いつでも、どこでも、少ない情報でも、瞬時に、確実に見分ける」でございます。
皆さんも是非一度、広辞苑で調べてみてください。

これは長年ヘビと関わっていても簡単には鍛えられないんですよ。
「たった5種類なのに?」って思うかもしれないけど実際は容易なものではありませんのよ。
ではこれから6枚の写真を見てもらいます。何ヘビか当ててみてくださいね。
あなたの「蛇眼力度」がわかりますよ。















何ヘビかわかりましたか?
正解は全部「シマヘビ」です。
一枚目は典型的なシマヘビ、わかりやすいですよね。
でもシマヘビといっても個体差も激しいし、幼体と親も全く外見が異なるんですね。
だから典型的なシマヘビを知っているだけでは、判別は難しいわけです。

以前ね、ベテランのヘビ飼育者とヘビ観察のためフィールドに出たんですよ。
んで1匹のヘビを発見したんだけど、すぐに石の間に隠れちゃったんですね。
観察できたのは尾の一部だけ。

僕はすぐに「あー今のはシマヘビだったね」って言ったんですよ。
そしたら彼は「なんで今のがシマヘビなの?」って聞いてくるわけです。
「いや、なんでって・・シマヘビだからシマヘビなんだけど・・・」と僕。
その答え方が気に食わなかったのか彼ったらすっかりご機嫌斜めでね。

彼の場合、シマヘビと判断する時は「体に4本のラインが入ってて・・目が赤くてうんぬん」って感じなんですよ。
でも僕はそんな図鑑ちっくな判断はしないんですね。
だって僕にとっては親兄弟並みに身近なものだから理屈抜きにすぐに判断できるわけですよ。

例えば目の前を自分の父親がちらっと横切っても皆さんはすぐに「あっ親父だ」って判断できますよね?
「七三分けに迷彩のバンダナ、2タックのケミカルジーンズにサスペンダーを付けてたから親父だ」なんて判断はしないでしょ?
だから「どうして親父ってわかるの?」って聞かれても困惑するだけ。
そう、科学的ではないけどそこに理屈はないんですね。
実際フィールドでは、体の一部しか観察できないことも多々あるわけです。
そんな少ない情報であっても種を特定できないといけないわけですよ。

バードウォッチングの世界でもよくありますね。
ちらっと横切る鳥のシルエットを見るだけで「今のはハイタカの♂だな。」とかすぐに種を特定できる。

昆虫の世界もそう。
うちの猛獣担当の田岡飼育員はハチのスペシャリスト。
はるか頭上を飛んでる小さなハチを見て「あれはなんちゃらハチの♂だよ」って。
瞬時に状況を判断して、無意識的に種を特定できちゃうんですね。
ほんとすごいですよ。

あらゆる環境であらゆる個体を観察してきたものだけが持てる力。
それが「蛇眼力」です。みなさんも是非鍛えてみてくださいね。
蛇眼力を鍛えても社会にどう貢献できるかはわかんないけど、人生がより豊かになりますぜ。
レッツ ロックンロール!













マムシで覚える遺伝学。

こんばんは、毒蝮三太夫です。
今日ね、朝一番にメールが届いたんですよ。
んで内容はたった一行、「マムシは卵を産みません」 それだけ。
なんのことやらさっぱりわからず、「おっ、新手のギャグだな」くらいにしか思ってなかったんですよ。
そうこうしてたら、さらにメールが数件。相手は全国に散らばる知り合いの飼育員達。
内容はすべてマムシの件・・・・
速攻でパソコンを立ち上げ、速攻で検索。
はいはい、やっとわかりました。この記事ですね。
http://mainichi.jp/hokkaido/news/20080912hog00m040002000c.html
マムシは胎生で直接子ヘビを産みます。
だから「産卵の兆候」という表現は不適切なんですね。
なぜこのような記事になったのかはわかりません。
でも間違った情報が伝えられることは非常に残念なことです。


でもこのマムシ、本当に美しいですよね。
アルビノってのは、突然変異や劣性遺伝により先天的に色素が欠乏している個体のことを言います。
特定の種においてはペット用として盛んに作出されてるけど、野外で見つかることは非常に稀、めちゃくちゃ珍しいですよ。
しかもこの体色、目立ちますから外敵に狙われやすいというリスクも考えられます。
まあ、マムシは夜行性だからこの個体もここまで生き残ってこれたのかもしれませんね。

んでこの個体、たぶんお腹に子ヘビを宿しております。
マムシは夏から秋にかけて交尾をし、翌年の秋に出産します。
人間並みに妊娠期間が長いんですよ。
だからね、この時期に捕獲された成♀の場合、妊娠していると考えて間違いないわけです。
そんなこともあって、展示は出産を終え、餌付けを済ませた後に開始いたします。
ご了承くださいね。

ではどんな子ヘビが産まれると思いますか?半分白いヘビ?
産まれてくる子ヘビは、ノーマルのマムシです。普通の色。

アルビノってのは劣性遺伝するんですね。
つまり一世代目では、アルビノは表現されません。
でも産まれてくる子ヘビ達はアルビノ因子を持ってるんですよ。
見た目はノーマルだけど半分アルビノって感じね。
こういう個体を「アルビノへテロ」って言うんです。

そして産まれたアルビノへテロを育てて、親のアルビノと交配させます。
こういうのを「戻し交配」っていうんですね。
産まれてくる子ヘビは、2分の1がアルビノで残りがアルビノへテロです。
そして、さらに育ててアルビノ同士で交配させると、今度は産まれてくる子ヘビ全てがアルビノとなるわけです。
このようにしていけば、アルビノを固定することができるんですね。
この過程で別血統の個体も繁殖に参加させていけば、遺伝的な問題も解決できます。

ちなみにアルビノへテロ同士で交配させると、4分の1がアルビノ、残りの4分の3はヘテロとさらにアルビノ因子を全く持たないノーマル個体が産まれます。
このような個体を「66%ポッシブルヘテロ」と言うんですね。
例えば4匹の子ヘビが産まれたとします。1匹はアルビノで残り3匹のうち2匹はヘテロで1匹はノーマルなんです。
この3匹、見た目はノーマルでどれがヘテロなのかは区別ができません。
だから「66%の確立でヘテロが含まれてますよ」っていうことなんですね。

学生時代習いましたよね?「メンデルの法則」。
授業では全く理解できなかったけど、ヘビを飼えばよく理解できますよ。


「遺伝はヘビで覚えよう」
貴重な個体を提供していただいた、土田さんに感謝いたします。
大切に飼育しないとね。
あー焼酎にされなくて良かったわ・・まじで・・・

pageTop