2010年12月 の投稿一覧
会いたくない人達。
Posted by zoohonda on 2010年12月30日(木) 17:27
僕ら飼育員にとって最も身近な秀才って言いますと、やはり獣医さんですね。
爬虫類館には頻繁に獣医さん達がやってくるんですよ。
でも本当はあまり来て欲しくないんですね。
獣医さんが来るってことは、検査や治療を行うわけです。
つまりそれだけ問題を抱えている個体がいるってことなんですよ。
飼育員にとっては「獣医いらず」ってのが一番幸せな事なんですね。
現在現場で動いている獣医は伊藤、石橋、高江洲の3人です。
ほんと優秀な方達なんですよ。
なんせ「メガネ率100%」ですから。
計算も速いし、英文を書かせても一行目からいきなり関係代名詞を使ってきますからね。
ほんと、僕は憧れますよ、関係代名詞に。
とにかく一緒に居ると民度のレベル差に画然とさせられますね。
僕なんか祐川飼育員とよくふざけているんですよ、頭を思いっきり叩き合ったりしてね。
そんな時もふと振り向くとですね、獣医さんの視線を感じるんですよ。
何とも言えない、特定外来生物でも見るような視線をね。
もうぐうの音も出ませんです、はい。
ただね、そんな獣医さんにも重大な弱点があるんです。
そうそう簡単に天も二物を与えないってことですよ。
とりあえずですね、爬虫類館に着いた途端、温度差によってメガネが曇るんです。
確実に100%曇るんですよ。
生き物達で足の踏み場もない爬虫類館、ここで視界が遮られるのは非常に危険ですからね。
カメの水槽なんかにつまずいて転倒する恐れもあるのです。
手には注射も持ってますし、その中には虫下しの薬も入っているわけですよ。
転倒の際にこれが刺さってしまったら、ほんと一大事ですよ。
お腹がすっきりしてしまいますからね。
だから僕はいつも心配してるんです。
薬を操る石橋獣医師、趣味は庭いじりです。
爬虫類館ではたくさんの生き物達を管理しています。
こんだけ居りゃ具合の悪い子も中には居るわけですよ。
獣医さんの存在がないととんでもないことになってしまうんですね。
ほんと日頃から感謝していますし、極めて稀にジュースをごちそうしたりもしてるんです。
多忙な獣医さんを何度も呼びつけたりするのは本当に気がひけます。
だから今後はもっともっと飼育管理を徹底して獣医さんの負担を減らしていかなくてはなりませんね。
もう最終的には獣医さんが失業するくらいがんばらないといけません。
そんな日が来るまで、今後ともよろしくお願いします。
ダイジェスト2(繁殖もろもろ)
Posted by zoohonda on 2010年12月21日(火) 21:34
昨年から今年にかけて白菜たちと共に冷蔵庫内で冬眠していたヘビ達。
その後は順調に目を覚まし、交尾にいたりました。
シマヘビ黒化型(カラスヘビ)の交尾の様子でございます。
このペアはですね、どちらとも動物園生まれの個体なんですよ。
オスは2歳、メスは3歳でございます。
身近な種こそ累代繁殖を行い、技術確立をしていかなくてはなりません。
これは円山動物園は虫類館における基本軸の一つとなっております。
こちらは毎年恒例のカンボジアモエギハコガメ。
無事に孵化し、生育しております。
でももう同僚達は何も言ってくれなくなりましたね。
爬虫類担当という立場上、関心持ってもらえないのには慣れてるんですよ。
でも無視はつらいですね。
こんなに無視されたのは中2の時以来です。
でも皆さん見てください、カメを乗せてる僕の手のひら。
そう、完璧なマスかけ線です。
たぶんもうすぐ訪れるであろうハッピーな出来事を予感させてくれます。
ちなみに生命線は激短です。
そしてチュウゴクワニトカゲ。
今年は2個体がご懐妊。
でも残念ながら1頭は出産間近で死んでしまいました。
お腹には7匹の子供がいたんですよ。実に無念です。
やっぱりこの種に関しては年中暖房下での繁殖継続は困難です。
もう1頭は、現在低温暗所にて管理しております。
もうちょいしたら温度を上げて出産にもっていこうと思っているんですよ。
その方がより安定した繁殖を行えると思うんですね。
とりあえずババッと紹介してきましたが、ネタはまだまだたくさんあるんですよ。
また近々ここでお会いしましょうね。
ではでは。
あーキナコネジリ食べたい。
クロコダイルハンター本田。
Posted by zoohonda on 2010年12月9日(木) 21:16
今秋、マレーガビアル2頭を繁殖目的のために熱川バナナワニ園さんに搬出したんです。
うちの個体は全部♀ですので、このまま管理していても繁殖はできないんですね。
こんな希少なワニをそのような状態で置いておくわけにはいかないわけなんですよ。
積極的に移動を行い、繁殖を目指していく必要があるんですね。
でもね、そもそもうちの動物園は巨大なワニの捕獲経験がないんですよ。
だからどうやっていいのかもわからない。
最初は、フレディ・バー教授ばりにプールに飛び込んで、ワニの口を押さえ込んで捕獲するもんだと思ってたんですね。
もうまさに命がけです。
まあ当然、飼育員の間でも「誰が飛び込むのよ」という話になるわけですよ。
そして結果、「守る物がない」という珍妙なロジックにより僕がやることに。
まあ担当者だから仕方ないですね。
僕は「笑顔が素敵だから」という理由で吉田飼育員を推薦したんですけどね。
でも結局、搬出時にはバナナワニ園の方が出向いてくれることになりましてね。
捕獲法を伝授してくれることになったんですよ。
ほんと心からうれしかったです。
今回は完全非公開で行われた搬出時の様子を、克明、且つスリリングに、しかもちょっと膨らませてお伝えしたいと思います。
まずはワニ5頭を片方の展示場へ全て移動します。
そして輸送箱を空いた展示場内へ運び入れるんですね。
この箱は両端が落とし扉になっているんですよ。
勇敢な僕はこの時すでに膝を負傷してましたからね。
普通に歩いていたら、植物の根っこに引っかかって擦りむいちゃったんですよ。
ほんと名誉の負傷と言っても過言ではありません。
そして、両展示場の仕切りに箱を備え付け、ロープを通します。
僕はこの時すでに場外におります。
完全な一傍観者です。
負傷したんですから無理もありません。
不安そうな伊藤獣医師。
なんせ初めての経験ですからね。
そしていよいよ捕獲です。
バナナワニ園の横山さんと浜野さんが作業に入ります。
実に勇ましく頼もしく、僕は少し鳥肌が立ってしまいました。
なんせ日本で最もワニを知り尽くした方々ですからね。
安心して拝見させていただきました。
まず先がワッコになったロープをプールへと投げ込みます。
そしてカギ状になった鉄棒で引っ掛けながら、ワニの首を通しタスキ掛けにするんです。
うまく引っかかりました。
後はワニの動きを見ながら、箱へと引っ張り込むのです。
ワニが完全に箱に入った時点で作業に加わる僕。
カメラは全てを捕らえております。
1頭目の捕獲は無事に終了。
祐川飼育員もうれしそうです。
そして2頭目の作業、いよいよ僕の出番でございます。
負傷した膝をかばいながらの捕獲です。
ロス五輪での柔道山下選手を彷彿とさせます。
そして外から笑顔で眺めているのは塚田飼育員。
危険な作業を安全な場所から見る、こんな楽しいことはありません。
ぶきっちょマンの僕がワニにロープをかけられるのか?
夢中で紐を操り、ワニのプールに落ちそうになっております。
冷静沈着な横山さんがベルトを掴んで落ちないようにしてくれておりました。
現場では一切気がつかなかったんですよ。
今画像を見てホロっときてしまいました。感謝の気持ちでいっぱいです。
そして割とスムーズにロープかけに成功。
暴れるワニ、落ち着くまでそっとしておきます。
無事に箱に入りました。
そして今度は箱の中でワニをひっくり返し性別チェックです。
総排泄孔を開き中を見ます。
うん、間違いなく♀です。
そして、最後の難関、ワニに巻いたロープを外す作業です。
蓋をちょっとだけ開けて、ロープをひっかけます。
興奮気味のワニが口を開けておりますね。
緊張の瞬間です。
全ての作業は無事に終了。
ワニを運び出し、そのまま静岡へと移動します。
実にスムーズに、しかも人間もワニも安全に作業を終えることができました。
これも熱川バナナワニ園の方々のおかけでございます。
本当にありがとうございました。
そして後日、ワニ達も長旅を無事に終え、バナナワニ園へと到着したと連絡が入りました。
なんと♂との同居もスムーズにいったそうです。
本当に良かった。
来年は新爬虫類・両生類館が完成します。
今度はワニの移動を、我々で行わなくてはなりません。
でももう大丈夫です、蝦夷のクロコダイルハンターが誕生したんですからね。
あっぱれ!クロコダイルハンター!
ビバ!クロコダイルハンター!
ではおやすみなさい。
ダイジェスト1(ヨウスコウワニ自然繁殖に失敗編)
Posted by zoohonda on 2010年12月5日(日) 10:40
皆様またまたお久しぶりでございます。
新爬虫類・両生類館の建設も順調に進んでおりまして、日々脳みそフル回転でイメージ作りに励んでおります。
いやーとにかく勉強しなくてはいけないことが多くてですね。
日々「受信」していかなくてはならない状況です。
ほんと発信するという概念を忘れつつありますよ。
発信を忘れた飼育員なんてものは、歌を忘れたカナリヤ、ギターを弾けない加山雄三みたいなもんです。
まことに遺憾でございます。
今年の繁殖状況ですが、なかなかお伝えすることができませんでした。
ここらで一気にダイジェストお送りいたしますね。
まずヨウスコウワニ。
今年も交尾、産卵にいたりました。
んで今年はですね、今まで取り組んできた「人工孵化」をやめ、「自然孵化」に挑戦したんですよ。
自然孵化ってのは卵を取り出さずに、そのまま親に守らせて孵化させる方法です。
新施設ができることもあり、自然繁殖に挑戦できるのは、今年しかないですからね。
そして結果は玉砕。
そしてこの環境での自然孵化は不可能であることも理解できましたよ。
温度、湿度の条件はちょっと処置をしてやれば何とかできる範囲だったんです。
一番の問題は通気性。
この場所は♀にとって産卵場所ではあるのですが、同時に休息と避難の場所でもあるのです。
巣としての認識はかなり薄いようなんですね。
そのため、ここで休息するたびに巣が踏み固められて、通気性が確保できず密閉状態となってたんです。
上っ面にあった卵はかなり良いとこまでいってたのですが、後半で力尽きたみたいでしたね。
ほんとまことに遺憾でございます。
やはり限られたスペースでのワニの自然孵化は困難の極みでございます。
来年は人工孵化に切り替えて精進したいと思っております。
では次回は「クロコダイルハンター本田直也」をお送りしたいと思っております。
お楽しみに。