札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

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2013年04月 の投稿一覧

季節の移ろい。

植物たちも季節の変化を感じ、形をどんどん変えております。
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冬は枯れていた夏緑性のシダたちも、新芽をぐんぐんのばしてきました。
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この美しい緑。
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こちらもただの枯れた枝だったのに今はこの通り。
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ここは北海道の両生類が暮らす室内の展示場です。
自然の野山ではないんですよ。
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人工環境でありながら、季節の移ろいそのものが再現されているんですね。
僕は設備機器をいじりながら温度、湿度、光、空気の流れをデザインしていくだけ。
あとは定期的な給餌と水換えのみでほとんど手をかけていません。
その中で暮らす動植物たちは自ら生命のリズムを整え、自然に繁殖しているのです。

まさにミニ北海道がここにあるのですよ。
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何だか切なくなるくらい地味な展示ではありますが、是非ホッキョクグマの双子と抱き合わせで会いにきてください。

タピオカ風に誘われて。

休日といえばだいたい朝から晩までyoutubeで飛行機の離着陸の映像を観て過ごしているんですが、そんな僕でもこの時期になると両生類の産卵を確認しに、近所の森へ夜な夜な出かけるようになります。


残雪残る野山。

こんなちょっとした水たまりがあちこちにありましてね。
毎年エゾアカガエルやエゾサンショウウオが産卵しているんですよ。


徘徊する♂個体。一足先に行動し、メスが来るのをじっと待ってます。



すでに卵がちらほらと。未受精卵なのか状態はあまりよくない感じですね。



こちらはエゾアカガエルの卵、プルップルですごく良い状態です。
僕はタピオカが大好きです。



とりあえず札幌市内にもまだこういった場所が多く残されています。こんな環境で生活できること自体とても素晴らしい。どんな豪邸や豪華なシャンデリアよりも、歩いて数分でサンショウウオやカエル、ニホンザリガニにすぐに会えることの方がよっぽど自慢になりますよ。とりあえずこの状態が今後も維持されて、そして地域の人達にこの素晴らしさを知ってもらい、そしてそこで暮らせることを誇りに思ってもらうことが何よりも大切だなとひしひしと感じる今日この頃です。

ジャノメイシガメ。

ジャノメイシガメは中国の一部に生息している絶滅危惧種。
円山動物園では密輸摘発によって税関に保護された1ペアを預かり、バックヤードにて管理しております。
もうかれこれ7年くらいたちまして、最近やっと繁殖が視野に入るまで成長したところです。
現在は繁殖行動誘起のため11℃に設定された恒温器内で冬眠しております。


このカメ、人が見ている前ではほとんど首を出さない神経質で陰気なカメでして、職場内での存在感も限りなくゼロに近いんです。
きっと社会においてもそうでして、生態系の大切な一員であるにも関わらず表舞台に出ることなく静かに絶滅していってしまう、そんな危惧の念を抱いてしまうほど地味な存在なのです。

でもね、僕はこういった存在と真剣に関わり、スポットを当てていくためにこの世に産まれてきたような人間です。
幼少の頃からアカレンジャーやガンダム、新田恵理には目もくれず、ひたすらミドレンジャーやアッガイ、スーザン久美子を愛してきた筋金入りのマイノリティ&アンチスター体質。
当然彼らのためならいつでもTシャツ一枚脱ぐつもりでいるわけです。

まずよく見てください、部分部分で見ていくと本当に美しいカメなんですよ。


甲羅の細かい放射模様、怪しく光る目の光彩と顔や首回りの色彩。
まさにオリエンタルビューティーコロシアム。



しかし一歩引いてトータルで見るとなぜか地味。ほんと不思議です。ある意味奇跡です。


まあでもいますよね、パーツは派手なんだけどなぜか地味な印象の人って。クラスに二人くらいはいましたよ。でも一見地味で目立ちはしないんだけど、実は隠れファンが多い。接近することで初めて感じ取れる魅力を持っていて、ふとした時に気になってしまう、そしていつのまにやら夢中になっている自分に気付かされるんですよ。
ええ、そんなカメです。

そしてもう一つ特徴があります。
クサいんです。
甲羅のケアの際など、何か刺激を受けると独特の臭気を放ってくるんですね。
地味な存在とは裏腹に、その臭気はいつでもぶれることなく強く主張してきます。
ヘビ類が臭腺から出す攻撃的な刺激臭とは違い、こちらはライトな異臭をそっと風に乗せて漂わせてくるんです。鼻粘膜にじわっと浸透してきて、あれ?なんかくさくない?ってな具合になんとなく周囲を気まずい雰囲気にさせてくれるんですね。ヘビ臭が「動の臭気」ならこちらは「静の臭気」といったところでしょうか。

そしてこの臭気が意外と強く脳に記憶されるんですよ。何でもないふとした時に「思い出し臭い」としていきなり漂ってくることがあるんです。個人的にけっこう苦手な臭いなもんで不意打ちによるダメージは若干ありますね。まあそんな「精神的残り香」という飛び道具までやってのける侮れないカメでもあるわけです。

そんな様々な魅力溢れるジャノメイシガメ、近い将来皆様に良い結果が報告できるよう精進したいと思います。

シミュレーション。

先日、アメリカの某世界的ドキュメンタリーチャンネルで「宇宙人が襲来してきたらどうするか」みたいなシミュレーション番組をやってたんですよ。






宇宙人が地球に攻めてきたことを想定して、様々な専門家がそれぞれの立場で真剣に対策を講じているんですね。

まあ国自体が豊かだって事もあるんだけど、それでもこんなどうでもいい内容を真剣に議論し、素敵な番組を作ってしまえる環境ってのがほんと素晴らしいなと思いました。やっぱこの国は強いなって。

実は僕もゾンビハザードが起きても良いように日頃から結構真剣にシミュレーションをしてるんですよ。まずはホームセンターに行って武器を集め、そして向かいのスーパーにたてこもって時を待つ、というシナリオです。

でもそれを知人や同僚や通りすがりの人に話しても大抵は「あ、そうっ」とか「それって何か意味があるの?」って言われるんですね。
誰も「それはおもいしろいですね」とか「危機管理能力が抜群ですね」とは言ってくれない。

で僕はいつも思うんですよ、この「何の意味があるの?」ていう思考が良くないなって。日本の野生動物系学問分野が発展していかない理由はまさにこの思考にあるなと論理を飛躍させてしまうわけです。

結局日本社会は、産業と結びつかない(金にならない)学問には予算が回ってこない、学校で学んでも「仕事として」生かせる場が少ない。野生動物系分野はまさにそうです。そんな地味なイモリを保全してどうするの?そんなトカゲを分類してどうするの?そんなヘビの生態を調べて何の意味があるの?ってな具合にね。もう夢も希望もない、それを言っちゃおしめーよっていう楔を打ち付けられるわけです。

だからですね、この番組のように”どうでもいいバカバカしいこと”と思われることにエネルギーを集約できる、予算と人材を集める事ができるというお国柄は絶対に強いと思うんですね。それが野生動物系も含め様々な学問がこの国で発展しているという要因の一部なんだろうなと。
そんなことを何となく考えている今日この頃でございます。


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