2015年12月 の投稿一覧
メキシコアカスジヤマガメ。
Posted by zoohonda on 2015年12月26日(土) 00:45
アカスジヤマガメという中南米に分布している非常に素敵なカメがいます。
爬虫類館のバックヤードにはそのアカスジヤマガメの基亜種である「メキシコアカスジヤマガメ」のペアが暮らしています。
甲羅は若干地味ですが、さすがメキシコ生まれだけあってミルマスカラスのような特徴的なフェイスと美しい四肢がルチャリブレって感じです。
陸生で草食傾向が強いのですが、生態の詳細な情報は無く非常に謎多きカメです。
ここではかれこれ5年ほど飼育しておりまして、小さかったオスも性成熟に達し、今年から本格的にペアリングを開始しました。
その後交尾、産卵と順調に進み、今は孵化を待っている状態です。
卵は体の割には大きくて、一回の産卵数は一卵です。これまで計3回で3卵を産みました。
しかしこの種、孵化がどうも厄介で、非常に曲のある感じがするのです。
というのもこの種の孵化日数を調べてみると、非常にバラツキがあり長いものだと1年以上という事例もあります。
そういうタイプは大抵、「ある環境変化」を経験させないと卵の発生が始まらないってのが多いんですね。
しかしその条件が何かは分からない。
とりあえず卵は高温高湿度状態で維持していたのですが、2ヶ月たっても結局発生は始まりませんでした。
僕もこれはさすがに無精卵だろと思い、卵のケアをやめてしまったんですね。
そしてそのまま放置すること一ヶ月後、その存在すら忘れかけていたのですが、そろそろ卵を処分しようと思って孵化器を覗いたところ・・・
ん?え?あれ?卵の一部が白く濁ってます。そうこれは発生が始まった合図です!卵は有精卵だったんです!
ではなぜ急に発生が始まったのか?
約一ヶ月間の放置によって卵の容器内はカラカラに乾燥していました。
そう、つまり乾燥に晒されたことによってスイッチが解除され卵の成長が始まったわけなんですね。
いやーびっくりしました。3ヶ月目にしてようやく発生開始です。
現在は再び湿度も上げて管理していまして、卵の成長も順調です。
このままいけば近い将来、ドスカラスのように美しい仔ガメが誕生すると思います。
慎重に観察を続けていきますね。
では皆様メリークリスマス。メリークリスマス、ミスターローレンス。
光の周期。
Posted by zoohonda on 2015年12月14日(月) 23:36
爬虫類両生類館では各ゾーンにごとに光周期を管理しています。
それぞれの季節性に合わせ日長時間の年変化を提供しているわけです。
例えば北海道産ゾーンの日長は夏季は最大14時間、冬季ですと最低8.5時間。
いま時期は16時で消灯、真っ暗です。
照明は蛍光灯とメタルハライドランプの2段階になってまして、メーン照明である蛍光灯は地下のタイマーで管理しています。
この蛍光灯は動物にとって有効な紫外線を照射する爬虫類専用のものを利用しています。
光周期は赤道やその付近の動物なら12時間、その他のゾーンは季節ごとに大幅に変わります。
特に繁殖予定種などが暮らすゾーンは、生息地とは異なるよりパンチの効いた光周期を提供しています。
野生とは異なる現環境において、新しいリズムを再確立することも重要ですから。
メタルハライドランプのタイマーは各ゾーンごとに設置されています。
メタルハライドランプは強い光と熱を放射するランプでして、自然界でいう「晴れの日」の再現です。
このランプは基本的に、蛍光灯より1時間遅く点灯し、一時間早く消灯しています。自然界でいう薄明状態の提供です。
いきなり暗くなったり明るくなったりという状態はいくら不自然な飼育下とは言え、不自然すぎますでしょ。
という感じでここの施設では温度だけではなく、同時に光の年変化も提供していきながら、動物達の体内リズムを整えていきます。
人間だけが「一定した変化のない安定した環境」が心地良いと思い込んでいるみたいです。
エゾサンショウウオ、旬な季節です。
Posted by zoohonda on 2015年12月7日(月) 00:19
エゾサンショウウオファンの皆様、おまたせいたしました。
展示場内の気温低下に伴い、エゾサンショウウオたちの水中への大移動(距離にして40cm)が始まりました。
これからはエゾサンショウウオをじっくり観察できる最も良い時期です。
日頃は隠れっぱなしの陰気な子たちも、これからはその魅力的な姿を存分に披露してくれますよ。
ここでは外気を利用し飼育環境を作っているので、現在の温度は7℃前後で水温は9℃前後まで低下。
複数のオスはすでに繁殖期のみに現れる体型変化も見られておりまして、非繁殖期には難しい雌雄判別も非常に容易です。
雌雄判別マニアの方にもたまらない季節ですね。
来年の4月には例年通り産卵が始まると思います。
ここの展示場は、野生において観察不可能な冬季から春の産卵までの行動をいちいち目の当たりにできる素晴らしい環境。
我々道民が世界に誇れるエゾサンショウウオ。その実態を、老若男女問わず興味を持って観察していただきたいと思います。
今年孵化した幼個体。順調に成長しています。