札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

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ヒラセガメ(Cuora mouhotii )の繁殖。

以前こちらでも経過をお知らせしていたムオヒラセガメ(Cuora mouhotii mouhotii)が無事に孵化しました。

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http://sapporo.100miles.jp/zoohonda/2015/07/16/ヒラセガメの産卵%E3%80%82/

数年に渡る親個体の健康維持、その後の約2ヶ月の冬眠、日長と温湿度の上昇からの発情誘起、そしてペアリング、交尾、産卵、そして4ヶ月間の卵管理の後に孵化。

こんな感じで気の遠くなるような様々なプロセスを経て、やっと今この地味なカメたちが誕生したのです。

感無量、飼育員冥利につきるってやつでございます。

ムオヒラセガメはヒラセガメの基亜種で、東南アジアに生息する陸棲のカメです。

まあこの種に限らずアジア産のカメ類は様々な人的な影響により一気に数が減っておりまして、国際的に大きな問題となっております。

欧米主導により生息地の調査、保全、そして飼育下繁殖が行われていますが、残念ながら日本の動物園は直接生息地とはリンクしておりませんので、現状としてはこういった形で飼育員の立場から役割の一端を担い、情報を公開していくしかありません。

こちらが今回孵化した2匹の仔ガメ。残り5卵は近々孵化予定です。

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親よりは若干赤みが強く、派手さはないけどとても奥ゆかしくそこはかとなく滲み出る美しさを備えたカメです。

落ち葉が堆積したような森林で暮らしているので、見た目は完全に落ち葉に擬態してますね。

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お腹の白い部分、ヨークサック(卵黄嚢)が吸収された後。

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鼻先の白いトゲは孵化する際に卵を突き破るための「卵嘴」(らんし)、すでに吸収されつつあります。

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こんな感じでセンターラボ内で管理していますので、ぜひ観察してみてくださいね。

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親御さんも隣で暮らしています。

成長の過程をニヤリと想像してみてくださいね。

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こういった普通に暮らしていれば一生名前を聞くこともないような地味な存在でも、しっかりと向き合い、理念を持って動物園の立場からすべきことを継続していく。

そんな環境を今後も維持していく事が何よりも大切です。

 

 

 

上手に脱がす。

脱皮中のマツカサトカゲ。

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こんな感じでツルっとキレイに剥けてくれるとホッとします。

というのも脱皮時のトラブルってのは割と多くてですね、勝手に剥けてくれるってものではないんですよ。

特に厄介なのが乾燥地帯に生息するトカゲの仲間でして、うちの場合ですとマツカサトカゲ。

原因は「乾燥環境」を意識するあまり、環境全体が「乾きすぎて」しまっていること。

これによって皮が綺麗に剥けず部分的に残ってしまうわけです。特に注意しないといけないのは「指」で、ここの脱皮不全が続くと指自体が欠損してしまいます。

実際脱皮不全により指が欠損してしまっている個体は飼育下ではかなり多いんですよ。そのため脱皮時には微妙な水加減と湿度加減を提供していく事が大切なわけです。

通常時、円山動物園ではタイマーで1日1回2分間の雨を降らし一時的に地面を濡らします。そしてその水分を床暖で温め徐々に蒸発させることで空気中の湿度を適切に維持しているんです。

しかし脱皮時はこれでは不安なので、雨の回数を増やし地面が常に濡れている状態を維持します。これによって正常な脱皮を促し、指の脱皮不全も防ぐことができるんですね。カラッカラの札幌ではこれくらいやらないとダメです。

 

「行動させる事」ではなく、「目に見えない形のない環境要素をコントロールすること」これが爬虫類の環境エンリッチメント。

気持ち良く脱いでもらうためには事前のお膳立てが必要となるわけです。

ちなみにこのトゲチャクワラも脱がすのが大変な種です。

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我々はもっともっと「脱がし上手」になれるようトカゲたちの気持ちを察していかなくてはいけません。

繁殖賞いただきました。

昨年のスペングラーヤマガメ、アオホソオオトカゲに続き今年はモウドクフキヤガエルで繁殖賞をいただきました。

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とりあえず日本の動物園水族館では初の繁殖ですよっていうことです。

モウドクフキヤガエルって物騒な和名がつけられていますが飼育下の個体は「無毒」で安心安全です。

野生下の個体は生息地において特定の餌を食べることで毒が体内で生成されてまして、生物界トップクラスの毒を持っています。

分布は南米コロンビアの一部で、現在は熱帯雨林の減少により数が激減してまして、IUCNレッドリストでは絶滅危惧種に指定、CITESでは付属書Ⅱ類掲載で国際取引が規制されています

円山動物園では2007年の国際カエル年以来、国内外の両生類の繁殖技術の確立を目指してきておりますが、この種に関してはなかなか苦労も多くて、繁殖が軌道にのるまで2年以上もかかりました。

今は良いペアを複数形成させる事ができており、いつでも大量に繁殖させることが可能となっています。

 

この挑発的なイエロー、実に妖艶で美しいカエルです。

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産卵場所はこの素焼きのシェルターとプリンカップの蓋。

いろいろ試したけどこの組み合わせがベストですね。

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ザラザラよりツルツルの素材を好みます。

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仔ガエルたち

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でも何よりも大切なのはやはり餌の確保。

円山名物コオロギ室のおかげで、良質な餌をふんだんに提供することができます。

 

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孵化直後のコオロギを継続的に利用できる環境が整っている事が大切なわけです。

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いくら良いペアがいても飼育環境が整っていても、ここが機能していないと全てダメ。

ここは爬虫類両生類館の心臓部と言っても過言ではありません。

 

 

 

 

 

 

アオホソオオトカゲの移動、希少カメ類の来園。

2012年産まれのアオホソオオトカゲ、ブリーディングローンのため横浜の野毛山動物園へと移動しました。

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新天地で子孫を残していってくれる事を祈ります。

そして野毛山動物園からもブリーディングローンで希少なカメ類たちがやってきました。

インドセタカガメが3匹

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そしてジャノメイシガメが2匹。

Sacalia bealei

 

これによって円山動物園でもこの希少カメ類の繁殖を進めていけることになります。

 

そして2014年産まれのアオホソオオトカゲ4匹は、センターラボから展示場へと移動しております。

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4匹の美しいトカゲたち。

この子達の将来も考えないとな。

爬虫類両生類館は子沢山で大変です。

情報は冷蔵庫に貼れ。

どこの家庭でも重要な情報はたいてい冷蔵庫の扉に貼ってあるわけです。

例えばゴミの収集カレンダーや給食の献立表、占いカレンダーや座右の銘、そして犬のフィラリアの薬を飲ませる日など、暮らしの中で日々確認していかなくてはならない情報が多いのではないでしょうか。

実は爬虫類両生類館でも全く同じでして。

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それがこれ。

これは今後新たに繁殖を進めていく種の生息地の「最高最低気温」と「降水量」のグラフです。

爬虫両生類は、一定の環境下で管理していても生きてはいけますがそれ以上は何にも起きません。

彼らはそれぞれ生息地の環境に晒される中で一年の暮らしのリズムを確立し、適切な時期に繁殖し種を残していくという習性を獲得してきたわけです。

そのため、飼育下で繁殖を行うためには種それぞれの生息地における「季節性」をある程度再現し提供していく事が必要となるんですね。

爬虫類両生類館ではゾーンごとに環境を操作できるように設計されておりまして、施設内において様々な季節性を同時に作り出すことが可能となってます。

だから施設の中は、ここのゾーンは冬で隣は秋、向かいは春で、あちらは夏、そしてこっちは雨季であっちは乾季、みたいに季節の移ろいが不規則に同時進行しているわけです。

しかし日々同時進行で流動させていく様々なパターンの環境の調整と確認は意外と大変でして、ちょっと気を抜いたりすると、絶好の機会を逃してしまうという事も多々あるんですよ。そうなると来年またやり直しです。だから常日頃から種ごとにおいての季節性のデザインを意識的に確認していくことが重要となるわけです。

「情報は冷蔵庫に貼れ」人類が編み出した最大の知恵ですね。

 

 

 

 

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