札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

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秘密の会議。

会議出席のため大阪へ行っておりました。
その会議の名は「全国動物園・水族館両生類爬虫類会議」

全国の動物園、水族館の爬虫類担当者が結集し研究発表や今後のやるべきことなどを議論しあう会議です。



今回のホスト園は大阪は天王寺動物園。
この会議、以前は毎年出席してたんですが、ここ数年はご無沙汰してましてね。
次回の開催地は我が円山動物園ってこともあって参加してまいりました。
行きの機内では横山ホットブラザーズのロックンロールで鋭気を養い気合も十分です。

会議は繁殖に関する研究報告や、希少両生類の保護事業など多岐にわたります。
まあそんな中でも話題の中心はやはり「カエルツボカビ症」問題。

この病気の国内進出により希少両生類の個体数に壊滅的な影響を与えるのではないか?
この問題はまだ研究最中であり、ここでは詳しい件はお話できません。
でも近々ある程度の見解が発表されることと思います。

あとは両生類の「域外保護事業」 つまり飼育下での繁殖事業です。
日本には多くのカエルや有尾類が生息してます。
しかし生息地の破壊などにより多くの種が絶滅に瀕しているんですね。
このまま放っておけば確実に絶滅するだけ。
だから一旦動物園や水族館で保護し、しかるべき時まで飼育下で保護増殖させましょうっていう計画です。

ね、こういう時が来たでしょ?
http://sapporo.100miles.jp/zoo_honda/article/64
いつまでも外国産種ばかりをもてはやしてないで国産種の飼育・繁殖技術の確立を目指す必要があるって。
いつまでも国産種を仮設水槽で飼ってるんじゃありませんって。
この計画、当然我が園としても気合を入れてやらせていただきたいと思っております。
このときが来ることを想定し、今までやってきたんですから。

もうね、今後の動物園ってのは自分勝手に好きなことをやってる場合でもないんですよ。
全国的、また世界的視野で物を見て、自分達が何をすべきかを明確にする必要があるんです。
国内の園館が協力し合って様々な事業を行っていく。
今後は間違いなくこういう流れになっていくと思いますよ。
特に北海道なんて場所は世界的に見ても貴重な生態系があって多くの希少動物が暮らしてるんです。
そんな地盤の中、特に道内園館なんかは密接な協力が必要となるでしょうね。

うん、すごく有意義な会議でございましたよ。





ワニガメ。

先日保護されたワニガメ、昨日より展示開始しています。
この個体は三笠市の川で発見されたんですよ。
誰かが川へ放しちゃったんですね。




その威厳と風格はカメ業界でもトップクラスです。
誇り高き奇怪なカメでございます。

生息地はアメリカ合衆国南東部、池や沼なんかに生息してます。
ほぼ完全な水中生活者で産卵以外で陸に上がることは稀なようです。
この個体は甲長25cmと小さいですが、最大で80cm、体重も80kgを超えるようですね。
この容姿で甲長80cmって・・そりゃもう怪物ですよ。

食性は肉食傾向の強い雑食で生きた獲物を好みます。
狩りの方法は待ち伏せ方でその手法がとても特徴的。
水中で口をあけて、ピンクの突起をユラユラ動かして獲物をおびき寄せるんです。
んでミミズと勘違いした魚なんかが寄ってきて、そのままガブリ。
ルアーフィッシングをするカメなんですよ、ほんと容姿に似合わず器用なお方。



寿命は50年くらいって言われてるけど実際はわかりません。
まあカメは長寿な生物として知られているけど、実年齢がわかっている個体ってのは以外と少ないんです。
まあリクガメ類なら通常100年、大型のゾウガメになると200年くらいは生きますね。
でも僕はね、カメの中で最も長生きするのはこのワニガメじゃないかって思ってるんですよ。
ワニガメは大型でしかも代謝が低いんですね、そんなカメの寿命が50年ってことはないだろうって。
んで水中生活だから人目に付く事ってないと思うんですよ。
だからどっかの沼とかに300年くらい生きている「主」みたいな個体がいるんじゃないかって。
まあ科学的根拠はないんですけどね。でもあながち間違ってはいないと思いますよ。

ワニガメは特に珍しいって種ではありません。以前は普通に売られていましたしね。
でも現在は、動物愛護法で特定動物に指定されていて飼育するには許可が必要です。
まあ危険な動物なので許可なく飼育してはダメですよって。

まあたしかに顎の力は殺人的で、噛まれれば大怪我しますね。
でもワニガメに限らずどんな動物も扱い方を間違えれば危険ですよ。
ワニガメにはワニガメの接し方があって、ちゃんと扱えば何ら問題はありません。
よく比較されるカミツキガメよりも全然おとなしいですしね。
なんでもかんでも危険だーって騒ぎ立てる風潮ってのは良くないですよ。
それで被害を受けるのは動物たちですからね。

以前は普通に売られていたわけですから、法の制定前から飼育されている個体もたくさんいます。
そういう個体に関しても新たに申請して許可を得る必要があるんですね。
んでその許可を得るには手間もお金もかかるわけですよ。
それをめんどくさがって飼育を放棄しちゃう飼い主が後を絶たないんです。
安易に川へ放しちゃうって行為が各地で行われているわけなんです。
この個体もその犠牲者の一人ですね。

ワニガメは日本の気候に適応できます。
まあ繁殖までいかなかったとしても生きていくことは可能です。
こんな状況が続けばそのうち帰化することも考えられますよね。
ほんと深刻な問題なんですよ。

これはもう飼い主のモラルの問題ですからね。
魅力的な種なんですから、きちんと許可をとって堂々と飼育しましょうよ。
こんなことでこんな素敵なカメのイメージが悪くなってしまうのはとても悲しいことですから。

でてきたな。

先日紹介したアオダイショウとシマヘビの産卵。
http://sapporo.100miles.jp/zoo_honda/article/64

無事に孵化が始まりました。



アオダイショウ。
鼻先が出てるのがわかりますよね。
感動的なシーンでございます。
今回は高温で維持してたから孵化までの時間が早かったですね。
何匹かは将来の繁殖用としてとっておきます。




一足先に孵化していたシマヘビ君。
親とはまったく違う模様でしょう。
この子はきっとあまりシマ模様が出ないまま成長しそうです。
シマヘビにもいろんな模様がありましてね。
特に道北や道東には全くシマ模様が入らない個体も多くてね。
そういう個体は「ムギワラ型」って呼ばれてますね。

僕が昔飼っていた個体も体色が真っ赤でシマ模様も入っていませんでした。
あれは綺麗なヘビでしたねー。
まあこんな感じでシマヘビってのはいろんなタイプがいるんです。
だからどんな個体に成長するかがすごく楽しみな種類でもあるんですよね。

いやーやっぱ道産種ってのはたまりませんな。

それが一番大事

バックヤードのアオダイショウとシマヘビの産卵が始まりましてね。




僕はね、今まで公私ともに様々な爬虫類の繁殖をやってきましたよ。
でもね、やっぱり一番うれしいのは身近なアオダイショウやシマヘビが毎年継続して繁殖することなんです。











僕らって日本のことを「すごく小さな島国」って思い込んでますよね。
でも実際はそれほど小さな国ってわけでもないんですよ。
実際ヨーロッパのほとんどの国より国土面積は広い。
愛すべき飼育技術の国、ドイツや英国よりもね。
ただ山地が多くて、狭い平野部に人口が密集しちゃってるから窮屈に感じちゃうんですかね。
確かに人口は多いからさ。

日本って南北に長くて地形も複雑なもんだから亜寒帯から亜熱帯までと多様な気候が見られるのが特徴。
しかも島国ときている。
そう、こんな特殊な環境で進化適応してきた日本の野生動物ってのはほんと貴重なんですよ。
大陸の影響は受けてはいるけど、そのほとんどは日本にのみ生息している固有種だしね。

例えば以前ここで紹介した臭いヘビ「ヨナグニシュウダ」ね。
まあ近縁種は他国にもいるけど、ヨナグニシュウダっていうヘビは世界中で与那国島だけにしかいないんです。
ひろーい世界の中で、小さな小さな与那国島だけにしかいないわけなんです。
これほど分布域が狭い種ってのも珍しい。ほんと貴重なんです。日本の宝なんですよ。

僕が毎日観察してるシマヘビやカナヘビ、それを取り巻く生態系も「ここ」だけにしかないものです。
身近なものも「生態系の多様性」の一部、だからその中にいる僕らはもっとそれを知る必要があるわけです。
地球的視野で見れば、僕らにとって身近な生態系がいかに大切なのかってことがわかりますよね。

でもね、
日本人特有の性質なのかもしれんけど、外国産をもてはやす風潮が間違いなくあるんですよ。
外国コンプレックスみたいなね、外国の動物の方が素敵で貴重に見えちゃうみたいな。
まあ動物に限らずだけど。
んでそっちばっかりに目がいきすぎちゃって自国の生態系の価値や魅力に気が付かない場合が多いんだな。
まさに灯台下暗し。

動物園もそう。
例えばアオダイショウなんかはいつでも捕れるもんだから適当に扱われていることも多いっすよ。
外国産の立派な展示場横の仮設水槽の中に入れられてたりさ。
僕はね、こういうのを見るとほんと悲しくなっちゃいましてね。
「アオダイショウの方がずっと素敵で大切なんじゃい!」って叫んでしまうわけですよ。
僕が爬虫類館担当になって最初にやったことは外国産を裏に引っ込めて北海道産の展示を始めたこと。
一番身近で大切なものを知ってもらいたいですからね。

当然飼育技術に関しても遅れてます。
実際日本産の動物ってのは飼育、繁殖が技術的に難しいのが多いんですよ。
爬虫類に限らずね。
ここら辺の技術確立ができてないと、いざという時の対応が遅れてしまうんですね。
当然管理能力が欠けていると身近な生態系のメッセージを発信することも難しくなりますしね。
実際、身近なアオダイショウやシマヘビ、カナヘビなんかを継続的に繁殖させることってなかなか困難です。
だからこそ円山動物園では日本産爬虫類の繁殖に力を入れているし結果が出ればすごくうれしいわけです。

動物園の役割である「環境教育」や「種の保存」、これらを外国産動物主体に行っていく。
例えばトラやゴリラを通して熱帯雨林の現状を知ったり、保全のために行動を起こしたりね。
うん、たしかにすごく大切なことだし実行するべきです。

でもね、僕らの役割は、まず何よりも先に「身近な生態系を知り、保全していくこと」だと思いますよ。
それが一番大事(DMBB)
世界の珍しい動物のことはよく知っていても、肝心な自国のものがおろそかになってしまってる・・・
これじゃあなんかかっちょ悪いでしょ。


「アオダイショウを笑う者は、アオダイショウに泣く」
今宵はこの名言を残し、ドロン(死語)したいと思います。
では。

熱い男の栄養学

毎日暑いですね。
最近の爬虫類館の温度はこんな感じ


35℃ね。
喉はカラカラ、腹はペコペコ。
でも館内全体がこの温度ってわけではありません。
これじゃあ動物も死んじゃいますからね。

この温度に達するのは、飼育員が作業する場所だけ。
この爬虫類館、なぜか人が利用する場所にだけ直射日光が当たる仕組みになってるんです。
ほんと訳がわかりません。
安藤忠雄もびっくりの建築設計なんですよ。

餌を作る調理台や各展示場へ続くキーパー通路。
行くとこ行くとこ全てスポットライトが当たるんですからね、毎日ライブライトでスター気分ですよ。

だから室内作業がメンイなのに僕の肌は真っ黒です。
しかもいつも頭にタオル巻いてるから、おでこの上半分は真っ白です。
ほんと「白黒つけるぜ!(ショウ アイカワ)」って感じですよ。

あと汗をかかない体質なもんで、体内に熱がこもっちゃっいましてね。
たまに吐き気なんかしたりしながらがんばってるんです。
ほんと心も体も熱い男ですよ、僕って奴は・・・
この前なんかもネットオークションの競り合いでつい熱くなってしまいましてね。
見事ハンドクリーナーを定価以上の価格で競り落としてやりましたよ。
そのくらい熱い男なんです。

まあそんな人を熱くさせる日光燦燦ライブライトな爬虫類館。
でもね、直射日光は人間にも爬虫類にもすごく大切なもの。骨の形成にね。
特にカメ類なんかは骨の塊みたいな生き物だから特に日光が必要なんですよ。

骨代謝に必要なのはビタミンD(D2とD3)という物質。
このビタミンDがカルシウムの吸収を促進してくれるんですね。

ビタミンDは食物からも摂取できるけど効率は良くないです。
口から摂取するよりも体内で作り出した方が断然効率的なのです。

もともと僕らは体の中にプロビタミンDっていう物質を持ってます。
このプロビタミンDってのはそれだけでは何の役にもたちません。

でもね、紫外線を浴びるとこれらの物質がたちまち活性化して「ビタミンD」へと変身するんです。
そしてカルシウム吸収を促進し、丈夫で強い骨を作ってくれるわけなんですよ。
だから日光を浴びるってことはすごく大切なことなんですね。
ビタミンDが体内で生成されていないといくらカルシウムを摂取しても意味がないんです。
例えフライドチキンを骨まで食らってもね(吉田飼育員)

そんなライブライトの下で働いている僕、皆さんはさぞビタミンDに包まれた骨太ガイだと思うでしょう。
でもそれは違います。

実はビタミンDってのはね、紫外線の中の「ある波長(UBV)」を浴びないと生成されないんです。
でも僕が浴びてるのはガラス越しの日光、つまり有効な波長はカットされてしまっているんですね。
これじゃあ全然意味がナイチンゲール。
直接日光を浴びないとダメってことなんですよ。

だから爬虫類館の動物達には特殊なライトを使ってます。
これはビタミンD生成に必要な紫外線を出すライトなんですね。
だから室内にいても健康に生活してられるんです。

んで僕はというと・・・
有効な紫外線はカットされ、単なる熱と光だけを浴びてるのです。
骨太になるどころか、体力と水分を奪われながらカッサカサになってるにすぎないわけです。
以上、熱い男の栄養学でした。
ぶひ。



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