札幌100マイル

爬虫類と猛禽類のDeepな世界。

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2015年11月 の投稿一覧

クモとの戦い。

爬虫類両生類館の数少ないルーティンワークの一つがクモの巣の除去作業。

特に両生類やカナヘビといった小型種を管理している場所には、餌の小さなコオロギを狙って大量のクモが集まってきます。

そしておこぼれのコオロギを捕食しながらどんどん増殖し、毎日展示場やラボ内に巣を作っていくのです。

僕の日課はこのクモの巣を取り払うことから始まります。

下の画像はヤドクガエルの展示場内の様子。一見何も見えません。でもここに霧吹きをかけると。。

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ほーら姿を現した。ケージ内全体に巣がはびこっています。

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糸は非常に細くて肉眼ではよくわかりません。でも霧吹きをかけると突如プレデターのように、ペンキをかけられた透明人間のようにその全貌を現すのです。

僕も気の毒だとは思います、一生懸命作ったマイホームが完成した矢先にぶち壊されるんですから。

クモは嫌いじゃありません、現に爬虫類館ではたくさんのタランチュラを飼育しています。むしろ愛でているのです。でもその一方でクモを虐げているのも事実。

そういった矛盾を全て理解し受け止めた上で、日々感情を押し殺し粛々と巣を取り払う。

でも同時に住み着いている「ハエトリグモ」たちに危害は一切加えません。なぜならハエトリグモは網を張りませんから。

僕ができるクモ目への精一杯の償いです。あは。

 

 

 

 

 

 

 

ヒラセガメの孵化続報。

ヒラセガメ、今年度の孵化が終了です。

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産卵数は♀3個体で計9卵。そのうち有精卵は7卵で、2卵は中止卵となってしまいました。

てことで今年は5匹の仔亀が誕生です。

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オリエンタルな気品漂う美しいカメです。

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無事に餌付けも終了し、毎日コオロギを追い回し食らいついてます。

今後の育成はなかなか厄介かもしれませんが、全個体が無事に成長してくれるよう慎重に管理していきますよ。

今後の成長が楽しみです。

 

 

 

 

モエギハコガメ3姉妹、展示場へ。

 

円山動物園が誇る、モエギハコガメ3姉妹がバックヤードから展示場へと移動しました。

先日移動したガビアルモドキのスペースへと引っ越しでございます。

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この子達は円山動物園生まれ、8歳前後のメス達です。

慎重且つ丁寧に育ててきたもんだから、こんなに美しい三姉妹へと成長しました。

コシノ三姉妹にも引けをとらぬ眩さです。

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この種はラオスやベトナム、カンボジアなどに生息しているカメで、人的影響により絶滅に瀕しています。

円山動物園が2004年に国内で初めて繁殖に成功し、その後継続繁殖を行いながら現在は8頭を飼育中です。

神経質な種として有名ですが、この子達は飼育下生まれの飼育下育ちで環境にも完璧に順応しており、カメにしてはアクティブな行動を見せてくれます。

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両親は1994年に保護受けした個体ですから、もう20年以上の飼育歴です。

保護受けした時にはすでに今と変わらぬサイズでしたので、年齢はすでに40歳は超えていると思います。

そろそろ累代繁殖も視野に入れて、次の世代に繋げていかなてはなりません。

皆様、是非ご近所ご親戚お誘い合わせの上、この美しい貴重なカメ達に会いに来てくださいね。

ガビアルモドキの幼体、新居へ。

密輸保護個体のガビアルモドキの幼体ですが、展示場からバックヤード2階の新ケージへと移動しました。

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展示場が狭くなりすぎていたので、数ヶ月前から広いケージを製作していたんです。

とてもぶきっちょなので時間がかかって大変でしたが、この度無事に完成、特定動物の許可も下りたので移動しました。

材料運びや手ノコでの木材カットは李飼育員の担当、僕は電動丸ノコとインパクトドライバーをフル活用し板切りとネジ打ちを担当しました。李さんだけが汗だくになっていました。

 

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でもワニの捕獲はほんと緊張します。特にガビアルモドキは吻が細くて折れやすいので、暴れさせないようちゃっちゃとスムーズに事を進めなくてはなりません。

あとクロコダイルの仲間はアリゲーターに比べるとほんとパワーとスピードが凄まじいですからね、120cmの幼体でもちょっと焦るくらい恐ろしいのです。

僕も40歳手前でデスロールに巻き込まれるわけにはいきませんから慎重且つ丁寧に対応いたしました。

現在は、餌こそ食べるまではいきませんが、徐々に落ち着いてきたところです。

 

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今後2mを超えるまではここで暮らしてもらい、その後は広い大型展示場へ移る予定です。

このケージも何年もつかな、2年くらいで手狭になりそうです。

 

 

ツギオミカドとトッケイヤモリ。

 

 

 

これまで展示場で暮らしてきたツギオミカドヤモリですが、この度繁殖に専念するためバックヤードへと移動します。

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この巨大な体を死角に潜りこませて姿を眩ましたり、また絶妙な角度で木にへばり付き完璧な擬態を見せてくれたりと、これまで多くの来園者の目を欺いてきました。

この巨大でグロテスクな姿、そして不意を突かれるほど柔らかい皮膚の雰囲気をもっともっと皆様にも視覚的に感じていただきたかったです。

しかし相手はヤモリ、完全な夜行性で日中は隠れることが仕事。

実際、展示場で5年近く暮らしてきたにも関わらず、園関係者からも「え、そんな種いましたっけ?」と声が挙がるほどの徹底した存在感の消しっぷり。実に見事でした。我々も鐙を外して見送りたいと思います。

 

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円山動物園では現在3頭を飼育しておりまして今後は昼夜を逆転させた部屋へと移動し、順番にペアリングをしながら様子を見ていく予定です。

繁殖は決して容易ではありませんが、なんとか次の世代を残せていければなと思っています。

 

そしてツギオミカドヤモリの後釜はやっぱりこの方。

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我らがトッケイヤモリです。

東南アジアに広く分布する大型でド派手なヤモリ。非常にポピュラーな種ですが、やはり「トッケイに始まりトッケイで終わる」と言っても過言ではないくらい深い魅力を持っています。

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しかしそのファンシーな外見とは裏腹に、とにかく攻撃的でして、ちょっと寄っただけでも威嚇し噛み付いてきます。

また顎の力も強いですから、接する際は注意が必要です。

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お決まりのポーズ。世話している最中はだいたい大口開けて怒っています。

でもタイやインドネシアとか、普通に人家にこのヤモリが暮らしていますからね。ほんと羨ましい限りです。

タイ人旅行者も眉をひそめるトッケイヤモリ。この度華々しくデビューです。

ぜひ会いに来てくださいね。

ヒラセガメ(Cuora mouhotii )の繁殖。

以前こちらでも経過をお知らせしていたムオヒラセガメ(Cuora mouhotii mouhotii)が無事に孵化しました。

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http://sapporo.100miles.jp/zoohonda/2015/07/16/ヒラセガメの産卵%E3%80%82/

数年に渡る親個体の健康維持、その後の約2ヶ月の冬眠、日長と温湿度の上昇からの発情誘起、そしてペアリング、交尾、産卵、そして4ヶ月間の卵管理の後に孵化。

こんな感じで気の遠くなるような様々なプロセスを経て、やっと今この地味なカメたちが誕生したのです。

感無量、飼育員冥利につきるってやつでございます。

ムオヒラセガメはヒラセガメの基亜種で、東南アジアに生息する陸棲のカメです。

まあこの種に限らずアジア産のカメ類は様々な人的な影響により一気に数が減っておりまして、国際的に大きな問題となっております。

欧米主導により生息地の調査、保全、そして飼育下繁殖が行われていますが、残念ながら日本の動物園は直接生息地とはリンクしておりませんので、現状としてはこういった形で飼育員の立場から役割の一端を担い、情報を公開していくしかありません。

こちらが今回孵化した2匹の仔ガメ。残り5卵は近々孵化予定です。

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親よりは若干赤みが強く、派手さはないけどとても奥ゆかしくそこはかとなく滲み出る美しさを備えたカメです。

落ち葉が堆積したような森林で暮らしているので、見た目は完全に落ち葉に擬態してますね。

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お腹の白い部分、ヨークサック(卵黄嚢)が吸収された後。

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鼻先の白いトゲは孵化する際に卵を突き破るための「卵嘴」(らんし)、すでに吸収されつつあります。

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こんな感じでセンターラボ内で管理していますので、ぜひ観察してみてくださいね。

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親御さんも隣で暮らしています。

成長の過程をニヤリと想像してみてくださいね。

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こういった普通に暮らしていれば一生名前を聞くこともないような地味な存在でも、しっかりと向き合い、理念を持って動物園の立場からすべきことを継続していく。

そんな環境を今後も維持していく事が何よりも大切です。

 

 

 

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