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レビュー:バベットの晩餐会



私がこの映画を観たのは、1989年の日本初公開時でした。
当時の日本には、まだバブル経済の名残があり、
洋物グルメ映画の公開が、相次いであったように記憶しています
(私がそういう映画を好んで観ていただけかもしれませんが)。

あらすじは、牧師の父に仕えて独身を通した二人の姉妹の元に、
全てを失いフランスから亡命してきた、バベットという女性が辿り着く。
家政婦として姉妹の家で働き始めたバベットは、見事な料理の腕前を発揮、
姉妹の食事は勿論、村人に施すスープも極上の味に変えていく。
14年の歳月が流れ、バベットは牧師の生誕百年のお祝いに、
フランス料理の晩餐を作らせてほしいと、姉妹に願い出る。

フランスから仕入れた食材で、バベットが作り上げた料理の内容は

海亀のスープ

キャビアのドミドフ風ブリニ添え

うずらのフォアグラ詰めパイケース入りソースペリグール

季節のサラダ

チーズ(カンタル、フルムダンベール、ブルーオーベルニュ)

ラム風味のサヴァラン

新鮮なフルーツ
 
コーヒー

アモンティヤード

ヴーヴ・クリコ 1860

クロ・ヴージョ 1845

コニャック(ハイン) 
    ※エスクァイア日本版1998年1月号テキストより


晩餐に招かれた村人たちは、見たことも聞いたこともない料理にビクビク。
日頃、干し魚の鍋煮と、
ビールパンで作った茶色いスープしか食べていない彼らにとっては、
「悪魔のメニュー」。
しかし食べ進み、飲み進むうちに、村人たちの顔がほころんでいく。
美味しいものは無知な者、疑い深い者の心をも溶かしていく。
そして晩餐の後、姉妹は知るのだった。
バベットは、自分が当てた宝くじの賞金1万フラン
(現代の相場で換算すると、推定五百万~一千万円相当)を、
すべてこの晩餐会の為に遣ってしまったことを。

結末までご紹介したのは、
そう思って観ると、映画の細部がよりよく見えるのではないかと思ったからです。
バベットの素性と、それを証明する絶妙な料理と給仕。
そしてすべての美しいものには心が宿り、それゆえに他者の心を溶かすということ。
ものが溢れている時代には気づきにくく、
求めないまっさらな心根の者に幸運は降りる。
今にこそ、観るべき映画だったのかもしれません。


          
                 バベットの晩餐会
                 札幌シネマフロンティアにて上映中


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